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手作業しか能がないと追放された極紡技師、私の技術を捨てた結果、王国の大結界が崩壊しました。 ~今さら助けてくれと土下座されても、三千億の責任は取りません~

手作業しかできないと追放された唯一の極紡技師ルネ。

彼女の警告を無視して欠陥品の結界布を量産した公社は、国家防衛の要である大結界を崩壊させてしまう。

すべてを失った元上司たちが泣いてすがってきても、もう遅い。

職人の誇りを胸に、ルネは自分の技術で王国を立て直す。


 王都の外れに、黒い煙を吐き続ける『王立魔導紡績公社』がある。その第一工房に、ロベルトの怒鳴り声が響いた。


「今日でお前はクビだ。手作業しか能のない職人など、もう要らん。新しく入った『天帝型』があれば十分だ」


 公社の最高責任者で、次期技術省局長と噂される男だ。太った体を絹の官服に押し込み、唾を飛ばしながら私を指さしている。背後には、真鍮と魔導水晶でできた十メートルもの自動紡績機が据えられていた。低く唸りながら、白い糸を休みなく吐き出している。


 私は使い込んだ木の紡ぎ車を抱えたまま、黙ってロベルトを見た。


 ルネ・ヴァルハイト。北の魔獣から王国を守る「絶対防壁(エーテル・ヴェール)」の素材になる魔力糸を、手で紡げる唯一の「極紡技師」だ。


「事業部長、天帝型の出力設定は危険です。魔導石の純度にはばらつきがあります。機械が一定の力で引き伸ばせば、糸の芯に捻れと亀裂が入ります。そうなれば――」


「黙れ。負け犬の戯言は聞き飽きた」


 ロベルトは手の書類を私に投げつけ、足元の木箱を蹴った。中から、私が自費で集めて手入れしてきた月虹蚕の特級繭が転がり出た。


「この繭も公社の資産として没収する。自動機の燃料にでもしてやる。手帳も道具も置いていけ」


「どちらも私の私物です。手帳は一族が代々受け継いできた記録で、公社の備品ではありません」


「敷地の中にあるものは全部公社のものだ。警備兵、この女をつまみ出せ」


 周りの職人たちは、誰も私と目を合わせなかった。昨日まで「ルネさん、撚りのコツを教えてください」と頼みに来ていた者たちが、今はロベルトの顔色をうかがって薄笑いを浮かべている。


「いつまでいるんだ。古い人は田舎に帰ればいいのに」


「機械なら一分の仕事を、一日かけてやるんだもんな」


 笑い声の中で、私は落ちた書類を拾わず、壊れた木箱から繭をひとつだけ手に取った。


「後悔しますよ、部長。糸は太くて丈夫なだけでは足りません。魔力の通り道を作ってやらなければ、結界は内側から弾けます」


「魔力の通り道だと? 精神論もいい加減にしろ。結果が出たら、ゴミ捨て場の脇から指をくわえて見ていればいい」


 私はため息をひとつついて、鉄の扉を押し開けた。外では秋の雨が降り始めていた。


(機械の回転に対して、魔力の流れが三割ずれている。あの糸で織った布に王宮の炉から全圧がかかったとき、何が起きるか。あの人たちには想像もつかないでしょうね)


