300年後 13
「レイシー」
「うん」
「教えてくれてありがとう」
青年は吹っ切れたようにお礼を言った。
といっても、まだ本当の自分を曝け出すのは怖い。
それでも、いつかは曝け出したいと前向きに思えるくらいには、ほんの少しだが自分を受け入れることができた。
「どういたしまして」
レイシーはやれやれといった感じに笑った。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、レイシーは手を差し出した。
「どこに?」
「どこにって、どっか」
変なやつだな、と笑うレイシーに青年は俺がおかしいのか、と思いながら手を重ねた。
重ねた手を握り返されて、ようやく青年は自分が無意識に大胆な行動をしていたことに気づいた。
早く返事をしなければと思うのに、口を閉じていなければ心臓が勢い余って飛び出してしまうほど早く動き、言葉を発することができなくなった。
「どこに行きたい」
わざとか思うほど顔を近づけてレイシーが聞いてくる。
透き通るほど綺麗な目に見つめられ、青年の心臓はさらに速くなった。
「どこでもいい」
照れ臭さから青年はぶっきらぼうに言ってしまい、言ってから後悔した。
そんな言い方をしたら早く帰りたいと誤解され、解散することになる、と。
慌てて何か言おうとするも、いい言葉が思いつかず黙り込んでしまう。
だが青年の心配をよそに、言われた本人は全く気にしていなかった。
「じゃあ、町に行こっか」
「町?」
「うん。屋台でなんか食べよう」
お腹空いた、と笑うレイシーに青年も、確かにお腹が空いてきたな、と感じた。
学校や社交界で話す連中とは町の屋台で食べることはしたことがなかった。
レイシーといるようになって屋台の食事が美味しいということを知った。
青年は嫌な顔せず、むしろ嬉しそうに笑いながら「ああ、そうしよう」と同意した。
《完》




