木曜日〜結果〜
ーー結局。
醤油どばどば事件があってから、あのままではどう考えても食べられないので…
「焦げた…」
ご飯の量を足して、チャーハンもどきにでもしようとしてたのだが…
俺は超が付くほどの初心者。
そんなハイレベルな事は挑む方が間違っていた。
おっさんにそんな技術はありませんでした。
丸焦げになったフライパンを横目に、白飯+マヨネーズと何とも庶民的な食べ方で難を逃れた。
ーー翌朝。
醤油は一旦小さな瓶にでも移そうかとも思ったがいかんせん、そんな大それたものがウチにあるわけがなかった。
(…帰りに買ってくるか)
なので、今朝は醤油皿に移してから、卵の乗った白米の上にチビチビと垂らした。
これではまだ完成形とは言わないのではないか?
やはり寝起きの卵割りは少々難しい。が、昨日よりは慣れてきている。
今日は卵は3つしか使ってないしな!
昨日の奇跡の1回により早く近づけるよう、精進せねば。
「いただきます」
おかずはない。
卵かけご飯のみのシンプルな朝食。
嗚呼…ここにたまご焼きやお味噌汁や魚の焼いたのがあればなぁ…
久々に流れる涙は、しかし今のには少しだけ未来に向かう希望があった。
卵に箸を入れる。
トロリと流れるそれは、輝く黄金のようだった。
ご飯の白と卵の黄色がうまい具合にマッチして、そこに混ざり込む醤油。
「うん、うまい」
何とか形になった卵かけご飯は、口の中で幸せを運んでくれた。
昨日のマヨネーズご飯ではない!
卵かけご飯なのだ!
「料理のさしすせそ、か…」
今回『せ』の部分に当たる醤油が、たった醤油1つがこんなにも大事だったとは思いもしなかった。
量を間違えるとあんな悲惨な事になるということも…
(…もっと上手くなりたい)
俺は素直にそう思った。