 ※


 行き先は王都の最下層にある、雨漏りのする貸し納屋だった。公社の誰も知らない予備の紡ぎ車と、父に叩き込まれた『極紡秘録』の原本を、ここに隠してある。


 扉を叩く音がした。泥だらけで立っていたのは、十五歳の弟子のリリアだった。


「ルネ様、大丈夫ですか!」


「リリア、あなたまで辞めたの? これから大変なのに」


「あんな嘘つきの下で働くのは嫌です。ルネ様の技術を無駄だなんて、絶対に許せません」


 肩を怒らせるリリアに、温かいハーブティーを出した。


「公社は天帝型を昼も夜も動かして、十万反の結界布を織っているそうです。来週の『大結界充填式』に間に合わせるって」


「知ってるわ。でもあの布は、布の形をした爆薬よ」


 私は机に、以前手で紡いだ七色に光る糸を一本置いた。


「防壁は全長百キロ、高さ二百メートル。維持するには、中央魔力炉から三万ギガ・ルーンの魔力を、結界布に流し続けなければならない。月虹蚕の糸は魔力が通るとき、中の結晶がわずかに伸び縮みするの。手で紡ぐなら、指先でその『遊び』を均等に残せる。でも自動機は同じ力で引っ張るから、糸の中に魔力の渦が閉じ込められる」


「渦、ですか」


「普段の弱い魔力なら平気。でも充填式で全圧がかかれば、その渦が一斉に共振して糸が内側から爆ぜる。布は灰になって、防壁は消えるわ」


 リリアの顔から血の気が引いた。


「それじゃ、砦の騎士団や周りの村の人たちは……」


「大丈夫。叔父の騎士団総督、ヴァルハイト伯爵に手紙を送ってあるの。当日は第一線の兵を、第二陣地まで下げてくださいって」


「そこまでされていたんですね」


「誰も死なせたくないもの。……ただ、ロベルトと公社、それにあの人たちをもてはやした元老院には、きっちり代償を払ってもらうけれど」


 そのころ、公社の執務室では、ロベルトが業績報告書を手に笑っていた。


「見ろ、十万反が五日だぞ。コストは十分の一、人手は八割減だ。来期の王室予算の三割は、うちに回ってくる」


 技師長のガゼルが揉み手をする。


「さすがです。あのルネという女は伝統がどうのと言っていましたが、ただの既得権にしがみついていただけですな」


「当日は陛下の前で、私が感謝状をいただく。ガゼル、予備の二万反も増産しろ」


「はい。ただ検品係から、糸の表面に細かい帯電ノイズがあるとの報告が……」


「そんなものに構っていたら納期に遅れる。検査データは直して、全部特A級で出せ」


「……承知しました」


 こうして欠陥を抱えた十万反の布は、誰にも検証されないまま、国境の砦へ運び込まれていった。


 ※


 追放から八日。街には「生産性を十倍に! ロベルト部長の快挙」「効率化こそ国家の礎」と書かれた号外があふれていた。


 フードを深くかぶって市場で買い物をしていると、公社の馬車が目の前で止まった。窓からワイングラスを持ったロベルトが顔を出す。


「おや、元極紡技師のルネ先生じゃないか」


 馬車を降りた彼は、わざと水たまりを蹴って私の靴を汚した。人が集まってくる。


「どうだ、追い出されてからの暮らしは。その服は手紡ぎで織ったのか? 惨めなもんだ」


「往来で大声を出すのはやめてください。品位を疑われますよ」


「聞いたか皆。この女は自分の権益を守るために新技術を邪魔した。私が追い出したから、防衛費は減って税金も下がるんだ」


 事情を知らない人たちから、まばらに拍手が起きた。ロベルトは調子づいて顔を近づけてくる。


「感謝しろ。飢え死にしそうなら、床掃除係で雇ってやってもいい。給料は銅貨三枚だがな」


「結構です。私は自分の仕事に誇りを持っています。部長、最後の忠告です。充填式の出力を、予定の八割に抑えてください。でないと、取り返しのつかないものを失います」


「まだそんなことを言うのか。自分の無能が認められなくて、ありもしない災難を予言して気を保っているんだろう。充填式は明日だ。私が陛下から勲章をいただくところを、せいぜい見ていろ」


 ロベルトは私の肩を突き飛ばし、笑いながら馬車で去っていった。泥のはねたスカートを払って、私は立ち上がった。


「ルネ様、大丈夫ですか」


 物陰から駆け寄ったリリアが、悔しそうに目をうるませている。


「平気よ。明日の準備をしましょう。特等席で見届けないとね」


 ※


 翌日は秋晴れだった。王都の中央広場では、大結界充填式が始まろうとしていた。壇上には国王をはじめ、貴族、元老院議員、他国の使節が並び、そのすぐそばでロベルトが胸を張っている。


