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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第620話 学校教育だけでは研究者側の意欲を満たせないかなと思います

新シリーズを連載始めました。

二度目の地球で街づくり~開拓者はお爺ちゃん~

http://ncode.syosetu.com/n7006ds/

こちらもよろしくお願い致します。

 領主館を出て、中央大通りを通って、商工会議所へ向かう。受付で声をかけると、丁度フェンが遅めの食事から戻ったところだったらしい。会議も午前中で終わったらしい。侍女に案内されて、所長室へと入る。


「あぁ、領主様、ご無沙汰しております。王都はいかがでした?」


「ご無沙汰しています、フェン。お土産で作物は持って帰ってきましたが、商売の業態と加工品にはそこまで食指が伸びなかったですね」


 そう告げると、苦笑が生まれる。


「そうでしょうね。今となっては『リザティア』の方が大分先を行っていますから。先程までも商工会の皆と食事がてら打ち合わせをしていましたが、中々、釣り合いのとれた商売をやっていくのは難しいなという話で持ち切りでした。贅沢な話ですが」


「商家の方が楽を出来るなら本望ですね。さて、前から話をしていた、文章を印刷する機械ですが、ネスが完成させました」


 その言葉にフェンが表情を輝かせる。


「そうですか。話を聞いていた時は半信半疑でしたが、焼き印を並べて紙に写す機械みたいな物と仰っていましたね。と言う事は面倒くさい書類周りはそれで量産出来ると……」


「目途が付いた……と言うべきでしょうか」


「ふむ、そう仰ると言う事は何か問題でも?」


「機械の方は早めに出来ると踏んでいましたが、インクの方がまだまだです。油絵用の絵の具を使って、試験を行いました。印刷そのものは可能ですが、油分が紙に染み出すのと乾燥に時間がかかる問題があります」


「なるほど。材料の方に問題があると」


「そうです。で、このインクなのですが、これ以上研究に私が関わるのはどうかなと考えます。後は発色が良く、適度に粘度があって、乾燥の早い材料を探すだけとなります。それを探すには地道な研究が必要ですが、私がそれをやるのはあまりに損なので」


 そう言うと、フェンが表情を曇らせる。


「そうですね。領主様、子爵様のなさるお仕事では無いでしょう。それを職人の方で行えと?」


「いえ。職人さんは職人さんでやるべき事も多いですし、まだまだ急ぎの案件もあります。出来れば、学校を作ったら、その研究機関の方で研究をしてもらいたいなと。向こうは儲けが出るのが目的ではなく、解き明かすのが目的ですし。研究者の方も研究を持ってくるでしょうし」


「それは……確かにそうですね」


「故郷の方で産学官連携という業態があったのですが、政務が優先的に予算を提示して、研究機関に商業に関わる研究をお願いし、成果が上がった場合は改めて別の題材と予算を渡すという流れで研究をしてもらっていました」


「ふむ……それだと、あまり動機づけにならない気がしますが……」


「予算の拡張に紐づけます。実績を上げれば、より自分のやりたい研究に予算がついて大規模に行える。商業の方は商売のタネがそこから生まれるという流れですね」


「ふむ。それならば、欲も存在しますし、話としては納得出来ます」


 こくりと、フェンが頷く。


「その辺りを研究職と調整出来るかを商工会の方で揉んでもらいたいなと。まだ、学校の設立までは少し時間はありますが、研究職の方は集まっています。学校教育とは別に研究室を設けて、そこで研究をしてもらえればなと」


「敷地は大きめに取っていますし、それは可能でしょう。分かりました。今回のインクに関わらずという話なのですよね?」


「はい。商売に関わる基礎研究をそこでやっていってもらえればと思っています」


「分かりました。調整の方を進めます。もしよろしければ、エリュチャットさんにもお手伝いをお願いしたいのですが……。現在、研究者の方を取りまとめているのは彼女です」


 あぁ、チャットがずっと研究者の調整をしてくれていたな……。


「分かりました。その旨は伝えておきます。また、引き続きお願いします」


「畏まりました。ネスさんのところには顔を出しておきます」


「はい。実物を見てもらえれば、納得してもらえると思います」


 フェンに笑顔で返して、王都でのやり取りや、ダブティアとの商売の状況など軽く話をして、辞去した。外に出ると、空はやや陰りを見せ始めていた。保育所でタロとヒメの様子を見ていたらすぐにお迎えの時間かな。そんな事を考えながら、工場に向かった。


 工場に着くと、朗らかな歓声が響いている。保育所の方を覗くと、昨日と同じく子供達がタロとヒメに飽きずにじゃれ合っている。今日はお馬さんごっこではなく、追いかけっこみたいになっているが、狼の本領を発揮して、巧みに駆け回っている。スピード感のある動きに、赤ちゃん達も瞬きを忘れてじっと見つめている。


「子供達の運動になりそうだね」


 管理の人と赤ちゃんの事を相談していたリズに声をかける。


「あ、ヒロ。おかえり。うん、もうずっと追いかけっこしているよ。あの辺りの子は途中で疲れて寝ちゃったの」


 リズが指さすと、片隅でお腹に布をかけられた子供がすやすやと電池が切れたように眠っている。


「ネスが大仕事を終わらせてくれたから、夜は一緒に祝賀会でもしようかという話になっているんだけど、良いかな?」


「わ、面白そう。初めて……だよね? 皆と飲みに行く機会もあまりなかったし、参加したい!!」


「ん。じゃあ、どうしようかな。あまりぎりぎりまでここで遊んでいると遅くなりそうだから、少し早めにタロとヒメを連れて帰って、用意だけ済ませちゃおうか。お風呂に入れてあげないとベタベタだろうし」


「ん、大丈夫だと思う。子供達ももう少ししたら力尽きて寝ちゃうと思うから。赤ちゃん達もずっと真剣に見てて、疲れていると思うよ、あ、ほら。欠伸した」


 リズが指さす先を見てみると、ふわっと小さな欠伸をする赤ちゃん。横を見ると、微かに揺れて舟を漕ぎ始めている。


「本当だ。じゃあ、もう少しだけ眺めていようか」


 そっとリズの肩を抱き、ほんわかと和やかな、子供と狼の夢のような遊びを飽きる事なく二人で眺めている事にした。

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