未来での仮想現実旅行(4)
ここは海底のカフェ。
キラに案内されて、みんなで来たところ。そして飲み物を注文する。
「あ"ーびっくりした。耳が取れて落ちるかと思った」ラミちゃんはやっと復活して言う。
ラミちゃんとララお姉さんはニンジンジュースを飲んでひといきつく。
クロとミミちゃんは砂糖抜きの炭酸にはちみつを入れて飲んでいる。
僕も同じものを注文した。テーブルにすぐに出てくる。
キラも同じものにした。
「さてと十分に楽しんだかな。もうそろそろ仮想現実を出て戻るよ。戻る前に最初に出てきたところに行くよ。そこから戻るんだ…」
キラは案内板を操作する。すると最初に出てきた場所。ちょっと向こうにエレベーターのようなものがある。上には海底。
エレベーターを上がるうさ耳娘達。ネコミミっ子達。トリのハーフのキラ。そして人間の僕。
上層についた。
「ここの円の中に入るんだよ…」
キラが円の中に入ると消えた。
ラミちゃんやララお姉さん。クロに続いて僕も円の中に入った。
☆☆☆
「あー。現実に戻ってきた… なんか体が重いよ…」
僕はのびをした。そしてお腹が空いているのに気が付いた。
「あ" ー。背中がどこまでも伸びるわね…」ミミちゃん。ネコのように伸びをする。
「あ" ー。なんか体が重い…」
「ほんとね。重い…」
うさ耳っ子達。
クロは元のネコの姿だ。クロは床をタッチして「さてと僕は自分の家に帰って煮干しでも食べながらのんびりするとしよう…」と床をタッチして言い、TMRを使って帰っていった。
「ごはん食べないとね。仮想現実の中で食べたけど、実際にはお腹はいっぱいにはならないんだよ…
近くにレストランがあるけど、自分の時代に帰ってからがいいかい?」
キラはみんなに問う。
「そうだね。自分の時代に帰ってから行くよ。そうだ。僕たちの住んでいるところのそばの町のデパートにしてくれる? 食事してから、ついでに買い物をしてから帰りたい」僕はキラにお願いする。
「いいよ」
他のネコミミっ子達とトリハーフの子達。二人だけの世界を堪能した子達と合流して帰ることにした。
☆☆☆
仮想現実旅行から次の日。地球。2037年。
「ふれあい動物園に行く? チケットもらったのよ」
ヒメルが言う。
「いつ?」ユキはヒメルに聞く。
「今度の土曜日。みのるは用事があって行けないんだけど… チケットは4枚あるの…」
☆☆☆
休みの日。ちびっこ達は、ふれあい動物園に行くことになった。
メンバーは限られている。
猛禽類の檻の前。
「落ち着かないわね」
「あたしも」
「そうね…」
ヒメルとシロ。ソラは言った。じっと猛禽類がこっちを見ている。
いきなり、ばさばさと猛禽類が飛び立ち、こっち側に近い檻の内側にへばりつく。
「…」
トリのハーフ娘達はかたまった。
「ねえ。今。狙われたわよね…」
「うん」
「うん」
「あたしたちが、鳥のハーフってわかっているのかしら…」
「ねえ。行きましょう…」
「うん」
「うん」
じっと見ている猛禽類…
☆☆☆
「ねえ。ララちゃん?」
「ん?」
「さっきの猛禽類の檻の前なんだけど、ララちゃんやギンちゃんは大丈夫だった?」
シロはちびっこ達に聞く。
「うん。普通…」
「なんのことぉ」
「わしは大丈夫じゃ」
☆☆☆
ふれあい広場。
きっとウサギとか小動物が出てくるんだろうと思ってた。
「がちゃん」
後ろで檻の扉が閉じられる。檻?