「陛下、これより我が公社が作った新世代の結界布に、中央魔力炉から充填を始めます。王国の守りは、これで盤石になります」


 国王がうなずいた。


「始めよ。王国の光を国境へ届けるのだ」


『中央魔力炉、バイパス開通。出力一万、二万、三万ギガ・ルーンへ上昇』


 広場の中心にある魔力塔が青白く光り、地面が低く震えた。地下のラインを通って、魔力が国境の百キロへ一気に流れ込む。


 広場の魔導鏡には国境の様子が映っていた。張り替えたばかりの白い結界布が光り、空を覆う青い壁が立ち上がっていく。


「おお!」


「見事だ!」


「ロベルト部長、万歳!」


 歓声の中、ロベルトは国王に深く頭を下げた。


「見たか、ルネ。私の勝ちだ」


 その栄光は、三秒しか続かなかった。


 魔導鏡の青い光の壁が、脈打つように歪みはじめた。


「光がぶれていないか?」


 議員の一人がつぶやいた直後、轟音とともに防壁全体から黒い閃光が噴き出した。


「なっ……」


 ロベルトの顔から笑みが消えた。鏡の中では、十万反の布が一斉に黒く炭化し、粉々に弾け飛んでいた。布を失った防壁は、ガラスの城を叩き割ったように、一瞬で消えた。


『緊急事態! 第一から第五防衛線の結界布が全て自壊、防壁消失!』


『北方の古戦場から魔獣の大群が侵入!』


 歓声は消え、静まり返ったあと、広場は悲鳴に包まれた。


「魔獣だと?」


「どういうことだ、ロベルト!」


 国王が立ち上がり、ロベルトを睨んだ。


「完璧だと言ったではないか。これは何だ!」


「あ、あ、あの……」


 ロベルトの顔は真っ白になり、額から汗が噴き出した。顎が震えて、言葉にならない。


「そんなはずは……機械の数値は完璧だった。なぜ布が弾けるんだ!」


 ※


 同じ頃、公社の本部には報告が次々と飛び込んでいた。


「第一要塞が孤立しました。ドラゴンとオークの群れが鉱山都市ヴェルフェンに突入」


「王室専用の魔導鉱石三千トンが全滅。損害五百億ゴールド」


「国境沿いの農地と魔草園が全焼。損害四百億ゴールド」


「結界布の破片を解析したところ、糸の内部に魔力過負荷の痕跡があります。製造時の引っ張りすぎによる、人為的な製造欠陥です」


 職員たちが頭を抱える中、髪を乱し、服のボタンを飛ばしたロベルトが駆け込んできた。


「ガゼル! ガゼルはどこだ!」


「ロ、ロベルト様……」


「なぜ布が自壊した。検査は合格だと言ったな。私を嵌めたのか!」


 胸ぐらをつかまれたガゼルが、その手を振り払った。


「ノルマを優先しろ、検査データを直せと言ったのはあなたでしょう。全部あなたの責任だ!」


「責任を取るのは技師長のお前だ!」


 二人は床を転がって殴り合い、髪を引っ張り合った。


 そこへ重い靴音が響き、扉が蹴り開けられた。重装の騎士団を引き連れて入ってきたのは、白髪の老将、ヴァルハイト伯爵だった。


「そこまでだ、見苦しい」


「伯爵……助けてください。ガゼルが欠陥品を納めたんです」


「言い訳は取調べで聞く。ロベルト、貴公の無知と強欲と、無理な自動化がこの国に与えた損害だ。読んでみろ」


 伯爵は羊皮紙の巻物を、ロベルトの顔に叩きつけた。


【国境防衛線破綻による被害明細】

