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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
キララとの二人きりの宇宙旅行
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木星あたりの見物

 後ろの窓から見える地球がバスケットボール大からグレープフルーツぐらいの大きさになったころ…


「さてと。もういいかな。点線の所に宇宙船が到達したよ。じゃあこの先に行くところをセットしよう。速度を「超高速」にして、行先の惑星をセットしてね… まずは火星を経由して行こうか」


「うん」僕は速度を「超高速」にしてから行先を太陽系の火星にした。


 そして「ok」ボタンを押すと宇宙船の速度が上がり始めた。そして窓から見える星が線の形に引き伸ばされる。

 かなり高速に進んでいるように見える。


「うわぁ。宇宙船のワープっぽい…」高速を超える速度で進んでいるかに見える。


「これは演出だよ。もうちょっとで到着するよ…」


 線の形に引き伸ばされている星が元の点になっていく。そして目の前に火星が現れた。

 地球の廃墟版のような茶色い星。水の惑星と言われている地球と違い、ひからびた感じの星だ。赤茶けた感じの星。しばらく火星を見てから次の目的地である木星をセットした。


☆☆☆


 ワープっぽい演出が解除されると、遠くに木星が見える。写真で見るとおりの木星が窓から見える。


「だんだん近づいてみよう…」キララが僕にかわって操縦する。画面を拡大して木星と衛星であるイオの方向に船を進める。


 だんだん大きく見えてくるイオ。そして逆側には大きな惑星である木星が見える。


「なんか地球の月とは全然違うね…」


 クレーターはあるんだけど、灰色しかない月とは違い赤茶けた地面や黒いクレーターのようなへこみも見える。僕は新円のだんしゃくという芋みたいだと思った。黒いクレーターが芋の芽のところのようだ。