「と。ト。トラ…」
見ると、トラ(成獣)が飼育員の人に連れられて出てきた。
「でっかい猫ね」
「そうね」
「おっきいねこー」
ヒメルとシロ。ソラ。そしてシロ(小)は言った。
飼育員の人が安全って言っている。なでていいと。
「ほらっ。なでていいって」
「ほんとー」
「なでてみる」
「あたしも…」
鳥のハーフの子達やララちゃんがトラをなでる。
飼育員の人に言われて、あることを試してみる。
ララちゃん。シロちゃん。ギンちゃん3人で、トラの背中に乗る。
「ねえ。見てとらー」
「トラね」
「トラ」
「でっかい猫…」
トラの上に乗ってまたがっている3人のちびっこ。
「お姉ちゃんたちも。3人で乗るぅ?」
トラにまたがっているちびっこ3人の写真をとるヒメル。
「えーと大丈夫ですよ。3人で乗っても全然大丈夫だから。お写真とってあげるわね…」
「そうね。せっかくだから」
「わかった」
「でっかいねこの上に乗るのもいいかもね」
ヒメル。シロ(大)。ソラはその順でトラの背中にまたがる。
「普通に座っちゃって平気だから…」飼育員のお姉さん。
「お金持ちの家にある。トラの敷物ってこんな感じなのかしら…」
「鳥のハーフなんだけど、でっかいネコの上にまたがっているのよね」
「おひげ…」
ヒメルは、トラの口に手をやって、口をあける。
「ぐるるるる…」
トラはうなる。
「牙こわーい」
「でっかい口ー」
「わらわを食べる気かのー」
「さて。トラさん。ちょっと疲れたから終わりにするわね。次はポニー広場でニンジンスティックをあげてみようね…」
飼育員の人は言う。
☆☆☆
ポニー広場。馬がいる。
「ニンジンスティック。売ってるぅ」
ララちゃんの言葉を聞いて、シロ(大)は言う。
「あんたは食べちゃだめよ。ポニー用なのよ…」
「わかってる…」
ララちゃんは、ニンジンスティックを買う。
「あたしも買うー」
「わしもじゃ」
「ほら。食べるのじゃ…」
ギンちゃんはポニーにニンジンスティックを出す。
ニンジンスティックをじーとみているララちゃん。
「食べちゃだめよ…」
「うん…」
☆☆☆
ポニー広場から出て次は狐のところ。
「狐…」
「おー。わらわの仲間がいるぞ…」ギンちゃんは狐の群れの中に入っていく…
「痛いな。こら。何をする無礼者め…」狐がギンちゃんの手をかんだり、足首を噛もうとする。
「こら。よさぬか。お狐さまだぞ…」ギンちゃんが岩の上に立つ。すると狐の群れが座る。
「よく聞け。人を噛んではならぬ。我慢するのじゃ」
ふかふかの尻尾をふりふりしながら、群れのリーダーのように言う。
狐たちはおとなしくギンちゃんの言うことを聞いている。
「ねえ。ギンちゃんの言うこと。狐たちわかるのかな?」
「どうなんでしょ」シロは言う。
「あ。痛い…」
シロ。それにソラ。
そばにいた狐が手を噛んでくる。
「まさか、あたしたちを鳥だと思ってないでしょうね…」
「まさかね…」
羽とか羽毛の頭とか見て、食べ物の鳥と勘違いしてないでしょうね…
☆☆☆
場面が変わり。ここはカザー星系。
ボスとミミアの会話。
「おはよう… よく眠れたかな。それとも眠いかな…?」
「おはよう。ちょっと寝不足…」
仮想現実の中で会合をして、その後に仮想現実を出てから食事をして前のボスが行っていたバーに二人で行っていたのだ。そして夜の2時すぎに分かれて、次の日出社したところだ。
「そうだ。大事なことを話そう… 例の計画だがTSIの過去改変が許可されたのだ。そこで思ったより早く計画を実行する。今日の午後にでもするつもりだ…」
「な。急に… 本当に実行するの?」
「まあ。そうだ。もう過去に送り込む猫たちの準備は完了している。そして移住先の惑星や、メッセージも用意済だ」