・第一〜第五防衛要塞の破壊:八百億ゴールド

・鉱山都市と保管資源の損失:六百億ゴールド

・民間物流の停止と信用の失墜:一千億ゴールド

・結界布十万反の製造・廃棄費用:六十億ゴールド

・結界の再構築と魔獣駆除費用:五百四十億ゴールド


【被害総額:三千億ゴールド】


「さんぜん、おく……」


 王国の年間予算の、およそ半分にあたる額だった。一個人はもちろん、一企業が口にできる数字でもない。


 ロベルトは悲鳴を上げた。鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにして、口を開けたまま目を泳がせ、そのまま失禁して床に崩れた。


「払えるわけがない。家財を全部売っても十万ゴールドにもならん。誰か助けてくれ!」


「払えないなら、貴公の身柄も親族の財産も、七代先までの子孫の労働権も、国が接収する。連れて行け」


「嫌だ、離せ! 私は次期局長だぞ! 天才なんだ!」


 叫ぶロベルトを、騎士たちは荷物のように引きずっていった。


 ※


 雨が上がり、下層区画の空は夕焼けに染まっていた。


 私の納屋の前に、大勢が集まっていた。先頭には、泥と汚物にまみれ、騎士に引きずられてきたロベルト。その後ろには元同僚の職人たちと、元老院の議員たちがいる。


 私は丸椅子に座り、リリアのいれた紅茶を一口飲んだ。


「ルネ先生!」


 ロベルトは騎士の手を振りほどき、私の足元に身を投げ出して石畳に額を打ちつけた。鈍い音がして血が流れたが、気にする様子もない。


「どうか助けてください。私が愚かでした。先生の技術は本物です、世界一です。結界布を直す方法を教えてください。いえ、公社に戻って総支配人として指揮を執ってください」


 這いつくばって、私の靴先にすがりつく。後ろの職人たちも次々に土下座して泣き出した。


「ルネさん、助けてくれ!」


「追い出したときは、ロベルトに脅されてたんだ」


「本当は、みんなルネさんの手紡ぎが一番だと分かってたんだ」


 見苦しい手のひら返しだった。リリアが軽蔑した目で彼らを見て、私の前に立った。


「恥ずかしくないんですか。ルネ様を時代遅れだとか、ゴミ箱の脇で指をくわえていろとか言って笑ったのは、あなたたちでしょう。今さら泣きついても遅いです」


「ごめんなさい、お嬢さん、ごめんなさい。金なら出す。先生、給料は百倍、いや公社の利益の半分を差し上げます。だから三千億の損害を、私の処刑を、取り消すよう頼んでください」


 涙と血と泥で崩れた顔が、私を見上げていた。かつて私を見下していた傲慢さはどこにもなく、死への怯えだけが残っていた。


 私はティーカップをソーサーに置き、ロベルトを見下ろした。


「罪人ロベルト。私はあなたに『後悔しますよ』と言いましたね」


「い、言われました。耳が悪かったんです。私は豚です、愚かな豚です」


「それから、あの自動機が国をどうするか、見せてもらうとも言いました」


 私は立ち上がり、古びた手帳『極紡秘録』を彼の前に差し出した。


「ここには、月虹蚕の糸を壊さずに紡ぐための温度、湿度、指先の加減、魔力の波長合わせの数値が全部書いてあります。これがあれば、結界布の修復も、防壁の再構築もできるでしょう」