「木星の渦が見えるところまで行こうか…」コンソールでキララは宇宙船を操縦して、木星へと近づいて行く…

 大きく見えてくる木星の渦。だんだん大きくなってくる木星の渦を見ていると、なんか渦の中に飲み込まれるんじゃないかと思ってしまう。

 大きすぎる。地球よりもはるかに大きいガス惑星。


「やっぱり大きい… えーと木星に近づくと、放射能とか強い重力の影響ってあるんだっけ?」


「うん。あるよ。宇宙船の外ではね… この中は安全だよ… そうだ… 上の展望室に移動しよう…」


 キララと僕はコンソールを離れて、上の展望室へと移動する。

 キララは展望室の窓のそばにある椅子に座る。

 僕もキララの隣に座る。キララはデバイスを操作する。


「何しているの?」僕はキララが操作しているデバイスを見た。


「木星の重力は地球の2.3倍あるんだけど、ちょっと宇宙船の重力制御をいじってみて、2.3倍にしてみるよ… ちょっとずつね… 重くなるよ…

 さてと、僕、いや私はユキ君の膝の上に座るから… 我慢してね…」

 と突然僕の膝の上に座ってくるキララ。そしてデバイスを操作する。

 なんでキララが僕の膝の上に座ってきたんだろうと思ったけど、ちょうどよかった。

 人恋しかったし、くっつくのは嫌いじゃないし…


 どうもハーフの子達はくっつきたがる子が多い。ウサギの子は僕を膝の上に座らせたがるし、トリのハーフの子は膝の上に座ってくるし… キララもかな。


 僕はキララを膝の上に座らせてから、ぎゅっとする。

「あ。重くなってきた。僕の体もなんだけど… キララも…重たくなってきた…」

 だんだん体が重くなってくる。僕自身の体も重くなっているし、膝の上に座っているキララも重たくなっている。重さのおかげで普段よりもぎゅっと密着している。

「これで。2.3倍だよ… 君は100kgを超えてるかな… 僕。いや。私もだけど…」


 キララの体温と重さをいつもよりも感じる。しばらくキララを抱っこしていた。

「だんだん重さがきつくなってきた。元に戻してよ…」僕はキララにお願いした。

 キララはデバイスを操作すると、すーと体が軽くなった。さらに軽くなっていく体。


「おまけで、この中の重力を0.5倍にしたんだ。ねえこのままお姫様抱っこしてくれるかな…」

 キララにお願いされて、そのまま膝の上に座った状態から、キララをぎゅっと手でかかえて、抱っこして持ち上げてみる。あ。軽い。子供みたい…


「軽いね…」僕はキララを抱っこして窓のあたりを歩く。窓の外に見える巨大な渦。

 キララをお姫様抱っこしているので、顔も近い。

 キララは窓の外の渦を見ている。僕はキララの狐耳に顔を埋めてみたいという衝動にかられた。

 僕は思い切って、キララの狐耳に顔ですりすりした。


「うわあ。何… ユキ君変態さんになっちゃった?」キララの至近距離から見るきつね耳。

 毛並みがふかふか。ふかふかの耳を見ていたら、うめたくなったのだった。

 トリの羽毛の頭に顔を埋めるのとは違う感触。

 ちなみにトリのハーフの頭に顔を埋めるのは、みのるお兄さんとヒメルがたまにやっている。

 変態っぽいと思ったけど、僕も似たことをしてしまった。


 今、僕は狐耳に顔を埋めているけど、キララはそんなに嫌がってはいない。

 されるがままになっている。


「キララの耳もあったかいね… 顔で触れてわかったけど、結構気持ちいいね。手で触れるのと違う…」


「いやぁ。ユキ君も変態になっちゃったかな。これは誰も見ていないときだけだよ…

変に思われるから… みんなが見ているときは、なでなでと、くっつくのはさりげなくね…」


「うん」僕はキララの狐耳の感触が名残惜しかったけど、顔を放して、抱っこしているキララをおろす。


 キララはデバイスを操作して重力を1倍に戻す。


 あ。体が重くなった。プールから上がったときみたいに体が重くなる。


 僕とキララはしばらく木星の渦を見ていた。自然と二人の手はつながる。


 ☆☆☆


「さて。次の衛星にも行ってみるよ。エウロパだよ」

 僕とキララは展望室から離れてコンソールまで移動する。

 キララは宇宙船を移動させて、エウロパの軌道まで進める。


「エウロパはひび割れた氷の衛星だっけ?」


「そう。エウロパは表面が氷で覆われた衛星で表面温度が摂氏マイナス170度ぐらい。表面の氷は潮汐力によるエウロパ自体の歪みがあって、裂け目が出来たり、ふさがったりしているんだよ。この高さから見ても表面はひび割れだらけに見えるよ」


「ちょっと衛星の表面まで降りてみない?」僕はキララにリクエストした。


 キララは器用に宇宙船を操縦して、エウロパの地面が見えるまでの位置にまで移動させる。

 だんだん窓から見える衛星が大きくなっていく…


 エウロパの表面が見えるところまで宇宙船を移動させてから、上階の展望室に移動する。


「寒そう…」僕は窓から見える景色を見て感想を言う。とっても綺麗な星空。それと巨大な木星の渦。それと氷。氷。氷。とっても静かな世界が広がっている。このあたりにいる生命体は僕たちだけ…

もしかして地下には微生物がいるのかもしれない…


「ああ。見ているだけで寒くなってきた… あの。お願いがあるんだけど。ユキ君。後ろからぎゅっとしてくれるかな…」キララが言ってきた。


 たしかに外の景色は氷の世界なので寒そうだ。宇宙船の中は寒くはないんだけど。ちょっと寒くなってきたような気がする。


 キララは僕にくっついてくる。

 僕はキララをぎゅっとする。そしてついでに頭もなでる。狐耳。大きな耳をなでる。そして逆の手で尻尾をさわる。

「なんかいいね。これ」僕は自然に言う。

 外に見える氷の世界。誰もいない世界。

 ここは現実。仮想ではない。宇宙船の窓が割れたらきっとすぐに冷気が入ってきて二人は凍り付いてしまう。

 それよりも先に空気が無くなるので窒息してしまうのか?

 凍り付いたら、このままキララとくっついたまま凍り付くんだろう。誰かに発見されたら恋人どうしが遭難してしまった。と… こんなにくっついたまま。長い間凍っていたんだ… となる。

 そんなことを考えてしまう。

 でも、実際はキララにくっついているので、キララの体温であったかい。


 外の無機質な氷の世界を見ていると不安になるけど安心する。キララの心臓の音が聞こえるからかな。

 まわりに誰もいないから、一人でここに来たりするときっと人恋しくなるのかな。


 宇宙での一人旅。それもいいのかもと思ったけど、ひとりぼっちだと寂しさが倍増するんだろうなと思った。2人でよかったと思う。


「いいね。これ。ユキ君にぎゅっとされていると安心するよ。ほら見て。外はあんなに氷ばかりの世界なのに、背中側はユキ君の体温でぽかぽかだよ…」キララは安心して僕に体重をかけてぎゅっとくっついてくる。


 僕はキララのふわふわな体と体温を感じながら、狐耳をなでる。僕たちはしばらく外の氷の世界を見ることにした。


 氷の世界。南極とか北極とは違う、真空の氷の世界。


 少し遠くで氷が崩れて落ちるのが見える。それ以外は動く物はない。


☆☆☆


「さて、もうお昼ごろの時間だね。食事にしよう…」キララはTMRを操作して、宅配ボックス兼用の物入れを開き、中からお茶のポットとティーカップ、それと軽食。温めるタイプのスープを取り出した。


 展望室の片隅にあるテーブル。そこにクロスを敷いて、カップと軽食。スープを並べた。

 スープはインスタントだったが、ぱきっと容器のすみを割ると、温かくなるタイプのものだ。


 具がいろいろ入っているサンドイッチとちょっとしたおかずの容器を開けて昼食にする。


「そういえばこの時代にも宇宙食ってあるの?」僕はキララに聞いてみた。


「うん。あるよ。希望すれば積んでおいてくれるよ。でも今回は忘れれてさ。まあ次行くときもあれば、それにしてみる? 今は宅配ボックス兼物入れがあって、どこからでも物を取り出せるからね。


ピクニックに行く感覚での旅行だったら、普通の食材を入れていく人が多いんだよ。

最初は物珍しいから宇宙食を希望するんだけど、だんだん普通になっていくよ」


「そうなんだ。たしかにね…」僕はキララからもらった具だくさんのサンドイッチを食べる。

 うん。おいしい。それにお茶。紅茶のような感じがするんだけどちょっと違う。


「ああ。そのお茶はマトラ星系のものだよ… ちょっと紅茶っぽいけど風味が違うんだよ」


 うん。体もあったまるし… 宇宙空間にいると、温かいものが飲みたくなる。


「この後どうしようかな。他の衛星はどうかな…」僕はキララに聞いてみた。


「そうだね… 食事が終わったら二人で考えようか…」


 外の氷の世界を見ながら昼食をとっている二人。




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