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――



「……あーあ」


 どこまでも続く、虚無の空間。

 そこに存在しているのは一つの大型モニターと、革張りの椅子。そしてその椅子の背もたれに寄りかかり溜息をつく、ボサボサの白銀の髪の青年が一人。


 モニターの灯りだけが暗闇の中での唯一の光で、その周囲以外は漆黒の闇がどこまでも広がっていた。


「やっぱりダメだったかぁ。……ま、しょうがないよねぇ」


 青年はもう一度、鼻から息を吐いて肩を落とすと、薄暗い空間の天を仰ぐ。


「失礼します」


 その薄暗い空間から、まるで滲み出るように、別の声の主が現れる。


 青年と同じく、白銀の髪。

 こちらは整ったショートヘアの女性。白く美しい肌とスーツを身に纏ったその女性の顔の声と表情に、感情は宿っていなかった。

 瑠璃色の瞳を椅子に座った青年に向け、一歩近づく。


「被験者4名の死亡を確認いたしました。これで今回のプログラムに参加したプレイヤーは全員死亡、ということになります」


「言われなくても分かってるよ。見てたから」


 女性の方へ青年は顔を向けるでもなく、モニターをぼんやりと眺めながら呟くように言う。

 その言葉を聞いて女性は小さく頭を下げた。


「では、如何致しましょうか。早速、次のプレイヤーを募集するという形で手配出来ますが」


「……ま、そうするしかないか。適当にやっといて。今度はあんまり負荷をかけすぎない方向でね。代わりはいくらでもいるけど、ゲームとしても進行が大事だからさ」


「承知しました」


 気の抜けた青年の声に女性は明瞭な滑舌で答え、一礼をして後ろに一歩下がる。


 女性の姿は、いつの間にか薄暗い空間のどこかに消えていた。

 しかし青年はそれを気にするでもなく、顎に手を当てて考え込む。その漆黒のような黒目がモニターを見据えていた。


「……ま、時間はいくらでもあるか。のんびりやっていこう、うんうん」


 自分に言い聞かせるように呟き、青年は口元を歪ませる。


「さーて、それじゃあ、次のプレイヤーが現れるまで……ちょっと休憩しておこうかな。長い旅になりそうだし、温存温存」


 椅子から立ち上がった青年は楽しそうに瞳を閉じると、両腕を上げて背伸びをする。

 つま先立ちになった後に踵を下ろし、モニターに背を向けて暗闇の方向へと歩き出した。


 その顔は、先ほどまでの楽しそうな表情から変化していき……邪悪な笑みへと、変じていた。



「長い付き合いになりそうだね。……【エデンコード】」


 

 そして青年も、先ほどの白銀の髪の女性と同じく、暗闇の中へと消えていった。



――




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