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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第662話 ダンジョンアタック 神の来訪と時を操る力

 ふと目が覚めて、時計を見る。時間は朝の二時を指している。はて何故目覚めたのかと思う。トイレに行きたい訳でもない。そう思っていると、眼前の空間がパキリパキリと割れ砕け始めて、手がにゅっと出てくる。服装はタキシードに着替えている。


「おはようございます」


 ベィリオーズの声が響く。


「おはようございます、ベィリオーズ様。何故、寝起きどっきりな口調なのでしょうか?」


「いえ、様式美なのかと思いました。お会い出来て光栄です。他の皆はプロパティを少し弄って、深い睡眠状態ですので、ゆっくりお話が出来ます」


 そう言うと、テーブルセットを取り出し、コーヒーと簡単な茶菓子が眼前に出現する。眠気も飛んでしまったので、椅子に座りカップを傾ける。


「はぁ……。久々のコーヒーです。カフェイン中毒だった頃は手段として飲んでいましたが。香りを楽しめる余裕が戻ったのでしょうね」


「楽しんでもらえればなによりです。さて、質問を伺いましょう」


 ニコニコとテーブルの上で、手を組んだベィリオーズに向かって口を開く。


「ダンジョンの意図ですが、隠されていますね。隠されているというより、足りないという感じですが……」


「そうですね。興味を持った人がいるならまたの機会にでもと思いましたが。あなたには先にお伝えしておきます。実際はダンジョンに関しては経済効果、神の試練に関しては信仰の拡充ですね」


「比較的容易な手段で手に入る寿命を延ばすアーティファクトを広めて、ダンジョンへ足を向けさせるというのは理解出来ます。あちらはダンジョンそのものに住む魔物や盗賊などから金を生む事も出来ますから。信仰の拡充というのは?」


 そう聞くと、ニコニコがより深くなる。


「神術が『祈祷』への前段階であり、『祈祷』を上げる事で神の試練に挑戦出来るというのは想定されている通りです。大体練達する程度まで上げれば神の試練の扉は開けられます。そこまで上げるのには大体四十から五十にはなっている計算です。その頃には弟子や仲間なども増えているでしょう。そう言う人と一緒に試練をクリアする事により、若返ってもらうのが目的ですね。若返ってもらえれば、そこまで『祈祷』を上げた人が、また長い時間をかけて信仰を広めてくれます。ただ、そうなると周囲の人間に益が無いので、私が祝福を与える形になっています」


「実際に祝福の意味と言うのは?」


 カップを傾けながら聞く。


「スキルの習熟度の上昇に補正がかかります。これに関しては、累積しますので、他の試練や周回してもらえれば、より効果は上がります」


 ふむ……。大体予想通りか。神の試練をクリアしてスキルの習熟度を上げながら、他の神の試練をクリアする。そして、アーティファクトで武装を強化して、より高位の神の試練に臨むと。ハックアンドスラッシュ系のRPGっぽいな。絶対にゲーム感覚だろ、これ。


「それに神の試練を各地に分けているのは……。信仰をより拡散させるためですか?」


「はい。ご名答です。一カ所に定住されるのは本意ではありません。ただ、流浪させるというのも本意ではないので、そこはバランスを考えています」


 そりゃ、延々神の試練だけに挑み続ける人生なんて虚しい。


「アーティファクトを売ること自体は問題無いのですか?」


「それは問題無いです。それも経済効果になりますし、大きな金を手に入れて、次の神の試練へ向かう原資に使う方も多いです」


 思った以上にこのハックアンドスラッシュにはまっている人は多そうだな。


「若返りの不調というのは、生理学的な物ですか?」


「えぇ、その通りです。細胞の新陳代謝に合わせて、テロメアの調整などを行いますが、周囲の組織と周期がずれている場合、調整が必要になったりします。また、ホルモンバランスが崩れたりもありますので、ディシアがかなり手を取られる要因ですね」


「なるほど……。ちなみに記憶周りはどうなるのですか?」


「ニューロンもどこかのタイミングで置換します。記憶に関しては、一旦眠っている時の再構成等のタイミングを狙って、バックアップして上書きですね」


 はぁ、また、便利な事だ……。そんな感じで話をしていると、コーヒーと菓子も無くなる。


「では、聞きたい事はもうありませんか?」


「予想していた内容に関しては、以上ですね」


「そうですか。ならば、そもそもの目的を果たしますね」


 そう言いながら、ベィリオーズが私の額に手を当てる。


<スキル『獲得』より告。スキル『獲得』の条件が履行されました。『属性制御(時)』1.00。該当スキルを統合しました。>


「時を操る魔術です。まぁ、操ると言っていますが、加速のみです。減速や止める事は不可能です。エントロピーが拡散するのは不可逆ですので」


 また……これは大仰なスキルだ……。


「ディアニーヌ辺りから神域の話は聞いていると思います。長年の信仰に報いるため、作物の成長速度を上げて、食べるのに困らないようにするのが主目的です」


 ベィリオーズがにこやかに述べる。ただ、そこで表情を変える。


「ただ、あなたの場合は少し事情が変わる。ヘイストでしたか? そう言う使い方は出来ます。数秒であれば寿命に大きな差異は生まれないでしょう。また、ダンジョンに潜って若返りのアーティファクトを使えば誤差の範疇ですし。それに、渡したスキルは熟練レベルです。そこまでいけば大樽一杯を一年程度加速させることが出来ます。その意味は分かりますよね?」


 悪戯っぽい表情でウィンクをするベィリオーズ。あぁ、発酵を促進しろと言うのか……。醤油を作るのも、お酒を貯蔵するのも早まるな……。醤油は混ぜながらなら大丈夫か。作物も、肥料を適時与えながらなら、何とか問題無いだろう。


「『リザティア』に来られた際には、もう少し他の種類の日本料理をお出し出来るようにしておきます。あぁ、そういえば、鰹節菌はこの世界に存在しますか?」


「存在しますよ。カワキコウジカビですね。私とパニアシモの権能の一部なので、お渡し出来ます。必要になったらお教え下さい」


 がぁぁ……。こんなに楽だったとは……。味噌の麹も同じように頼めばよかった……。清酒の際にはまた頼もう。


「この辺りの微生物はまだまだ繁殖する機会が無いので、喜ぶと思います。では他には問題はありませんか?」


「はい。大丈夫です」


「そうですか。では、またの機会に。他の皆もあなたの事は見守っています。どうか心安くお過ごし下さい」


 そう言うと、また空間を砕いて戻っていった。はぁぁ、時魔術か……。とんでもない物をもらったなと思いながら、改めて毛布に包まった。

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