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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
キララとの二人きりの宇宙旅行
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キララとの宇宙旅行のはじまり

 朝。僕の鼻を何かがこしょこしょしている。

「は。はくっしょん」僕はくしゃみをして目が覚めた。そこにはミミちゃんとラミちゃん。

 ミミちゃんのネコの尻尾で僕の鼻をくすぐっていたみたいだ。


「朝よ。ほら。あたしたちはあと10分ぐらいで出かけるけど…」


「私もミアお姉さんの準備が出来たら出かける。あ。そうそうおばあちゃんはまた泊まりだって、幼馴染が体調をくずしているって言ってたから…」


 ミミちゃんは、キララと僕でとっても仲良く寝ていたから起こさなかったみたい。


 僕は右隣を見ると、いつのまにかキララが僕の布団に入ってきていて一緒に寝ていた。

 それをミミちゃんとラミちゃんは何も言わなかった。それに布団をどけてみると、僕の右手がキララの手を合唱つなぎで握っていた。恋人同士のつなぎかた。


 僕とキララは起きた。もう朝の9時だった。


 二人でゆっくり朝食を食べる。今日は油揚げ入りのお味噌汁。油揚げの中に卵と鰹節を入れて煮たもの。鰹節入りだし巻き卵。だった。


 二人で支度をして、家の戸締りをする。鍵はおばあちゃんも持っているし、ミミちゃんやラミちゃんもそれぞれ持っている。


 戸締りをして外に出てから、家の壁に向けてTMRの自動ドアを開く。そして未来へと行く。


☆☆☆


 自動ドアをくぐった先は、別の部屋につながっていた。


「ここは私の未来の拠点で借りている部屋なの…」

 丸い形の金色の狐っぽい感じのふかふかの絨毯と小さいテーブル。二人掛け用のソファ。机。棚。ベッド。一人暮らし用の部屋だ。


「ふーん。いい部屋だね。それといい景色…」高層階の部屋。窓からは都会の真ん中に作られている大きな公園が見える。


「うん。朝日がこの窓から見えるんだよね… 結構お気に入り…

さてと、この建物の下に降りてから、ちょっと歩くと宇宙船をレンタルをしているところがあるから、実際に宇宙船を見ることができるのよ。

 そこで借りるタイプの宇宙船を選んでから自動ドアで宇宙港まで移動して出発だよ…

ちなみに必要な物はこの宅配ボックスと兼用の物入れに入れておくよ… 食材とか…

そうだ。ハンモックがあるんだよね1人用のと2人用のが。それぞれ入れておくね…」

 キララは物入れにハンモックを入れた。


 キララの部屋を出てエレベーターで下に向かう。そして建物を出てから歩道を歩いて行く。

 車道はなんか、無いっぽい。未来だよね。


「車道がないのが違和感あるよね。車とかの道路は地下にあるんだ。地上にある必要はないからね。地上は緑化方向にあるの…」言い方がちょっとキラっぽかった。


 宇宙船の模型や内装を展示してあるモデルルームがある。

 僕は「宇宙、それは最後のフロンティア」から始まる海外SFドラマに出てくるような形の宇宙船。円盤型のものに下部にメインエンジンがついている所があり、上側に2つのサブエンジンがついているような形の少し小ぶりの宇宙船を指さした。

 円盤型のところは居住区兼展望室となっており景色が良く見える。中も十分に広い。


「これはどうかな…」僕は指をさしてキララに聞く。


「いいよ。人気があるタイプだね。これならレンタル料はちょっと高めだけど、借りることができるし…これにしよう… 30分ぐらいで宇宙港に用意してくれるみたい…」


 僕たちは宇宙港へと移動して、カフェで待つことにした。


☆☆☆


 宇宙港にあるカフェに入った。

 窓ぎわの席に座る。丸い形のテーブルがあり、僕は窓の横。キララは窓側に座った。


 宇宙港の窓から眼下に地球が見える。

 地球の雲。広く広がっている雲。上のほうにぽつぽつと高い位置まで伸びている雲。積乱雲。雷かなにかでピカピカしているところ。雲もよく見ると動いているのがわかる。

 こんな衛星軌道上から地球を見たことがなかったから、まじまじと見てしまう。


 キララと僕の席の位置は僕が時計で6時だとしてキララは9時の位置。つまり隣。キラの尻尾が椅子の穴から後ろに出てるのが見える。キラの尻尾はうれしそうに動いている。


「さて、注文はテーブルに書いてある絵をタッチして注文するんだ。料金は僕。いえ私が持つからね。さっそく見たいところはある?」

 キララは果実のジュースを注文した。僕はアイスコーヒーを注文した。


「そうだね。生で太陽系の惑星を見たことがないから見てみたい。火星。木星。土星。他にも…

あ。でも移動距離に応じて時間がかかる?」


「いや。自動ドアの大きい入り口みたいなのを開けるから、移動時間は考えなくてもいいよ。マトラ星系やカザー星系にも行けるし… まあわざわざ宇宙船で行かなくてもいいけど…」

