表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

NPC狩り対策

 人間のプレイヤー達から逃げ切った僕らは、他のNPC達を探した。とにかく、今は情報集めを優先させるべきだと考えたのだ。人間のプレイヤー達が現れているだろう他のエリアはどうなっていて、何が起こったのか。

 NPC達から話を聞いた結果、事態はあまり芳しくないようだと分かった。

 どうやら他のエリアでも人間達は僕らに敵意を向けているようなのだ。出会った中には瀕死の重傷を負わされたNPCもいて、サヨが回復させてあげていた。

 収拾した情報を整理してみると、僕らがいた街以外でもNPCが人間のプレイヤー達を襲った事件は発生していたらしい。それはほんの数か所に過ぎなかったようだが、それでも人間達は揃ってNPCを敵視し、そして“狩りの対象”としてしまったようだった。

 「多分、SNSで広まったのだろうな」と僕は言った。

 それを聞くと、アーサーもサヨも不思議そうな顔を見せた。彼らはSNSを知らないから分からないのだろう。今の時代、何かしら事件があればSNSを通じて瞬く間に拡散されてしまう。

 多分、

 「気を付けろ、NPCは俺らを襲って来るぞ! ただ、あいつらはレベルが高いから経験値が高いし貴重なアイテムも持っている。狙う価値はある」

 なんて情報が流れたのだろう。

 プレイヤー達にとって、NPCはモンスターと大して変わらないのだろう。キャラ数が制限されている程度の認識でしかないのかもしれない。倒してしまったら、もう二度と復活はしない。ただ、交渉次第では仲間にできるのだけど。

 或いは、そんな話もSNSを通じて伝わっているかもしれないが、今のところは“NPCを仲間にしよう”ってプレイヤーはほとんどいないみたいだった。少なくとも僕らは耳にしなかった。

 

 「人間のプレイヤー達への対策を考えなくちゃいけませんが、はっきり言ってレベルを上げるくらいしか思いつきません」

 

 現状を把握し終えると、僕は正直に二人にそう話した。

 「モンスターを毎日アホほど倒し続けましょう」

 NPCにアドバンテージがあるとすれば、休まずにモンスターを倒してレベルを上げたりアイテムを拾い続けられる事くらいだろう。街に行けないので武具の強化はし難いし。

 レベルをとことんまで上げれば、きっとプレイヤー達は僕らに無理には手を出して来ないだろう。そうして、時が過ぎるのを待って、人間達がNPCを狩るのに飽きてくれるのを願うしかない。そのうち、運営が何かイベントを始めたら、そっちに関心がいってNPCは安全になるかもしれない。

 ……ただ、中にはNPCに意地でも執着するような連中も絶対にいるだろうけど。

 

 レベルアップの為にモンスターを倒し続ける中で、僕らは何度か人間のプレイヤーに遭遇し、なんとか撃退に成功していた。倒すと、彼らの持っているアイテムやゴールドを手に入れられるからメリットもあるにはあるけど、もちろん敵対視されるというデメリットの方が大きい。

 とにかく、レベルアップに勤しむしかない。

 ただ、そんな中で、僕は“何か打開策はないか?”と常に思案していた……

 

 その日も僕らはモンスターを倒していた。比較的倒し易くて、経験値も高く、アイテムもドロップしてくれる狙い目のモンスターを見つけたのだ。それはガンイーターという名で、岩のような姿に大きな顎を持っていて、犬くらいの大きさだった。攻撃力も防御力も高く、それなりに素早いのだが、カウンターに弱くて、攻撃を仕掛けて来るタイミングで攻撃を当てるとあっさりと倒す事ができる。

 そのモンスターは谷間のような場所にたくさん湧いて出るので、僕らはそこを根城にしばらくガンイーターを倒し続けていた。しかし、そこで休憩している時に、不意に弓矢が降って来たのだった。

 人間達が襲って来たのか? と、それに僕は恐怖した。この辺りに出るモンスターはレベルが高いからまだ来ないだろうと思っていたのに、もう来るようになったのか、と。

 ところが、射手に目を向けて安心した。そこには、弓使いのキサラの姿があったからだ。

 いつか街の中で僕らを襲って来たパーティのリーダーだ。実はあれから何度か遭遇しているのだけど、意外にも一度も戦闘にはなっていない。もっとも、仲が良くなったという訳ではなく、戦っても互いにダメージを負うだけでメリットがないと分かっているからなのだけど。

