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人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第9章 人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん
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 人が落ちてくる! しかも女の子だ! 「親方! 空から女の子が!」なんて言ってる場合じゃねえ。あれとはスピードが違う。あっちは飛行石で減速。こっちは自由落下。残り時間は……ない!


 せめてキャッチをと腕を伸ばす間もなくその子は落っこちた。俺を直撃した。意識が一瞬飛んだ。いや、一瞬だとなんで言えるのか。


 頭の周りに飛んでいた☆がようやく消えた。思考が戻ってきた。両の手のひらに“むにゅっ”とした感触があった。なんだか懐かしい感触だ。

 手のひらのほうを見た。女の子のお尻がそこにあった。って、待てよ。女の子、お尻、そしてこの感触と言ったら……。


「み、美砂ちゃん?」


 途端にその子がガバッと跳ね起きた。俺の顔を見た。


「え、英介さん?」


 間違いなかった。それは美砂ちゃんだった。天使の格好をしていた。頭に輪っかがあった。背中に真っ白な翼。あれ? じゃあなんで落っこちてきたんだ? 彼女飛べるんじゃなかったっけ?


「うわあーん、英介さあん! 逢いたかったぁ」


 美砂ちゃんが抱きついてきた。いったいどういうことだ? 彼女は天界に帰ったんじゃなかったのか? いや、もしかして俺が死んだのか? だから彼女が迎えに来たのか?

 いや彼女は落ちて来たんだぞ。天使が落ちて……、ちて……、ちて……。って、まさか彼女は“堕天使だてんし”になっちまったのか? あの時心の中で俺を応援したから。じゃあこれは俺のせいなのか?


「ちょっと美砂ちゃん、落ち着いて。落ち着いて話そう。なんで君は落ちてきたの?」

「わ、私またぬし様から英介さんの所へ行っていいって言われたんです。だから私うれしくって。うれしくってうれしくって思わず飛び方を忘れてしまったんです。ごめんなさい」


 顔を真っ赤にして謝っている。うん間違いない。これは美砂ちゃんだ。姿形も、声も、それに香りも、そしてお尻の感触も一緒なんだ。彼女は帰ってきた。帰ってきてくれたんだ。俺が死んだわけじゃないんだ。彼女が堕天使になったわけじゃないんだ。


 えっ? 神様からは許可が出たのか。それじゃあもう一方も……。


「じゃあ久梨亜は?」

「あたしならここにいるよ」


 上空から声。久梨亜がそこにいた。悪魔の姿だった。こっちはちゃんと浮いていた。


「久梨亜、お前も帰ってきたのか」

「まあね。しかし美砂、あんたはひどいね。あたしがブレーキをかけてやらなかったら今ごろ英介はぺしゃんこだったよ」


 久梨亜のやつはトホホという感じで俺たちを見ていた。おい、ブレーキかけんならもうちょっとスピード落としてくれよ。


 ちょっと待て。忘れてた。ここは花見でにぎわう公園。そんなとこに天使と悪魔が現れたんなら大混乱は必至じゃあ……。


「大丈夫。ちゃんとあたしが結界を張ってるからね。周りのやつらはあたしらを感知できない。衣装を替えたら結界は解くさ。その辺りは抜かりない。知ってるだろ?」


 彼女らは衣装をチェンジした。もちろん着替えたわけじゃない。いつかの美砂ちゃんの変身みたいにそれぞれの衣装が変化して人間の服装になったのだ。同時に翼やその他の人間にはあり得ない部分も姿を消した。それにしてもなんだよ。美女と美少女の着替えシーンが見られないなんて。同居してた時も風呂とトイレは絶対にのぞかせてくれなかったもんな。覗いてたらたぶん殺されてたな。9回死にかけて生き延びたら、これがほんとの「九死に一生を得る」ってやつかな。違うけど。

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