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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 16 ハロウィンに仮装しよう!

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16-14 毒キノコ系小悪魔女子も取り締まってほしいという願望


 城咲さんは何も言わない。それをいいことに、私は畳み掛けた。



「お尻派になった、可愛いいい子って言った、だから何? 文句言われる筋合いなんかないよ、むしろ感謝されるべきところじゃない。そのために私を恋人役に仕立てたんでしょ? 大きな赤ちゃんを育てるお手伝いをするベビーシッターがほしかったんでしょ? キスでもアンでもヤンでも何でも経験させて、最終的にこういうことを城咲さんとしたいと思わせたいんでしょ? だったら最初の使い捨ての恋人代行なんかに嫉妬してウジウジしてんじゃないよ! いつも通り、これまでと同じように、堂々と有瀬留佳至上主義を貫き通しなさいよ!」



 と、ここまで一気に捲し立てて、はっとして口を押さえた。


 やばい、大きな声出しすぎたかも!


 しばらく黙って様子を窺っていたけれど、少し待っても静寂は破られなかった。誰かが起き出してくるような気配もない。



「ごめんなさい……柊さん」



 安堵して謝るより先に、城咲さんが小さく告げた。



「私、思ったより……心の狭い奴、だったみたい。自分で言い出したことなのにね。柊さんは何も悪くないのに、みっともなく八つ当たりして。留佳が、変わってくみたいで怖くて……変わってほしいって思ってたのに。何でも怖がって、本当に何やってるんだろう、私。自分で自分が嫌になる……」



 長い髪が、俯いた横顔を隠しているせいで、彼女の表情はわからない。でも、多分泣きそうになってるんだろうと思った。



「いいよ、私こそごめん。キツいこと言ったよね」



 それから恐る恐る、城咲さんに手を伸ばして頭を撫でた。城咲さんは大人しくさせるがまま、私のナデナデを受け入れてくれた。


 何の引っ掛かりもない、絹みたいに艶やかな感触が掌を滑る。同じシャンプーを使ったって、私はこうはなれない。同じ香りを纏ったって、この人にはなれない。


 その事実をきっちり突き付けられたようで胸が痛くなって、でも何だか清々しい気持ちにもなった。



「叔母さんがね、怖いのは知らないからだって言ってたの」



 城咲さんをナデナデしながら、私はそっと呟いた。



「でも、知りすぎてもきっと怖いんだよね。知ってるからこそ怖いっていうのもあるんだと思う。例えばベニテングタケとかさ、見た目可愛いじゃん?」



 そっと城咲さんが顔を上げる。先程までの悲壮な表情は消え、何の話を始めたんだ、とでも言いたげに、不思議そうな目でこちらを見ていた。



「でもあれを食べた人は地獄の苦しみを味わうんでしょ? 私は食べたことないから可愛いなんて呑気に言ってられるけど、死ぬこともあるらしいし、食べた人には恐怖の対象でしかないよね。私と城咲さんの違いって、そういうことじゃないかな」



 そう、私は昔の有瀬くんを知らない。

 彼のやらかしの数々をそばで見ていたら、やばい奴認定して近付かなかっただろう。


 頬チューの時ですら、あれだけビビり倒したんだ。怖くても離れず、ずっと好きでい続けられる城咲さんは勇者だ。カップ焼きそばも作れるらしいし。



「私は本当の怖さを知らないだけ。知識として知ってるけど、触れたことがない。だから平気ってだけだよ。すごいことでもなんでもない、ただの無知な怖いもの知らずなんだよ。それに」



 いつか聞いた久月くんの言葉を、頭の中で反芻しながら、私はゆっくりと声に出してそれをなぞった。



「多分……有瀬くんの中には、城咲さんへの恋愛感情がちゃんとあるんじゃないかな、って思う。まだ気付くまでには至ってないみたいけど」



 言葉を吐いた喉が軋む。

 夏休みに見た、お見送りの別れ間際の二人の姿が思い出されて、ぎちぎちと痛みが競り上がっていく。


 痛みが涙腺に到達する前に、私は無理矢理笑った。



「怖いのは仕方ないって。有瀬くんのやばいとこ、いっぱい見てるんだもん。八つ当たりならどれだけしてくれてもいいし、私じゃ役立ちそうにないって思ったらいつでも切っちゃっていいよ。でも、友達関係は切ってほしくないな。有瀬くんの恋人お役御免になっても、城咲さんには友達でいてほしいんだけど……無理そうかな?」


「き、切るわけないでしょ。私達は友達よ。ずっと友達なんだから。大体、柊さんが友達だと言ったんじゃない。勝手に切るなんて許さないわ、無理してでも友達でいてもらうわよ?」



 私の腕に縋り付き、城咲さんがキッと睨む。調子が戻ったみたいで何よりだ。



「じゃ、これにて解決だね。これからは溜め込まずに発散してよ。八つ当たりされても友達やめたりしないからさ」



 そろそろ寝ないと、と促しかけたところで、城咲さんは真剣な眼差しをこちらに向けた。



「柊さんは、留佳のこと、どう思ってるの?」



 氷の手で、心臓を鷲掴みにされた――気がした。


 その瞬間感じたのは紛うことない、正真正銘の恐怖だった。


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