 たしかにそうだね。


「じゃあ。太陽系の惑星と、そのほかよさそうなところをピックアップするからね」キラはテーブルの下から上がってきたジュースを手にとって飲む。僕も僕の前に空いた穴からアイスコーヒーが上がってきたからコップを手に取る。


 アイスコーヒーを一口飲む。程よく冷えている。


「ああ。そうだ。えーと。たしか…」僕はスマホをいじって画像をだした。

 キララにこれなんだけどと見せた。


「ああ。NGC300? ちょうこくしつ座の方角にある渦巻銀河だっけ。恒星ブラックホールが中心にあるんだっけ。僕も。いや私も見てみたいと思っていたんだよ。誰か。恋人と一緒にね… いいよ行こう。

他は?」


「NGC292。小マゼラン星雲。綺麗かなと思って…」


「うん。いいよ。時間はかからないし…

それとぼ。おっほん。私からリクエスト。NGC2237。バラ星雲だよ。それとNGC3372」


「うん。良く知っているね。キララも宇宙好きなの?」


「うん。いろいろ行きたいところがあるんだよ…」


「NGC3372って何?」僕は聞き覚えがないからキララに聞いた。


「イータカリーナ星雲。りゅうこつ座の中に見えて、銀河系で最大級の重さと光度を持つ恒星の2つがこの星雲の中にあるんだよ。星雲といくつかの散開星団。そして明るい恒星からなる景色が綺麗なんだよ。写真でしか見たことがないけど…」


「いいね。なんか好みも合っているんじゃない?」僕はキララに言う。


「たしかにね…

あ。もうそろそろ準備ができたみたい。じゃあ行こうかい」


「そうだね…」


 僕たちは宇宙港から船に乗り込む。専用の自動ドアを開ける機械を借りて、壁に空いた四角い穴から直接宇宙船に乗り込む。


「思ったより広いね…」円形の結構広い部屋ぐらいある空間。周りは窓になっている。真ん中に階段があり、下の階へと通じてる。下の階は宇宙船の操縦席が2つ並んでいる。タッチスクリーンを基調とする操縦席。飛行機の操縦席のようにボタンがいっぱい並んでいなくてよかった。スクリーンをタッチすると、太陽系を上から見た平面図になった。それを拡大し、地球を表示させる。月の位置。宇宙港の位置。近くの火星や水星の位置が矢印で表示されている。あと点線。


「この点線は自動ドアを開けていい箇所だよ。ある程度離れたところでこの宇宙船がくぐれる自動ドアを開くんだ。それでワープするんだよ。あとこの船にはオプションが付いていて、昔からある宇宙船のワープっぽい演出がついているよ… じゃあユキ君が操縦して、点線のところまで移動させよう…

宇宙船の速度をボタンで選択してから行先をタッチするんだよ…」


 僕はキララに言われたとおりに、宇宙船の速度を「中」にしてから点線のところをタッチした。


 すると宇宙船が方向転換をし始めて、目的地と思う場所まで移動をし始める。窓には行先を示す丸が表示されて、行先までの到達距離と時間が表示される。僕は後ろを見る。地球の雲が見える距離だったんだけど、だんだん地球が丸いことがわかる距離まで離れていく…

 数秒で地球が丸く見えるところまで離れた「地球は青かった」僕は言った。


「確かにね。青いね。そして白いところもある。ここから地球を見るとスイカぐらいの大きさに見えるね…」キララと一緒に去っていく地球を見る。僕たち二人だけの旅が始まる。


☆☆☆


「さて。ユキ君は宇宙船でどこかに行くのは初めてだから、いろいろ教えておくね。まずは…」


 キララは話始めた。


「うん。キララ先生」僕はコンソールのところにある椅子に座ってキララの話を聞く。


「本当は宇宙は怖いところなんだよ… 宇宙船の外は真空。それに、放射線も降り注いでいるし、生身で外に出てしまったら大変なことになるよ。まあ即死にはならないけどね。肺の中の空気を吐き出せば破裂しなくてすむよ…」


「えー。破裂。怖いこというねえ。このっ」僕はキララの耳をつっついた。


「あはっ。耳は敏感なんだから、きゅうにつっつかないの…」キララは僕のあたまをちょっぷした。


「さて。一応言っておかないとね。危険な目にあって、命が無くなることもあるんだよ…

でね。今の時代。かなり安全に宇宙旅行ができるようになったんだ。それはもう、きみ達ユキ君の時代で、高速道路を使って近隣の町まで行くのより、はるかに安全。何かとぶつかる心配もないし…

