14話 まだ若い国王
デリーセルがレセニアに来ていた頃、エルとシレンは連邦王国トライソートに赴いていた。
トライソートも戦争の前であることが国民に広まっており、正式な身分を持つものしか国内に入れないように綯っていた。
二人はレセニアの紋章を見せ、大きな門をくぐる。
「国民に落ち着きがないな」
ふと、エルが言った。
「情報屋が仕事をしているのでしょう。郊外にまで知れ渡っているとは、驚きです」
国境では、厳しく検査された。持ち物一つ一つを確認され、何やら試験なんかもあった。
中に入ると、使いの馬車が用意されていた。正式に赴いたので、そのへんのサービスは最低限ある。
馬車は、トライソート政府の外交部に向かう。
◇◆◆◆◇
「それでは、解決はできませんよ!」
「だから何度も言っておるだろう。貴国のような弱小国家に、我々の強力な軍を用意するなんて言語道断でしょう。あなたがたも、すでに戦争には備えておるであろう? では、隣国に助けを求めることは必要ないのではないのか」
エルは、交渉に苦戦していた。相手はトライソート国王代理、外交大臣のカリードだ。
カリードの言っていることは至極当然で、レセニアのような小国に西側屈指の精鋭であるトライソート軍を貸し出すなんて以ての外なのである。
「そうですが……」
「私も鬼ではない。あなたはまだ若い。だが、レセニアの歴史はそう短くはない。あなたにとって重大な責任があるということもわかっている。だが、これは戦争で、自らを守るための戦いだ。強大な他国を頼る前に、やれることはなかったのか」
「……」
カリードの正論をぶつけられ、その気迫に押し黙ってしまう。国王になって、まだ五年ほどしか立っていなく、交渉術などはシノのほうが長けている。
「そんなようでは、国民が不安に思ってしまうだろう。強い気迫を持って、必ず勝てると信じて戦争を行うのだ。不安がっている国王を見たら、民も不安に思ってしまう。国王は国の顔なのだ」
代表。トップ。一番手。最高責任者。
言葉としての重みが、その立場の重みが、エルにはまだ受け止めきれない。
早逝した前国王は、エルほど未熟ではなく、立派な人物だった。そのカリスマ性や考えで、中央諸国とのつながりをもたらした人物。
「これは私の独り言だが、中央諸国の一つ、ネルリネ興国には腕利きの冒険者がいるらしい。なんでもそいつは、あの、“飛翔の勇者”の子供らしい」
カリードなりの優しさだ。自分の立場には従うが、助けを求めているものを見放したりはしない。
「ありがとう。この恩は戦後に必ず返す」
エルが礼を言う。
「言うからには、負けないでほしいものだ」
カリードは、前国王のことを知っている。




