第1話 思い出の入口はいつも白紙
伊東 美織 が辿る思い出の物語
記喪転我意―Lost Memory―の続編
大学に入学した美織が振り返る思い出とは…
切なく、心温まる思い出は美織の閉ざした心を開くのか?
本編では回収されなかった伏線が、美織の視点から明らかになります。
記憶を取り戻したい寸と、
過去を語ろうとしない美織。
事故後の真実、過去の記憶は二人を未来でつなげてくれるのか?
記憶を失った少年と、過去を忘れたい少女が出会う
とてもスローなラブストーリー続編
美織が人生を踏み出す、思い出のストーリー
大学入学式の帰り、
電車の中で本を読んでいると、
1件のLINEが入った。
[美織、入学式はどうだった?
私は、入学式早々にカッコイイ男見つけたわ]
美織はスマホを見て、微笑んでいた…
[由依はそればっかりだね…]
由依は東京の芸術大学に進学し、
東京でデビューを目指している。
ギター1本弾語りで、高校卒業前に
芸能事務所からもオファーがあったが、
厳しい世界とわかっているので、
大学進学を選択していた。
美織は地元の大学の文学部に入学した、
本が好きで物語を
いつか自分でも書いてみたいと思っていた。
小説のアイデアを書く為にノートを買ったが、
未だ白紙だった…
もう何週間か白紙を睨み過ごしている。
いつの日か、私が小説家になって
はじめて出版する本の表紙は、
寸君に描いてもらいたいな…
そんな思いで、夢を膨らませていた…
そう…
私の初恋は小学3年の頃だった…
キッカケなんて、誰にも話した事は無い
クラスは違ったけど、
とても不器用な子を見つけた…
名前は知っていた、“谷本 寸“
給食に嫌いな食べ物があるのか、
掃除の時間も、いつも席に座って食べていた…
最初は可哀想…みたいな印象しか無かった。
勉強も苦手らしく、
今日も廊下に立たされていた、、
どことなく、幼い印象があり
わがままで自分勝手、周りを見て
足並みを揃えるのが苦手で不器用な男の子。
少し心配になったのを覚えている…
ただ…いつも笑顔だった。
今思えば…
これは興味であって恋では無かった…
のかもしれない、
少なくてもこの時はまだ…
いつの間にか、彼を
目で追うようになっていた。
4年生になり、事件は起こった。
危うい当時の寸君が、
クラスメイトに怪我をさせたんだと、
ホームルームで説明があった…
学校は保護者説明会を開き状況説明などに追われていた。
その日を境に、寸君の表情が変わった。
毎日、目で追っていた私だから…
その変化が気になった。
笑顔が幼くあどけなかった表情が、
少し堅い表情になった。
一人で居る時間が増えた。
誰も気がついていないけど、給食の時間
残って食べる姿を見なくなった。
授業中に立たされている姿を見なくなった…
他のクラスメイトに同化してしまった…
クラスの誰も何も気にしないけど、
私はとても心配になった…
寸君は覚えていないけど、
私がはじめて話しかけたのも
丁度その頃だった。
学年行事で校庭で写生大会があった、
場所は自由、好きな場所で好きな絵を描いて良かった、私は自然と寸君を探した。
少し歩いたと思う…
校庭の花壇や遊具の周りに
沢山の生徒が集まり、友達と話しながら
楽しそうに絵を描いていた。
寸君は、校舎の裏の階段に1人座っていた。
絵を描くわけでもなく、
ただ、座って画板を眺めていた…
私は、無意識に近寄って声を掛けた。
「何描いてるの?…」
寸君は少し不思議そうにこちらを見て、
キョロキョロと周りを見た。
話した事も無いのに、
馴れ馴れしいと思われたかな?
そう困った顔をしていると、
寸君は答えてくれた。
「何も描いてないよ…」
そう言って白紙の画用紙を見せた。
私は話した事が、恥ずかしくなった、
「そう…、、私もまだ白紙だよ」
そう言って、笑ったのを覚えている…
その後、
寸君が見える位置に座って、
寸君が座って居る階段を描いた…
その間、寸君は何も描かなかった…
集合の合図が放送で流れた。
『4年生の皆さん、絵を描くのをやめて片付けをして、
10分後に校庭に集まって下さい』
校内に散らばっていた生徒達が一斉に動きだした。
また寸君の近くに行き、
「描けた?」と、話しかけてみた。
寸君は恥ずかしそうに、
「描き方がわからないから描けないよ。」
そう言って、何も描かず提出していた。
数日後、描いた絵は廊下に貼り出されたが、
やっぱり寸君の絵は、白紙だった…
美織は、懐かしそうに、
電車から見える景色を追いかけた。
寸君は、あの時絵を描かなかったよな…
廊下に貼り出された、
真っ白な画用紙。
何も描かれていないのに、
それだけが、妙に記憶に残っていた。
そして今…
私のノートも、同じように白紙のままだった。
そして、美緒は降りなければならない駅を通り過ぎてしまっている事に気付き、
電車の屋根を見上げた…
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