6話 初めての種蒔き
異世界で初めて作ったご飯は、まあ普通といったところか。お米はちょっと焦げてた。
透き通ったような青を背景に、大きな入道雲が、海の方に見える。
外に出てルリさんの農具を確認してみる。
スコップ、鍬、鎌、ジョウロ、熊手、支柱。
スコップと鍬は石製で、鎌、ジョウロは鉄かな。支柱は……、どんな素材かわからない。
後は、コンポスター。
生ゴミを入れて肥料にするものらしい。
サスティナブル。
農具は、王城や、国営の店に申請を出すことでもらえるほか、一部地域では、農具の貸出を行っているところもあるらしい。
「トマトを蒔きましょう」
「はい、まずは耕さないといけないですね」
この家に隣接する、というか、この土地に家が建ってる感じだけど、土地は結構広くて、50m四方くらいはある。
耕すのは2人でしたから、15分くらいで終わった。畝とか初めて作った。
「種、取ってくるね」
土地と縁側がつながっているのは便利。
種を蒔いて、水やりをした。比較のため、半分は私が、もう半分はルリさん蒔いてもらった。
「種を蒔いただけでは、スキルの効果は現れないようですね」
「そうですね、成長過程で変化があるのかもしれません」
縁側でそんな事を話していたら、コン、コン、コン、と、戸をノックされた。集金ですか?
戸を開けて応じる。引き戸はお互いに移動しなくていいから便利ね。
「はい、何の用でしょう?」
「手紙です」
「ありがとうございます」
手紙? 私に何を伝えたいの?
「もしかして、エル様か、シノ様ではないですか?」
確かに、住所を知っているのはあの二人ぐらいだろう。
風を開けると、一枚の紙が。
『ミカ・タチバナへ
王城では、明後日、ホワシー・レセニア交流会を執り行う。魔王シルブレア様がご出席されるが故、必ず参加するように。当日は鐘がなるまでに王城に入ってくれ。
国王エル・レセニア
追伸
ルリも参加させるように。』
ホワシー・レセニア交流会? 魔王シルブレア?
「交流会ですか? すごいものに招待されましたね」
「魔王シルブレアはどんな人ですか?」
人じゃない場合もあると思う。だって魔王だし。
「会ったことはないですが、とても強い魔王だと聞きました。レセニア王国の建国にも関わった人物らしいです。いつもの交流会には顔を出していないようですが…」
私殺される……?
「何か、事情があるのかもしれませんね」
「そ、そうですね」
その時、響いた。ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーンと、鈍い金属の音。
「鐘ですね」
「これが鳴るまでに王城に行けばいいんですね」
体内時計は10時を指しています。普通に行ったら余裕で間に合うね。
「でも、エル様は、何故私も呼ぶのでしょうか」
「私の付添人じゃないでしょうか」
「その可能性はありますね。文面的に、ミカさんと魔王を追わせるみたいな書き方ですし」
「何かあったら守ってくださいね?」
ほんの冗談である。わざわざ危険なことを、あの2人がさせることはない……と思う。
「勿論です。大根投げつけてやります」
「あはは、面白いこと言いますね」
「私をこれから『大根のルリ』と読んでください」
「あはは、はははははは」
笑いがこらえきれない。
「そんなに面白かったですか?」
息を整えて。
「面白かったです。なんだか元気になれました」
「それは良かったです。勇者様に何かあれば、『大根のルリ』が駆けつけます」
大きな和の家は、少しの間、笑いに包まれた。




