改訂版。幽霊退治屋セリスと精霊ミモザちゃん。その2
「私がミモザ様の遊びのお相手を致します。
精霊様になられた今、あなたを縛る物はもう何もありません。
遊び倒したいのでしたらそれはもう御存分に私がお相手します」
《えっ?ほっ本当ですか?!お姉様が私とお友達になってくださるのですね?!》
お?おお?おおおお?!?!よっしゃああ!!ミモザちゃんが乗って来たぁ!!
「はい、私はセリスです。セリスとお呼び下さい。
今日はリボルノ伯爵様とお話しをしてから色々な遊びの準備の為に家に帰らないといけませんから明日から沢山遊びましょうね。
私は遊ぶのだけは得意なので楽しみにしていて下さいね」
私は精一杯の愛想笑いでミモザちゃんを説得しますよ!
「幽霊退治屋セリス」の本領見せてくれるわ!
ふふふ、そして私の姉属性の強さを思い知るが良い。
《そりゃまあセリスには妹が5人もいるものね》
《はっ・・・はい!!セリスお姉様!明日から遊びましょう!》
去った・・・カターニア公爵家の最大の危機は去ったよぉ・・・良かった。
《この短時間で良くそこまで考え付くわねぇ・・・ん?ああ、そうか・・・セリスは人間だから種族特性の「思考加速」を使っているのか・・・》
☆この辺りから霊視さんαから救助要請を受けた霊視さんβが緊急参戦してセリスとの会話をチェンジしています。
うふふふふ、そうでしょう?そうですとも!だって私は「口八丁手八丁の100歳ババア・・・じゃなくて「幽霊退治屋セリス」」なんですからね!
っていうか私は「思考加速」なんて大層なブツを持ってませんけど?持っていたら多分もっとうまくやれていると思います。
「霊視さんが「思考加速」を持っていたら私にも下さいな?」
☆自分が「思考加速」を持っているとは知らないセリスが霊視さんβにスキルの譲渡をおねだりするも・・・
《ええ?!私はエルフだから「思考加速」なんて持って・・・霊視にそんな能力はありません》
☆エルフな霊視さんβが持っているわけがなかった。人間固有のスキルだからね。
「へー?同じ人族なのにエルフって「思考加速」使えないんだ?」
《エルフじゃないってば!》
《貴女達は何を馬鹿な会話をしているんです?それよりも問題はミモザちゃんです。
精霊に関して私は専門外なのでイリスちゃんにお願いしますね?
それでイリスちゃんの見解は?セリスの作戦はうまく行きそうですか?》
☆ここでセリスに聞こえない様にセリスの頭の中でヒソヒソと作戦会議を始める霊視さんαと霊視さんβ。
《え?んー?大まかにはセリスの考えで正しいけど属性に関して私の見立てではミモザの属性はまだ決まっていないからこれから次第じゃないかな?
これからセリスが側に居ると言うならセリスに引っ張られて「緑属性(樹属性)」になりそうな気がする》
《あら?精霊とはそう言うものなんですか?私は光の精霊だと思ったんですけど?》
《ミモザは生まれたばかりだからね。精霊の属性なんて幾らでも変化するよ》
《ふむ?緑属性と言う事はミモザちゃんは次代の「ユグドラシル」の候補になりますか?》
《うーーーーーーーーん?》
☆霊視さんα・・・女神アテネの属性は「太陽(火)」なので「緑属性」に関しては詳しくありません。女神様なら何でも知っていると思うのは間違いなのです。
特定の分野においてはむしろ知識欲が強い人族の方が多くの知識を持っています。
それから精霊とはヴァナディース神族(ヴァン神族の女神の総称)が作り出した眷属でもあるのでオリュンポス神族の女神アテネは精霊の事を詳しくは知りません。
属性的にユグドラシルの根源たる樹属性の女神フレイヤと樹を燃やす火属性の女神アテネの相性が悪いはずなのですがなぜか2人は昔から凄く仲が良かったりもします。
ちなみに魔法世界の我らの主神である女神ハルモニア様の属性はバリバリの光(超強力)です。光が強すぎて直視すると目が潰れてしまいます。
《うーーーーーん?
