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私達、婚約破棄しましょう  作者: 若狭巴


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国王 2


「金雀枝?なんだそれは?」


国王は初めて聞く単語に顔を顰め、近くにいる待従に問うた。


待従も初めて聞く単語に困惑しながら「申し訳ありません。存じあげません」と言うしかなかった。


国王は使えない奴と蔑む目で待従を見下ろした後、視線を伯爵に戻した。


「つまり、その金雀枝さえ集めれば前の効能に戻るのか」


国王は額を抑えながら尋ねる。


「はい。左様でございます」


(集めるつもりか。いや、大丈夫だ)


伯爵は国王の口調が自ら集めるつもりかと焦るが、あの花は南の一部の地方にしか咲いていないと報告を受けた。


だから金雀枝というよくわからない花を選んだのだ。


一つの嘘をつけば、その嘘を本当にするためにさらに嘘をつかなくてはならなくなる。


伯爵は後何回嘘をつき続ければ、この嘘が本当になるのかと思った。


「わかった。金雀枝という花を国王の権限で集めてやろう。それさえあれば薬の効能は元に戻るのだろう」


伯爵は例え国王の力でも燃えた花を蘇らせるのは無理だと自分に何度も言い聞かせたが、嫌な汗が止まらない。


指先が冷たくなり、手の感触がない。


喉が渇き、声をうまく発せない。


伯爵は今自分がいる場所が謁見の間ではなく、今にも崩れそうな片足だけの広さの小さく細い崖の上に立たせれている気分だった。


「其方の輝かしい功績は知っている。それに嘘偽りはないだろう」


まるで全てを見透かしているような目を国王は伯爵に向けた。


伯爵の態度から国王は何かを隠していると感じた。


だが、それが何かまではわからなかった。


伯爵が薬を作りものでなければ拷問でもして吐かせたが、最高の薬屋である以上、国王も下手に傷つけることができなかった。


そのため、脅すという選択をした。


結果、伯爵はその脅しに怯えたため、元の薬に戻るよう全力を尽くすはずだ、と国王は思い、この件は一旦保留という形にした。


そんな時、ルーデンドルフ公爵が到着した知らせを扉の前で待機していた騎士が知らせた。


「ルーデンドルフ公爵がご到着されました」


国王は騎士の言葉を聞くと、顔を歪めたあと手を数回振った。


侍従はそれを「入れろ」という合図だと察し、扉の前で控えていた騎士に向かって頷き、開けるよう指示した。


扉が開くとルーデンドルフ公爵が入ってきた。


国王が呼び出したのは公爵ではなく、その息子のイフェイオンだったが、どういうわけか父親が現れた。


国王は自分がルーデンドルフ家から軽視されていると捉え、この状況を愉快だと言わんばかりに顔を歪め、これでもかというくらい口角をあげた。


「久しいな。公爵」


「お久しぶりです。殿下。お元気そうでなによりです」


自分の態度など気にしていないと言った態度を取る公爵に国王は奥歯を噛み締める。


国王は昔から公爵の目が大嫌いだった。


公爵はいつも亡くなった兄にばかり構っていた。


兄が王太子だったからという理由だからだろうが、自分には見向きもしない、敬意を払わない男が許せなかった。


まるで、お前は王族ではないと言われている気がした。


先代国王の右腕であり、王族の次に高貴な血を流している公爵には、自分が愚かで卑しい人間に見えているのだろう、と、ずっと感じていた。


だから、今の国王を軽視する行動をとった公爵を責める絶好の機会だった。


「ああ。見ての通り元気だ。それより、公爵がなんの用でここにきたのだ?呼んだのは其方の息子のはずなのだが?」


国王は公爵が何と答えるか楽しみで仕方なかった。


その答え次第で、公爵への処罰を決めようと思っていた。


「はい。存じ上げております」


あっさりと認めたことに国王は拍子抜けしたが、すぐに公爵はそういう人間だったと思い出した。


つまらない、と、思うも自ら己の罪を認めてくれたので処罰を重くしても文句は言えないはずだ、と思い、国王は声を出して笑いたいほど喜んだ。


「そうか。それなのに来たのか?其方は王族を馬鹿にしているのか?いや、其方の息子もだ。どうなのだ?」


「決してそのようなことはありません」


表情を変えることなく淡々と公爵はが答える。


そんな公爵の態度に国王は苛立ちながら叫んだ。


「では、なぜイフェイオンではなく其方が来たのだ!」


国王は強く握りしめた拳を肘掛けの部分に振り下ろす。


ドンッ!と大きな音が謁見の間に響く。


「イフェイオンは今国外におります。そのことを報告し、お詫びするために私が来ました」


申し訳ありません、と頭を下げる公爵に優越感を覚えるどころか、国王は自分がとんだ勘違いをしていたと知り一気に顔に熱が集まった。


さっきまでは自分を軽視した公爵家を批判しても問題なかったのに、公爵の言葉を聞いた後では、わざわざ手紙で言えることを直接言いにきた王族に敬意を払った人間を貶めただけになってしまった。


国王は今この謁見の間にいる者たちに自分がどう思われているかより、公爵が自分に失望した目を向けているのではと公爵一人の視線を気にした。


だが、公爵は頭を下げたままでどんな表情をしているのか確認することはできなかった。


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