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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?

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第656話 ダンジョンアタック 鬼討伐

 また十分程、注意しながら進むと、唐突な気配の発生。


「これは……。オークのようですね。数は八体と思われます」


「流れとしては先程のゴブリンと一緒かな。強力な魔術を使ってくる可能性はあるから、注意は怠らず。フィアは様子を見てから、飛び出して欲しい。チャットは後ろで動かない相手がいたら、風魔術で吹き飛ばしてしまって集中を乱すか、土魔術で顔面を狙って。殺す気で大丈夫。リズとドルとリナは壁をよろしく。ロットは前方、ティアナは後方の確認。ロッサはチャットの相手が怯んでいるなら、撃ってしまって構わない、とにかく魔術を使うやつを処理出来れば、怪我の可能性は無くなるから。チャットと相談しながら攻撃して。私はリズ達と前に出る。基本方針は以上」


 そう告げると、皆の頷きが返るので、そのまま陣形を組み直し、じりじりと進む。相手が淡く見えてきたと思ったら、粗末な革鎧に石槍姿のオークが見える。この前攻めてきたオークの装備から考えると大分貧弱だ。革鎧の覆う部分も最低限だし、重装もいない。鉄槍すらいない。なんだかなぁと思考の隅で思いながら、前に進む。相手もこちらに気付いたのか、ばらばらと動き始めるが、陣形らしいというより、なんとなくまとまっているだけに見える……。


「じゃあ、リズ、ドル、リナ出て!!」


 指示を出すと三人が速足気味に、すり足でさぁっと前に出る。その後ろにピタリと私とフィアが張り付く。チャットとロッサは斜め後方でやや距離を置きながら俯瞰しているし、ロットは私達の後ろ、ティアナは大きく後方でゴブリンが来た方から何か来ないか監視している。

 近付いてくる三人の圧力に負けたかのようにオーク五人が飛び出してくる。


「チャット、こちらからみて右、ロッサは真ん中、左は私が落とす。やって!!」


 司令塔か魔術士かは分からないが、先手必勝で風魔術を圧縮した飛礫(つぶて)を最速で打ち出す。狙い過たず、左後方のオークの顔が爆散した瞬間、真ん中のオークの胸にボウガンの矢が生えたと思ったら、後方に大きくもんどりうって倒れる。残りの一匹も、下側からの強風に煽られ体勢が崩れたと思ったら、顔面の真ん中に拳大の大きさの石を食らってそのまま後方に倒れる。魔力精製の気配を感じない限りは止めは後で良いか。そう思った刹那、前衛の三人がやや広めの二等辺三角形を描きながら盾と一緒にぶちかます。向こう側の槍をものともせずドンと音を感じそうな勢いで体勢低く当たり、相手の三人を宙に浮かせる。それを見た私とフィアは残りの二人が怯みながらもなんとか壁を迂回しようとするのをそれぞれ、槍と剣で刺し貫く。

 フィアはそのままさぁっと走っていって、チャットの相手の止めも刺しに行く。横を見ると、前衛三人の鈍器でぐちゅりと頭が陥没したオークが三匹、既に転がっており、正面に顔を戻すと疾風と言わんばかりのフィアがそのまま颶風(ぐふう)となって首元を掻き切る。残心して前方で身を翻すのを見て、私は手を振り終了の合図を送る。今回も同じく、オーク達は絶命したと思った瞬間、ふわりと消えてしまった。


「皆、動きの方良かったよ。連携として問題無い。フィアはそのまま止め、ありがとう。一旦休憩して、ここの相手がまた湧かないかの確認と、先程のゴブリンの場所まで戻って確認かな。それで何も出なければ、今後は最低限の休憩で前に進もう」


 そう告げて、私はお茶の準備を始める。皆は毛布に潜り込んで体を休めているし、ロット、ティアナ、ロッサは相談して交代で警戒に当たってくれている。

 しかし、試練説の可能性はかなり上がってきた。先程のゴブリンはあまりにスキル構成がお粗末だったけど、先程止めを刺した前衛のオークは槍以外に片手剣のスキルも持っていた。それが『獲得』先生で取得出来ないのはおかしい。『片手剣術』は0.01なので、絶対に少しでも統合されたはずだ。

 ふわりとハーブの香りが辺りに漂い、カップを受け取って次々に注いでいく。私は小部屋を出て隠れる場所に砂の小山と衝立を土魔術で作る。そろそろ尿意、便意を催す時期だろう。それを告げると、女性陣が話し合って順番に壁の先に隠れていった。この調子で休んでいたら、過剰帰還は無いだろう。


