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月のない夜  作者: 林 秀明
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後編

 月のない夜は寂しくとても寒かった。遠くから犬の鳴き声が聞こえ、今にも飛びかかってきそうな気がした。足元に注意しながら、左手の壁をつたって歩くことにした。


 田舎の夜は都会に比べてとても暗かった。


前方に進むほど、家に帰れなくなるんじゃないかと思い、舗装されていない砂利道の歩く音が妙に響いた。ゆっくりと歩いていくと、足元で何かぶつかった感触がした。


「きゃ」


私は一歩後ずさり、その足元で触れた何かをすぐに判別しようとした。暗くてよく見えなかったが、それはネコだということが分かった。「よかった」と一安心したその時、急にネコが私に向かって威嚇し始めた。


「ふぎゃー」


ネコの逆立つ毛とその大きさに私は尻もちをついた。私が初めて現実で見たネコはテレビのかわいいネコとは違うお化けであった。私は怖い気持ちでいっぱいになり、泣きたくなった。


 空を見上げると、真っ暗で何も見えなかった。その気持ちがより私の気持ちをより怖くさた。すると空がどんどんと遠くなっていくような気がした。遠く小さくなるにつれ、他の建物が大きくなっていった。いつしかネコの目線と同じになった。


「困ったむすめね。あんなにも出てはいけないって言ったのに」


ネコは穏やかな目をしながら言った。なぜネコの言葉が分かるのだろうって思うよりも、お母さんに似たその口調に安心感がした。


「お母さんなの?」


私はお母さんに近付き、すりすりした。自分がネコになっている事よりも、何よりもお母さんに会えて良かった。


「ええそうよ、お母さんよ。よく月のない夜にここまで来れたわね」


「お母さんが心配で外へ出ちゃった。ごめんなさい」


「やっぱりみーはお父さん似ね。好奇心が強いところは」


「お父さんに?」


「ええ、今までだまっていたけれど、私たちはネコなのよ。日が当ったり、明るい所では人間なんだけれど、日がない所、暗い所ではネコになる。ネコが人間の環境になれてしまったの、そして私達ができた」


「じゃあ私は……ネコってことなの?」


「そうよ、ネコなのよ。人間としての生活が多いから分からないけれどね。みーには人間でずっといて欲しかったから月のない夜に外に出させたくなかったの。お父さんは悪い人間に捕まってしまって、ずっと暗い所に住んでるの。私はお父さんを探しに月のない夜ネコになって探しに行っているの」


「そうなんだ……」


私は自分の生活を振り返った。お父さんの記憶がないのは、ネコとして生活をしていた時かもしれないと思った。


「私もお父さんを探しに行く。そしてみんなでネコとしてまた暮らしたい」


「……心配ばかりかけてごめんね。お母さんが頼りなくて。もっとしっかりしてればこんな事にならずにすんだのにね」


「お母さんのせいじゃないよ。私また三匹で公園へ続く坂道を登ってみたい」


お母さんはにこっと笑い、顔をみーへすりすりさせた。温かい毛が私を包み、毛が鼻にかかり少しこそばかった。どうすれば鼻をかけるのだろうかと前足をじたばたさせながら私は思った。


お母さんがそばにいてくれて良かった。


 

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