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悠久創世譚 エデンコード  作者: ろうでい
第五話 夜に霞む月
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5-9


――


「……ボスモンスターを倒して宝玉を手に入れるなんて、なんかすげーゲームっぽくてワクワクするなー! な、ラゼ!ヨア!」


「…………」


「……はあ」


 ライズマーケットシティに、隠しエレベーターを使って戻ったユウの様子はとても明るい。

 その反面、肩に乗ったラゼットとヨアの表情は、真剣そのものだった。


 街の喧騒が少し収まった昼過ぎの時間帯。

 二人と一匹は裏通りを抜けて街の出口へと歩いていた。


「……な、なあ……。なんでそんな沈んでるんだよ……。だって、ヨアのお金使わなくて済むんだし! モンスター討伐くらい、俺とヨアのフレームなら問題ないだろ!?」


「……だから、疑ってるんだよ。ボク達がフレーム使いということはヴィネットだって重々承知しているでしょ? その上でモンスター討伐なんて……おかしいと思わない?」


「おかしい、って、なにが?」


 目を点にして首を傾げるユウに、ヨアは呆れながら溜息をついた。


「朧月商会の人脈を使えば、フレーム使いをその森に派遣して宝玉やらを手に入れることなんて、問題なく行えるはずだしそんなに欲しいものならとっくに手に入れに動いているでしょ。で、なんで今回のボクの依頼に対してわざわざそのクエストを当ててくるのか……。何か理由があるはずなんだ」


「どーかんだぜ。ぜってーあのガキ、なんか企んでやがる」


 ラゼットはユウの肩からヨアの肩に飛び移り、人と獣で同じような考え込む表情を浮かべる。


「そんなの、並のフレーム使いなら達成できないようなミッションってことじゃんか。俺のイヴァレックスとヨアのファントム・アイならいける! って踏んだんだよ多分」


「……ヴィネットの話、聞いてた? 【旋毛の森】のダンジョン難易度は【Bクラス】……。ニューレアルに熟れたプレイヤーやフレーム使いなら、楽勝でクリアできる難易度だって言ってたんだよ。で、その森のボスモンスターに、ボク達二人で討伐? ……絶対に何かあるよ」


「……うーーーん……。で、でもさ……考えても俺達には分からないんだし、行くしかないじゃんか……」


 ヨアとラゼットと対立構造になるのが怖くて、ユウは恐る恐る説得を試み始める。


「……ま、それもそーだな。ヨア、警戒さえしてりゃ、どーにかなんだろ。出発は明日の朝だったな? ひとまずログアウトして明日落ち合おーぜ」


「……だね。まあ、最大限、旋毛の森に関する情報は集めておくよ。ログアウトしても現実世界でニューレアルの情報は幾らか拾えるしね。ラゼットも、他の人には見えないからって警戒を忘れないで」


「ああ、わかってる」


「……あのー……。俺、なんか忘れられてません……?」


 真剣な表情で頷き合うヨアとラゼットを見て、一抹の寂しさと疎外感を感じるユウであった。



――



「……行きましたね」


「ま、お手並み拝見といきましょ、ジュリ。頼んだわよ」


 月楼閣の展望台からライズマーケットシティを見下ろすヴィネットとジュリエッタ。

 

 眼下にユウとヨア、二人が歩いて行く姿を見つめながらヴィネットは腕組みをし、ジュリエッタは瞳を閉じて頭を下げる。


「承知致しました。旋毛の森へは、私が二人を確実に案内いたします」


「馬車の手配は済ませておいたわ。明日の朝、面倒だけどよろしく」


「とんでもございません。ヴィネット様の指令で御座いますから」


 そう言ってジュリエッタは頭を上げてヴィネットの方を向き……くすっ、と微笑んだ。


「しかし……ヴィネット様。何故あんな嘘を?」


「……嘘?」


「ええ。……旋毛の森のダンジョン難易度が【B】だなんて」


「……あら?そうだったかしら?」


 それを笑みを浮かべたジュリエッタに指摘されて、ヴィネットも同じように窓の外を見ながら微笑んだ。


「旋毛の森のダンジョン難易度……。私の記憶では【S】だったはずですよ。熟練のフレーム使い数名がパーティを組んで挑み、どうにかクリアできるかできないかのラインに立てる、ニューレアルでも屈指の難易度を誇るダンジョン……。その森に、二人で挑ませるなんて……お人が悪い」


「……ふふ。あーあ、勘違いしちゃってたかしら。簡単にクリアできるおつかいだと思ってたんだけどなぁ」


 口元に人差し指を当て、あざとく笑むヴィネット。

 見下ろしたユウとヨアが、足取り軽くライズマーケットシティを歩いていくのが分かる。


「まぁ、世の中そんなに甘くないってことね。……逆に、このおつかいを達成できたのであれば……あの二人。本当に、特別な何かを持っているってことよ」


「それを見定めるために、あえてあの旋毛の森に挑ませるのでしょう?」


「ふふ、どうかしら。……実際、あの宝玉は手に入れたかった品物だしね。持ち帰ってきたらおつりもしっかり渡してあげるわよ」


「……尚更、ユウさんとヨアさんには頑張っていただかないと、ですね」


 ライズマーケットシティに、夕闇が訪れる。


 出発は、明日の朝。

 遠くに見える山々に日が沈んでいく様子をヴィネットとジュリエッタは月楼閣から見つめていた。


――







《次回予告》


 ヴァレクト・システムからの逃亡。そしてノルムの村の警護のためにヴィネットから出された条件。

 それは【旋毛の森】に住まう三匹のモンスターが持つ【宝玉】を奪取し、朧月商会に献上することであった。


 広大な旋毛の森を舞台に、ユウとヨア、二人はフレームシステムの力を持って敵に挑む。

 だが、制限時間は12時間。更に、モンスターが仕掛ける罠に翻弄される二人。


 二人の瞳は、魔物と宝玉の正体を見抜くことが出来るのか。



 次回 悠久創世譚エデンコード 第六話【三羽烏】




 ――世界がまた、創造されていく。


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