第619話 歓楽街のお店の流行と諜報の方向性
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二度目の地球で街づくり~開拓者はお爺ちゃん~
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一旦てくてくと領主館に歩いて戻る。流石に町中でホバーを日常的に使うのは憚られる。馬車で移動しても良かったかなと、また工場まで戻る事を思うと少し考えるが、この思考が余分な脂肪の元なのだろうと諦めて、てくてくする。公園を抜け、館に入り執務室に向かう。
「あれ? 工場から工房に顔を出すと仰っていませんでしたか?」
扉を開けると、カビアが顔を上げて、聞いてくる。
「顔を出したけど、前に言っていた活版印刷の機材の方が完成してた。で、出来れば本日、歓楽街の良さそうなお店で祝賀会でも上げようかなと思うんだけど」
「ネスさん達ですよね? お弟子さんと……」
「今回は事が大きいから、家族の方も呼んであげたいかな。本人達は気付いていないけど、将来的に大きな話だし。きちんと偉大な事をしたというのは告げてあげたい」
「そうですか。ご家族が喜ぶと良いですね。と言う事は、五十人程度は集まるんですか……。そこまでだと貸し切りになると思いますが。それとも温泉宿のホールを使いますか?」
「んー。そこまで大袈裟にしたくないかな。ネスはさておき、お弟子さんやご家族が委縮すると思う」
「そうですね……。では、『カラージュの花びら亭』が良いですね。炉端焼と言う業態でしたか? 新しい料理が楽しめますし」
「でも、あそこ、給仕のお姉さん、結構際どいよね……。家族連れだと、ちょっと辛い気がする……。奥さんとか、子供の教育に悪そう」
「領民には拘りますね……。ならば、『月と貝がら亭』はどうですか」
ぽふっと手にグーを当てて、カビアが聞いてくる。
「いや、記憶に無いかな……。新しい店かな?」
「はい。温泉宿で修業したアレクトリアさんのお弟子さんが独立したお店です。海産物も扱っていますし、水魔術士の良い人が入ったらしいので、冷たいワインが楽しめますよ」
「はぁ、もう独立する人なんて出たんだ……。あぁ、思い出した、開業届を受理したな……。アレクトリア絡みだったんだ」
ばたばたして中々構えないが、偶に領主館まで来ては、新しい素材を見つけて、料理人を問い質しているという話は聞いた。
「温泉宿の厨房も二層化しているようですね。創作を続けたい人間は残るし、ある程度方針を掴んだ段階で出ていく人間は出ていくという流れみたいです」
「美味しい物はどんどん広がって欲しいから囲い込む気は無いけど、本当にアレクトリアって自分の料理にしか興味がないね……」
「技術の継承は、子爵様が伝えている通り行っているようですが、引き留めは特にしていないようですね。ただ、新しい料理を延々開発する領地なので、最新の料理に敏感な料理人は去らないようではあります」
料理に関しては、あまり『リザティア』で専有化するつもりはない。場所によって味の好みは変わるし、流れ流れて、その地の材料などを使ってより美味しくなった状態で逆輸入出来るようになった方が良い。
「機を見るに敏な人が独立するんだったら良いと思うよ。競合しないだろうし、目新しいお店が増えれば活性化するだろうしね。その内、老舗になって、その道を追求してくれるなら良いかな」
棚の開業届のフォルダを取り出して、パラパラとめくっていく。ふむ、干物が温泉宿で扱われた後に独立したお店か。んー、二階建てで七十人収容か。一階は厨房とカウンターだけだし、二階を貸し切れば良いか。
「分かった。じゃあ、二階の貸し切りの手配をお願いしても良いかな?」
「支払いはどうされます?」
「今回は私のお金で支払うよ。あと、諜報の見回りを工房周辺にも回して欲しいのだけど」
広める気は無いけど、物がある以上、警備は強化したい。
「はい。今でも定期巡回は兵の方で行っておりますが?」
「今回の件はノーウェ様経由でロスティー様から広めてもらおうと思っている。ただ、そろそろ嗅ぎつけてくる人間もいそうな気がしてきたから、念には念を入れたいかな……」
「では、歓楽街の諜報を厚めにして、斥候から警護人員を出すようにしましょうか?」
「どちらにせよ、部外者と接触するなら歓楽街になるか……。んー、その方が良いのかな」
「そうですね。工房関係問わず、情報は錯綜していますから。取捨選択する材料を増やすためにも諜報は増やした方が良いかと考えます」
この件だけでなく、情報が絡む話はどんどん増えているから、諜報要員は増やすと。工房の方は斥候絡みの人間を警護に当てて、不審者の侵入を防ぐと。
「分かった、その方針でお願い。まだ、兵員系の予算の余裕ってあるかな?」
「名目をどうするかですね。新兵の予算は予想以上に消化していますが、諜報関係はまだまだ余裕があります。ノーウェ様が肩代わりして下さっているのもありますが……」
あぁ、一年目だからか……。んー、こっちに負担を回してもらうかな……。でも、断られそうだな。
「ノーウェ様に増員をお願いしようか。そのついでに現人員の給与もこちらで持つようにしよう。このままだと予算が消化しきれない気がする」
「そうですね。今後の人員増と言っても、まだ拡大政策までは至らないので、一気に膨らむ事も無いでしょう。歓楽街に隔離されているので、旅費もかからないですし」
諜報を他領に潜り込ませるほどの必要性を現在は感じない。ただ、王都の動向だけは知りたいかな。この辺りは自分でも潜り込ませて、ノーウェ、ロスティーの情報と答え合わせをする感じで育てていった方が良いかな。レイとも相談だな。
「拡大と言う訳では無いけど、王都に諜報網を敷きたい。その予算計画も立案して欲しい」
「畏まりました。では、取り急ぎはお店の予約と、諜報の強化、工房の警護の強化でよろしいですか?」
「頼むね」
「早速、動きます」
カビアがそう告げると、処理していた書類を棚に戻し、執務室を出ていく。執事と調整かな。まだ、昼下がり。夕ご飯の時間には少し早いので、工場に行く前にフェンの所に寄って、今後の書類周りの相談でもしようかなと、商工会議所に向かう事にした。
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