「次の部屋が終わったら、夕ご飯かな」


 時間的には十五時を少し回ったくらい。次の部屋が終われば十七時頃だろう。休みつつ、リポップの確認を行う事にする。


「チャット、罠の気配は?」


「感じません」


「他のダンジョンもこんな感じなのかな?」


「いえ。敵は住処代わりに潜り込んだ魔物が大半ですし、入り口の近い場所から罠にかかって朽ちているのが大半です。そこを抜ければ、罠の解除が主な対応です。こないに奇妙なダンジョンは初めてです」


 ふぅむ……。やっぱり特殊なのか。正直、何かのゲームと言われた方がしっくりきそうな感じだ。絶対に神様がダンジョン系のゲームの知識を中途半端に流用して作っていると思う。勝手に回る床とか、凶悪な湧きがないだけましなのだが、しっくりこない。

 そんな感じで、一時間ほどが過ぎたので、片付けをして、また前進する。同じような距離を歩くと、また何かの気配。しかし、これは……。


「大きな気配を……三体ほど感じますが……。初めての相手ですね」


 かなり大型の何かとしか分からない。取り合えず、陣形は同じで、基本チャットが風で崩した後に前衛が当たって中衛と後衛が止めと言う事で作戦会議を終えて、移動する。その先には、三十センチほどの角が生えた身長が二メートルを超える巨体。手には木を削りだしたような武骨なこん棒が握られている。


「オーガ……でしょうか」


 ロットが呟く。


「だとおもう。こん棒に関して、重装は抜けないけど、衝撃は入ってくるはず。ちょっときついけど頑張って」


 そう告げて、前進の指示を出す。三人が先程と同じようにすり足で徐々に加速して、向こうがこちらに気付いて威嚇の声を上げる頃には速度が乗った三人がぶちかましを仕掛ける。オークに関しては、吹っ飛んだが、オーガは押し殺したような声を上げると、下がった上体を起こし直す。


「取り押さえるので、精いっぱいだぞ!!」


 ドルの叫びが聞こえる。こんなのを平地で相手にする羽目にならなくて良かった。そう思いながら、フィアに指示を出す。


「首が高いから攻撃が難しいだろう。膝の裏を狙って、足を殺して。ロッサはまず一体……」


 そう叫んだ瞬間、真ん中のオーガの胸にズドっと言う音と共に矢が生える。やや後方に傾いだ後に信じられないという顔をしながら、後ろに倒れるオーガ。残りの一匹にリズとリナが、もう一匹にドルが張り付く。やや下がると、こん棒を振り回し始めるが、とんでもない重さの鈍い音が盾の方から聞こえてくる。


「フィア、ドルの方任せる!!」


 そう叫んで、私は台風を彷彿とさせるこん棒の嵐の下を身を屈めて、後方に回り込む。膝の裏を執拗に槍で刺し貫こうとホバーの勢いを合わせて、どずりと突く。上半身、下半身関係なく分厚いタイヤみたいな肉が刃物を通すのを防ぐので、関節部を狙うので精いっぱいだ。前の方では、リズとリナが協力してこん棒をなんとか盾で抑え込もうとしているが、降り抜いた勢いそのままで、返しては薙ぎの繰り返しで、苦労している。ずぶり、ずぶりと数度チャージをかけると、痛みに気付いたのかオーガがこちらに振り向く。


「今だ!!」


 叫んだ瞬間、リズが抱え込むようにこん棒に抱き着く。それをリナが引きずりおろすとオーガがこん棒ごと地面に這いつくばる。それを狙って、ふわりとホバーで浮き上がって、落下とホバーの勢いで、床よ貫けとばかりの勢いで突き立てる。苦鳴がオーガから漏れたと思うと、横でも激しい悲鳴が聞こえる。


「リズ、リナ、頭潰して!!」


 指示を出して、横を見ると、フィアがオーガの両膝裏を断ち切って、跪かせている。それをドルが押さえつけて、メイスでぐしゃりと頭を潰す。こちらはもがき、生きている片方の足で体勢を立て直そうとするのをリズとリナに任せて、もう一度、宙に翻り、急降下で残った膝をぐしゃりと縫いとめる。痛みで怯んだのか上体を逸らし、悲鳴の形に口を開いた瞬間にリズの一撃が、そしてリナの一撃が入り、頭がぼこりと陥没しゆっくりと倒れる。ふわりと消えた瞬間、ほぉっと長い息を吐く。


「こんなのを敵に回したくないね。少なくとも少人数だと嫌だ」


 そう呟きながら、立ち上がる。槍の穂先は貫いた際に床を食ってしまって、先の方が醜く曲がっていた。ドルに差し出すと、首を振られる。はぁ、予備のもう一本、持ってきてて良かった。皆が集まり、ほっとした空気が流れる中、部屋の中央で徐々に光が集まり始める。

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