安全対策もかなり厳しくて、何重にも備えがしてあるんだ。

たとえばね。宇宙船の移動手段。星系内や惑星内は重力制御を使った普通の航行制御システムを使う。

操縦も、ほとんど宇宙船が制御してくれる。宇宙船の制御システムも3つあって、それぞれが同期して動いているんだよ。2つまで故障してもなんとかなる。

それと、普通使う移動方法は、自動ドアでも使っている空間と空間をつなげる方法だよ。

宇宙に大きい自動ドアを開けるようなものだね。距離は関係がなく移動できるし、エネルギー切れも、重力制御を使うものよりは考えなくてもいいんだよ。何せ距離は関係がないんだからね」


「そうか。やっぱり便利になったんだね… 僕の宇宙船のイメージだと、大きいロケットとか、燃料がいっぱいいるとかのイメージしかなくて… 大がかりなものとか、選ばれた人しか宇宙に行けないとか…」


「まあ、昔はそうだったんだけどね。地球人が異星人とコンタクトして、異星のテクノロジーである空間と空間をつなげる技術や、重力制御技術。エネルギーをこの時空間とは別のところを通して伝送できるようになってからかなり、変わってしまったね。

エネルギーの供給源は、燃え尽きそうになっている赤色巨星とか、恒星からもらって、エネルギーは自動ドアと同じ空間と空間をつなげる技術でどこにでも転送できる。

この宇宙船のエネルギーは重力制御で移動する分と、船内の温度を維持するとか、光を出すとかの分しか使わないんだよね。

もちろん。宇宙船は普通。衛星軌道上に停泊しておくし。地上からわざわざ打ち上げる必要もない。

大型バスのような宇宙船もあるんだけど、自動ドアでバスの中に直に移動できるし、宇宙空間から出発するんだよ。

まあ、もっとも近隣の良く知られている星系には自動ドアで直通で移動できるんだけど。

宇宙の移動を楽しみたい人向けだね。宇宙船があるのは…」


 とキララが話してくれた。


「ねえ。安全なことがわかったけど、危険はないの?」僕はキララに素朴な疑問をぶつけた。


「あるよ。スペースデブリとか、チリやごみだね…

すごい速度で衝突してくるから、もし船のバリアシステムがなかったら危ないよ…

重力やくっつける力とは逆の斥力、つまり反発力だね。近づくと近づいただけ反発力が強くなるんだ。だからくっつけることができない。大砲の弾が飛んできても、横にそれたり、跳ね返す力があるんだよ。専用のレーザーとか武器でないと宇宙船の壁は通り抜けることはできない…

えーとね。小惑星とぶつかっても、跳ね返るだけ。

そして船内の慣性力キャンセルシステムがあるから、かなりの加速とか、急な向きの変化があっても、中の船員には影響はない。もっとも太陽とかブラックホールの中に飛び込まなきゃだけど…」


「うわぁ。恒星の中に飛び込んじゃうことはあるの?」


「まあ。船内の安全装置をすべて切って、自分で飛び込めば行けるよ…

度胸試しにつかった人もいるみたい… ぎりぎりまで近くまで行くとか…

もしやったら、捕まるよ…」


「そうなんだ。で、船内の設備とかどうなっているの?」


「ああ。そうだね。説明しておくよ…」


 キララは説明をはじめた。


 今宇宙船は自動的に移動するようになっているから、コンソールを離れても安全だ。


 僕はキララが立ち上がり、コンソールから出る。


「ここが、トイレ」


「うん。トイレが最初に紹介するところ?」


「うん。使うでしょ… 一応男子用。女子用。と分かれている。僕。いや私はこっちだね…」


 赤いマークがあるほうを指さす。


「中をみていい?」


「うん。いいよ」キララは言う。


 僕はトイレの中に入った。普通の小便器と大のほうの個室がある。それと洗面台。

 普通だ。小便器は2つあった。


 そして、トイレの横にはシャワー室。これも男性用。女性用と分かれていてトイレの横にある。


「ふーん。シャワー室もあるんだね」僕は結構使いやすそうな水回りをみた。


「あと、こっち…」キララは。冷蔵庫がわりの保管庫(食料入れ)や、簡単なキッチンと調理器具を見せた。


「うん。十分だね…」調理もできる。


「こっちには小さいながら個室があるよ…」


 全部で4つの個室があった。6畳よりは小さい。ベッドがあった。


 そして上の階の展望室へと移動する。

 展望室は円形。まわりに窓がある。古い宇宙が舞台の海外ドラマで見たことがある宇宙船の円形の部分だ。もっともこの宇宙船は小型船なので、あそこまで大きくない。耳の形が変わっている宇宙人もいない。転送ルームはないし…。

でも、そのドラマに出てきた人が着ていた制服や通信用のバッジはクローゼットの中に入っていた。


 展望室には、窓のそばに椅子があったり、いっかくにはソファとテーブルもそなえつけてあった。


 結構居心地がよさそうだ。


「こんなところかな…」キララは言った。


 キララとの二人きりの宇宙旅行が、これから始まる。

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