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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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不穏な気配2

 ~side???~

 ガリガリガリと引きずられた大剣が自分の重さで石畳に傷をつけていく。大剣を引きずる???の視線の先には右足をそぎ落とされ、地面を必死に這う男が一人。


「おい!!俺がこの街に来て何をしたって言うんだよ!」


 男はかなり興奮しているようで、???に怒鳴り散らすがまったく反応が返ってこない。


「何とか言ったらどうなんだ!………ッッッ!?」


 再度怒鳴る男の腕が切り落とされた。壮絶な痛みに男は声にならない声を上げ、股の間は情けなく湿り気を帯びる。

 この時点で男は完全に心が折れ、体を這わせて逃げようとするが、???からは逃げられるはずも無く、大剣で心臓を一刺しされ男は絶命した。


「か、………かっ」

「………」


 引き抜かれた大剣はその質量を奪われたかのように軽々と振られる。次の瞬間、大剣は光を放ち、光の繊維となって???の指に嵌めてある指輪の中に集束していく。それはまるで蓮夜たちが身に着けている収納の魔道具のように。

 ???は懐から手帳を取り出して、紐の付箋が閉じてあるページをめくる。そこには今さっき殺害した男の顔写真と名前、男の情報が載っていた。


「………はぁぁ、うまくいかないものね」


 ???は深いため息をついて肩を落として手帳を閉じて仕舞った。

 すでに息絶えた男の死体にはもう関心を示すことなく、揺らめく外套が少女の体を隠しながら夜のロンドンを歩き出した。


 ~sideジル~

「なぁーんも、手掛かりねぇや」


 ジルは店のテーブルに突っ伏したまま、愚痴をこぼす。幸来は構わずフィッシュアンドチップスを頬張っていた。


「仕方ありませんよ、もう十人以上殺されてるのに未だに警察がその足取りを掴めていないんですもん」

「果たして、科学しか知らない連中に能力者の事件を解決できるのやら………さっきゅん、ポテトちょうだい」

「……どうぞ………ですが、警察にも能力についてを知っている方はいますよ」

「それは、上であぐら掻いてる上層部だけでしょ?僕あいつら嫌いなんだよねー、能力者の事件はそりゃ、各組織(僕たち)が解決するけど、それにしたって押し付けすぎだよ」


 幸来のプレートから大きめのポテトをつまんで口に運ぶ。


「たしかにあまりいい話は聞かないですね」

「でしょ?だから変に知られるよりいっそ僕たちだけの極秘にすればいいんだよ」

「選択肢の一つとしてはアリですね、あと昨日も切り裂き事件が起こったみたいです」


 幸来は持っていたカバンに入れていた新聞を取り出して、ジルに差し出す。そこには人間が惨殺された惨状が写真として載っていた。血痕と死体があったと思われる場所に白いチョークで人間の形がかたどられていた。


「こんなに大きく現場の様子は残っているのに、犯人は特定されない、ちょうど監視カメラがない場所での犯行だね」

「被害者はドロイ・エディソン。私たちの管轄ではないですが、アメリカのルーラー・オウルが追っていた人物です」

「そうなるとあっちも首を突っ込んできそうだね.早いとこケリつけよう」

「ですね」


 ルーラー・オウル。

 アメリカにあるリベラティオ・コロナと同じ能力者による組織である。ただアメリカに拠点があるだけでルーラー・オウルの任務はリベラティオ・コロナと同様に全世界にわたる。理由は他組織間の連携と任務の独占防止である。過去に任務を独占したは良いものの一組織では抱えられないほど根が深い能力者集団を相手に大きな打撃を受けそのまま復興することなく姿を消した組織があった。その影響で世界の均衡が一度揺らいだ歴史を持つ。そのため現在では大きな組織は全世界の任務に赴き、他組織間の連携を図っているのだ。


「と、さっきゅんゴチね!」

「現場に行くんですね?では、私はホテルで待機してますね」

「せっかくだからロンドンの街を観光してきたら?」

「……そうですね、そうします」


 幸来と別れたジルは昨日起きた事件現場へ向かった。

 そこはレンガ調の建物に挟まる狭い路地だった。奥へ入っていくと殺された男性が倒れていたと思しき場所が赤黒く染まり、白いテープが男性の体勢を(かたど)るように張られていた。


(死体が残っていた方が都合がよかったんだけどね)


 目に魔力を集中させても魔力の残滓を捉えることが出来なかった。そもそも殺されたドロイ・エディソンは裏社会に通じていても魔力を持たない普通の人間であるため、抵抗による魔法の使用という線はあり得ない。犯人もよほど魔力操作が上手いのか、もしくは魔法を使わずに対象を仕留めているのだろう。


「うまいねぇ、ブラックリストに載ってなかったらスカウトしようかね」

「……」

「ん?」

「っ!」


 ジルが一人ブツブツぼやきながら血痕を観察していると、不意に視線を感じそちらに目を向けるとジルに視線を向けていた人物と目が合った。しかしそれも一瞬で路地の隙間から見える景色ではその人物を捉える前に見切れてしまった。


(さっきの人も魔力を持ってたね。でも、事件とは関係ないのかな?現場にいた僕が偶然目に留まったってところかな今のは)


 社会の中には魔力や能力を隠して暮らしている人幾らかいる。そのため今の数瞬もほんの偶然に過ぎない。しかし、この状況でジルはその偶然をすんなり忘れるという選択肢は取らなかった。


(流石にそろそろアクションを起こさないとね)


 そうしてジルは目が合った人物を尾行し始めた。


 ~side???~

(見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた!)


 彼女の内心は穏やかではなかった。高鳴る鼓動は止まることを知らず、ほんのり上気した頬を両手で押さえながらふるふると首を振って歩くスピードを上げる。


(でも、リストにはあんな人いなかった……ていうことは?…運命の人ってこと!キャー!)


 彼女は腕を降ろし、唇をキュッと結び、くわっと顔を上げて何かを決意したように目を輝かせていた。


(待っててね!……ダーリン!)

(………んー、なんかほんとにカンケーなさそうだなぁ)

 



ここまで読んでくださりありがとうございました。

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