 ロベルトの目に光が戻った。


「それだ! その手帳を私に! 助かった、助かるんだ!」


 彼が手を伸ばした瞬間、私は手帳を引き寄せ、そばで燃えていた種火に投げ入れた。


「……え?」


 羊皮紙が赤く燃え、あっという間に灰になっていく。


「あ、あああ! 何を、何をするんだ! 私の命が!」


 火に手を突っ込もうとして、ロベルトは熱さに転げ回った。


「無駄ですよ。この手帳の数値は、もう私の頭の中にしかありません。そして私は、あなたと公社のためには、二度と糸を紡ぎません」


「なぜだ、国が困っているんだぞ。人助けだと思って……」


「国を困らせたのはあなたです。私をゴミのように捨てたのも、あなたたちです。自分で招いた破滅は、自分で最後まで背負いなさい」


 ロベルトは声が出せなくなり、喉からかすれた息を漏らすだけだった。最後の望みを断たれ、口を開けたままその場にへたり込んだ。


「連れて行け」


 伯爵の一言で、ロベルトと元同僚たちは囚人車に押し込まれた。彼らは最果ての鉱山で、三千億ゴールドを返すために、一生働かされることになる。


 ※


 囚人車が去ったあと、ヴァルハイト伯爵は私の前に進み出て、兜を脱いで深く頭を下げた。


「ルネ特級顧問。私の不徳のせいで、貴公に屈辱と苦労をかけた。心から詫びる」


「お顔を上げてください、叔父様。私の手紙を信じて、兵を退避させてくださったおかげで、犠牲者は一人も出ませんでした。それで十分です」


 追放された日に私が最初にしたのは、叔父への連絡だった。伯爵は昔から私の腕を知っていて、警告を受けて、密かに軍を第二陣地まで下げていた。だから三千億ゴールドの物的損失は出たが、人の命は失われずに済んだ。


「国王陛下から勅命が下った。王立魔導紡績公社は今日で廃止する。代わりに、貴公を長とする『国家直属・王立紡績院』を設ける。公社の資産と敷地は、すべて貴公に与える」


「私が、紡績院の長に?」


「そうだ。機械による大量生産を、すべて否定するわけではない。貴公の手作業の技を解析して、機械に正しい制御を組み込む。それができるのは、貴公しかいない」


 驚いたが、胸の中を風が通り抜けるような気がした。


「お受けします、叔父様。ただし条件があります。助手のリリアを、第一期生の筆頭技師に任命してください。それと、糸と本気で向き合える職人だけを私が選んで、教え直させてください」


「もちろんだ」


 伯爵は嬉しそうに笑った。リリアは「ルネ様!」と叫んで抱きつき、声を上げて泣いた。


 ※


 三年が過ぎた。


 ロベルトが黒煙を撒き散らしていた公社の跡地には、白い石造りの『王立紡績院』が建っている。


 広い工房では、新型の『ルネ式魔導紡績機』が静かな音で動いていた。その横で、私が育てた若い職人たちが、一本ずつ手で糸の張りを仕上げている。


「ルネ院長、北方第一防衛線から連絡です。今期の大結界の充填率は、過去最高の百二十パーセント。魔獣の侵入はゼロです」


 立派な技師服を着たリリアが、報告書を手に駆け寄ってきた。


「ありがとう。みんなが丁寧に仕事をしてくれたおかげね」


「院長の『手作業と自動化の調和マニュアル』のおかげで、事故もゼロです」


 窓の外には雲ひとつない青空が広がり、王都は人の声でにぎわっている。国境からは、平和を告げる鐘が聞こえてきた。


 噂では、最果ての鉱山で働かされているロベルトは、今も毎日ツルハシを振るいながら「糸が、糸が弾ける」とうわごとを言っているらしい。三千億ゴールドのうち、彼が生きているうちに返せるのは、ほんの数千ゴールドだろう。同情する人は、誰もいなかった。


「院長、新しい月虹蚕の特級繭が届きました。今回のロットは、艶がとてもいいですよ」


「ええ、今行くわ」


 私は、使い古した木の紡ぎ車にそっと手を置いた。


 時代遅れだと笑われた手作業のぬくもり。指先に伝わる、小さな魔力の鼓動。それが、この国を守る何より強い糸になる。


 紡ぎ車を回しはじめる。カラコロと軽い音を立てて、七色に光る糸が今日も伸びていった。


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