12話 トマトの収穫
エリカと話しているうちに、家についた。
水精製機の設定をしてもらう。居間の机の上にそれを置いた。
「とりあえず、通常の周期に設定すればいいか?」
「いや、ミカさんのスキルの影響が出ると思うので、周期は短めでも良いかもしれません」
「と言うと?」
「えっと、私のスキルで作物の成長が早くなるみたいなんだよ」
「……それは、エル様かシノ様に伝えたか?」
「いえ、まだ言ってません」
「はぁ、どうしてそれを報告しなかったんだ」
ため息をついて聞かれた。
「まぁ、収穫できてからでいいかなって思って」
「待て、あそこに生えている作物は何だ」
エリカは庭に生えた植物を指さして尋ねた。
「多分、トマト」
「種はどうしたんだ?」
「『収納』に入ってた」
「なるほど……。 いつ植えたんだ?」
「2日前だよ」
「通常の成長速度の5倍はあるじゃないか」
「ほんと?」
めっちゃ早いじゃんね。
「ああ。ルリ、言わなかったのか?」
「ええ。収穫できるまで、正確な時間はわかりませんから」
でも、言ってほしかったな。
「そうか。君のスキルを用いれば、5日ほどで米を収穫できるかもしれないな」
「じゃあ、食糧問題の解決に、役立てるかも!」
私がここに来た意味がある。それだけでも、嬉しい。
「役立てるって表現では収まらない。確実に“貢献”できるだろう」
「やった!」
「では、5日で循環するように設定できた。あとはこれを田んぼに設置し、魔素を与えればよい。水が少ない場合は、多めに魔素を入れておけ」
「できたの? ありがとう」
「どういたしまして。私はこれで帰るとするよ。スキルについては、私から報告しておくが、構わないな?」
「うん。5日後、お米を持っていくね」
「それは、シノ様が大いに喜んでくれるだろう」
そうして、エリカは帰っていった。
◇◆◆◆◇
昨日は苗を植えて、ルリが田んぼに水を張ってくれた。
「ミカさん見てください! トマトが生っていますよ!」
元気ね。スキルの効果は大きいみたい。
「ほんとだ。食べられそう?」
「食べられると思いますよ、真っ赤ですし」
確かに、真っ赤な実がいくつか実っている。
「じゃあ、生で食べてみよっか」
包丁はこの家にはないので、丸かじりだけど……。
「美味しい。甘い感じのトマトだね」
3日しか水やりをしていないが、みずみずしくてよき。
ルリのほうは……
「すごく美味しいです! なんだか、体の疲れが取れたような感じがします!」
それは大袈裟でしょ。あるいは、ここの作物はあまり美味しくない?
「そんなことないでしょ。 ルリのもできたら、食べてみたいな」
「味も違いますけど、やっぱり、体が楽になったような気がします」
「そう?」
私には、普通のトマトなのだが。
「エリカさんやシノ様にも、食べてもらいたいですね」
女王がトマトで喜ぶかな? お米を食べてほしいところではある。
「そういえば、シルブレアにもらったもの、見てなかったね」
「そうですね。何を頂いたのでしょう?」
箱を出して開ける。
調理器具や、掃除用具、農具などが入っていた。
「えぇ!? こんな品質で……」
隣でルリが驚いている。
「どうしたの? この鍬は、ルリのものと材質が違うみたいだね」
「はい。“魔鋼”でできているみたいです…」
「“魔鋼”って?」
なんとなくだけど、魔素を含んだ金属みたいなことかな?
「金属に長期間、魔素を与え続けることで、変質した物質です。金属の種類や、与える魔素の性質によって、魔鋼の品質も異なります。これはアルミニウムが変質したものみたいですね」
軽そう。こっちにも元素とかあるのかな?
「いいものみたいだね」
「はい。耐久性もあって、軽量なのが特徴です。私の鍬、要らなくなっちゃいました…」
それはちょっと…。
「じゃあ、この農具は、他の農民の人に渡さない? 私達は、ルリのを使えばいいよ」
丸く収まるね。
「あぁ、気にしなくて大丈夫です。私のものは王城に返そうと思います」
ルリのも借り物だったんだね。
「ならいいんだけど」
農具はどれも、淡く輝いていた。
調理器具も便利なものがあった。
この家になかったものは、包丁、まな板、フライ返し、お玉、トング、とか。
あとは、油も。 ルリいわく、なかなか手に入れるのは難しいものらしい。
シルブレア、気が利くじゃん。




