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魁の紡ぎ  作者: 熊谷 柿
終幕
52/52

志、永久に

登場人物

元緒げんしょ…………異国の方士。

 空は、晴れていた。

 走り去ったのは、南だった。

「チッ」

 その光を眼で追いながら舌打ちしたのは、弾汗山だんかんさんの麓にある啜仇水せつきゅうすいほとりで佇んだひとりの老夫だった。蓑笠みのがさを被った頭は額が異常に突出し、鼻はひしゃげ、反歯そっぱである。身の丈は六尺にも満たず、あかざの杖にすがっている。どうしてか右足が木脚で、漆黒の襤褸ぼろまとっていた。

檀石槐だんせきかいと云っておったか。それにしても、とんでもない志を抱きおったわい」

 銅鑼どらのような声音こわねだった。独りちたその老夫は、微笑んだ。走り去った光を追うように、ゆっくりとその歩を進めた。背には一本の剣を背負っていた。

 北から風が吹いた。

 雄大に広がる草原を撫でていた。(了)

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