 今回もキサラは別に僕らを狙った訳ではなかったようだった。近くにいたガンイーターを倒そうとしていたようだ。その弓矢を僕らからの攻撃だと誤解したガンイーターが襲いかかって来たので、カウンター攻撃で仕留める。もう僕は慣れているのだ。

 「こいつら、接近戦でカウンターを狙わないと倒すのかなり面倒だぞ?」

 そう言ってみると、キサラは「うちらの遠距離攻撃の威力なら大した手間じゃないのよ」と強がった。

 弓矢使いの攻撃は、魔法攻撃よりも威力が劣る。ただ、弓矢使いは機動力に優れ、逃げ回りながらチクチク攻撃されるとかなり厄介だ。人間のプレイヤー達も恐らくはかなり嫌がるはずだ。

 「他の連中はどうしたんだ?」

 キサラのパーティには剣士と魔法使いが二人いるのだ。

 「いるわよ。ただ、一人減っちゃったけどね。氷の魔法が得意だった奴」

 それを聞いてサヨが心配そうな声を上げた。

 「減った? 何かあったのですか?」

 「殺されたのよ。人間のプレイヤーに。

 ……あいつら、こっちは何にもしていないのに………」

 そう答えた彼女の表情はとても恨めしそうだった。

 コピー人格であるゴーストに“恨み”の感情まであるかどうかは分からない。しかし、少なくとも人間の僕から見るとそう思える表情を浮かべている。

 それを聞いて「まぁ……」とサヨは声を上げた。悲しそうな顔。

 それからキサラは恨めしそうな表情のまま、

 「あいつら何なの? どうして、アタシらの事を狙うのよ?」

 と呟くように言った。

 僕は頭を掻くとこう返す。

 「お前達だって、僕らを狙って来たじゃないか」

 「そうだけど! 少なくともアタシ達はメリットがなければやらないわ。つまり、飽くまで目的は“生き残る事”。あなた達を殺す事それ自体じゃない。

 でも、あいらは何か違う。レベルを上げたいのなら、いくらでも湧いて来るモンスターを狙えば良いのに、どうしてアタシ達をターゲットにするのよ? あいつらにだってリスクがあるのよ?」

 そのキサラの疑問を聞いて僕は困ってしまった。人間の側からすれば、この世界は飽くまでゲームで、楽しむ為にある。それをどう理解させれば良いのかが分からなかったのだ。

 人間達にとってみれば、キサラ達はただのプログラミングで、人権はもちろん、人格だってないのだろう。だから平気で“楽しむ為”に殺せる。

 僕だって、もしこんな奇妙な体験をしていなかったのなら、そう認識していたはずだ。

 今の僕には、サヨにもキサラにも感情があるように思えてしまう。でも、もしかしたら、それこそが間違っているのかもしれないのだし。

 “NPCに対して、人権を想定するだなんて馬鹿馬鹿しい”

 それが普通の人間の正常な感覚だろう。

 どんなに彼らに自らの意思があり、自ら喋っているように思えたとしても。

 「人間達は“生き残りたい”なんて、思っちゃいないのさ。彼らは“楽しみたい”と思っているだけで。

 だから、僕らを狩るのが楽しかったら、命の危険があっても僕らを狩る。そもそも彼らにとってのこの世界の命はとても軽いのだけどね」

 「なにそれ?」と、僕の説明を聞いてキサラは言った。

 「そんなの狂っているだけじゃない!」

 僕はその彼女の訴えにショックを受けた。

 なんだか、本当に人間がそんな“狂った”存在に思えてしまったからだ。

 そんなところで「あの!」と、アーサーが声をかけて来た。

 「どうしたんですか?」

 「何か向こうの方から戦闘音が聞こえてきませんか?」

 戦闘音?

 耳を澄ますと、確かに魔法か何かを放った音が響いている。そして、そう警戒をした瞬間、騒々しい爆発音まで響いて来た。

 キサラを見やって尋ねる。

 「お前の仲間か?」

 彼女は首を横に振った。

 「そうかもしれないけど。確かあっちの方向に言ったから。

 でも、アタシの仲間は爆裂の魔法なんか使えないわ。爆弾だって持っていないし」

 それを聞いて僕は嫌な予感を覚えた。それはサヨやアーサーも同じだったらしい。

 何も言わずにキサラは飛び出していた。弓矢使いだから、中々に素早い。僕は「おい! 待て! 一人で行ってどうするんだよ?」と呼び止めたが彼女は止まらなかった。

 “ええい! 仕方ない!”

 僕は地面を蹴ると彼女を追った。もし、人間のプレイヤーが暴れていたのなら、下手すれば殺されてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