そうだね。ミモザは十分に次代のユグドラシル候補になれる・・・とは思う。
精霊達を産み出す霊樹だったセリスの影響力がどれだけミモザに及ぼすのか私にもわかりませんが・・・まあ様子を見るしかないです》
☆イリスの予想通り、この時のセリスの私利私欲な行動が後の世界に多大な影響を及ぼしますがそれはまた別の物語となります。
《それからセリスの思考加速のスキルですが、セリスにとってあまりにも身近な存在で本人がスキルとして意識していないだけで人間として生まれた瞬間から獲得しています》
《ほう?セリスちゃんは色々とスキルが多いですね》
《大半のスキル(特に戦闘系)は死蔵になってますけどね。
全部発動出来れば「勇者」にもなれる資質がありましたが「勇者覚醒」の気配すらなかったですね》
《セリスちゃんが勇者しかウケますね》
☆
ちなみに傍目で見る限りセリスは淡々と矢継ぎ早く話しをしている様に見えますが前述の通りセリスは会話の答えを出すまでに凄い時間が掛かるタイプなのです。
この思考加速のスキルが無いと受け答えに時間が掛かる「めっちゃトロく喋る女」になります。質問されてから15秒近く散々モノを考えた末の返答が「はい」の一言だったりする訳ですね。
《でもやっぱり専門家にも見てもらった方が良いのかな?明日にでも連れて来ますね。
ミモザって世界の特異点な様な気がするし慎重に扱った方が良いですね》
《イリスちゃんを超える精霊の専門家ですか?そんな人が居るんですね?
特異点という事は世界の変革が起こるって事ですか?》
《ミモザとセリスが出会ったのは世界の必然で点と点が繋がり線になった事で何かが起こる・・・気がする》
《ふーーーーーむ?なら私も一応は本体さんに報告だけはしておきますねー》
《本体?》
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「なんと?!娘が精霊に?・・・娘の事はセリス様にお任せします」
ミモザちゃんの生まれ変わりを知り喜びの涙を流す伯爵夫妻・・・まだ精霊として安定してないからミモザちゃんの声も聞こえず姿も認識出来ないけど直ぐに見える様にしてあげるね!
「ミモザちゃんが喜ぶと思いますのでお部屋で名前を呼び掛けて下さいましね」
「・・・はい」
そうして私はミモザちゃんの部屋からダッシュしてリボルノ伯爵様に事の経緯を説明して明日の朝からの遊びの為の資金と前払い金をゲットしました。
なぜ急いでいるかと言うと、今日の私には大事な使命があるのだよ!
それは今日がお肉屋さんへの支払いの締め日なのです。
早速私は前払い金を握りしめてベン精肉店のツケを払いに全速力で走りましたよ・・・もちろん自走してね!
精肉店さんでツケを払うものの手持ち分のお金ではギリギリ足りなくて不足分を来月のツケにして貰って馬車代をケチる為にまた自宅まで自走する私です。
急ぎ明日の準備をせねば!
私の自走する姿は王都の街での風物詩になってるので今さらもう誰も気にしませんわよ!
「おー?また「ネクロマンサースレイヤー」が走っているぜ」
「頑張って「ネクロマンサースレイヤー」!」
「親が泣くからその呼び方やめーーーい!!」
ちっ!庶民の皆様方はしっかりと私を気にされておったわ!
おらあああ!!!一部の人間しか知らないはずの「ネクロマンサースレイヤー」の称号が市民の皆様にめっちゃ浸透してやがりましたわ!!
誰だ余計な事を言いふらしてやがる奴!出て来いやあ!