「そう…」ミミアはウサ耳をしょんぼりさせて返答する。
☆☆☆
マトラ星系のオフィス。
「ボス。大変ですよ… カザー星系のボスが計画を実行しようとしています…」
「そんなはずじゃないんだけど…。過去改変の計画はTSIによって拒否される見込みと言ってなかった?」
「そうだったのですが、過去改変はTSIによって許可されたとの情報が入りました。なので、計画を実行しようとしているはずです…」
「そんな… 大規模な改変… みとめられるわけがないんだけど。確かなのね?」
「こちらでできることは?」
「いや。もうTSIで過去改変ができるようになったのなら、もうすでに何もできない…」
「困ったわね… 地球の過去が変わっちゃうのよ…」
☆☆☆
ちびっこ達がふれあい動物園から帰ってきた日の夜。ニュース番組でとんでもないことを言っている。
この地球に小惑星が近づいていて2週間以内に衝突コースに入るという、宇宙機関からの確かな情報があると言っていた。
そしてその壊滅的な状況を救うために異星人が忠告し、また、避難先を用意しているという報道も同時にされていた。
そして政府からの番組。
「こんにちは。全世界のテレビ番組をすべて中断し、全世界同一の声明を発表いたします。
異星からのコンタクトがあったのは昨日のニュースで見た方がいると思いますが、この地球に小惑星が近づいているという情報も得たのであります。
そこで2週間以内に地球に住んでいる人すべてが対象となりますが、別の惑星に移住するという提案をしてくれた種族がいます。
まもなくネコが町中に現れると思いますが、ネコが開けた自動ドアをくぐると別の惑星に行くことができます。
一人ひとりの持ち物は制限されます。一人につきカバン2つまでとなります。大きいものは持っていくことができません。
必要なものは新しい地にあります。お金は持って行っても使えません。宝石や金なども置いて行ってください。
政府のほうで申告されている所得ごとに応じた財産に相当するものをお渡しいたします。移動に必要な車に相当するものも、飛行機や宇宙船にもなるものを個人個人にお渡しします。
明日以降から政府や各自治体から発令される命令にそって、移動を開始してください。なお、無人になると犯罪が発生する危険性がありますが、軍隊が出動し逮捕。または悪質な場合はその場で拘束・あるいは射殺などもありえますので、指示に従ってください。
この地球に残ると言う人がいる場合はその場で拘束し、強制的に連れていきます。仕事については以下の職業の人は明日から休業とします…」
というニュース映像が流れていた。
「なにこれ…」
「えっ」
「ねー。なんて言っているのー」ララちゃん。内容がわからないようだ。
「これ。やばいんじゃないの? きっとカザー星系の仕業よね…」
「ねえ。キラ。これ本当かな?」
「うーん。確認しないとね… ララお姉さん。自分の時代に戻って見て来てくれるかな…
僕も未来の家に行ってみるよ…」
キラとララお姉さんはTMRを使って未来に移動する。
「あたしたちも行ってくるわね」
「すぐに戻ってくるから…」
シロとソラが言い残して未来に帰っていく。
☆☆☆
最初に戻ってきたのはキラだった。
「ああ。やばいよ…未来の僕の家がなかったんだよ… 建物自体がないんだ。
そして誰もいなかったよ。廃墟の町があっただけ…
ああ。未来が変わってしまった。これは現実としか言いようがないよ…」
次に戻ってきたのがララお姉さんだった。
「あー。ほんとだった。家には誰もいなかったんだけど、荒れ果ててた…」
次にシロだけ戻ってきた。
「家自体がなかった。それとソラはどうしたの?」
いつまでたっても戻ってこなかった。
「そ。そんな… いままでの日常がなくなる…」僕はとほうにくれた。