私自身は・・・まぁ、面白いから良いんじゃね?とは思ってますが父と母がシクシクと泣くんだよ!
ふ・・・ドンドンと公爵令嬢さまの嫁入りが遠退いていきやがるぜ。
そうして自走セリスは実家のカターニア公爵家に走って帰ってきました。
「ゼェ・・・ゼェ・・・ハアハア・・・うえええ」
「いやあ?!お嬢様!きったない!」
ボロボロになって帰ってきた私を見て悲鳴を上げるメイドちゃん。きったないって酷くね?
毎度の事ながら・・・無駄に胸が成長してからと言うもの自走するとマジで死にそうになるので困ったモノなのです。
この無駄にデケェ胸要らん!超要らん!走るフォームが崩れてしゃーない。
こういうのは欲しい人に与えるべきですぜ神様よ。
私はあんまり胸のデカさとかは気にしない女なのです。
あー、かつて霊視を使い遠目で見た地龍様の地面をスケートのように走る謎走りを会得してぇなぁ・・・マジで・・・
「お嬢様ぁああああああ!!」
「いやぁああああ?!ごめんなさーい!」
とか思ってたらメイドちゃんがチクったのか専属侍女のミミリー様が鬼の形相でこちらに走ってきましたよ!
「ええい!毎日毎日いい加減にしろーーーー!!」
「いやーん!」
帰るなり汗だく埃塗れな私を見てブチ切れながら服を剥ぎ取る私の専属メイドのミミリー様!毎日ご迷惑をお掛けしてすみません。
「うぉりゃああああ!!脱げー!」「ああーん!いやーーーん?!」ドボーーーン!!
でも公爵令嬢を裸にひん剥いてから風呂に投げ込むのはどうかと思うんです!別に汗臭くないから良いじゃんか!
・・・ん?あれ?そう言えば私ってばどんなに汗をかいても汗の臭いとか全然しないよね?公爵令嬢の特殊スキルなのか?
?!?!今更ながら自分の異常性に気が付いたのですよ?!
え?まさか・・・私って人間じゃないの?!ロボなの?!ロボなのか?!
☆
セリスはそんな妙な勘違いをしてますがセリスも生き物なので体臭がしないなんて事はありません。汗だくになれば当然ながら体は汗臭くなってます。
これは「小さき者達」の日々の激闘の賜物なのです。
では「小さき者達」の活躍を少し覗いてみましょうか。
《もおおおお!セリスってば今日も汗臭い!》
《だから何でお姫様が毎日汗だくになるのよ?!》
《だってこの子ってば無駄に走るんだもん!》
《もお!イリスといいセリスといい・・・お姫様が体臭を気にしないのってどうなの?!》
《消臭よ!「水蓮の精霊」の名にかけて消臭するのよ!汚物は消臭よ!》
《おおーーーー!!》
《ええーい!人を汚物扱いすんなー!》
《あれ?イリス居たの?》
《だってイリスってばたまに「一週間以上もお風呂入らない」じゃん?完全無欠な汚物エルフじゃん!》
《汚物エルフとか言うな!軍の野外訓練なんだから仕方ないでしょ!》
《文句があるならもう消臭してあげないよ!》
《すみません!私が悪かったです!いつもお世話になってます!》
☆こんな感じにセリスの頭の中(精神域)で水蓮の精霊達と喧嘩をしている霊視さんβ・・・
誤解のない様に説明をすると霊視さんβはエルフらしくメチャクチャ綺麗好きです。
朝のランニングを終えてシャワー、昼食後にシャワー、晩飯後に本格的な入浴と砂漠地域の住人から袋叩きに合うレベルの風呂好きです。
しかし軍での実戦形式での野外訓練中は基本的に兵士は風呂に入れません。
森の中で数日間の潜伏訓練なんてザラにありますからね。
ラーデンブルグ公国空軍の高級士官でもある霊視さんβですが特権扱いを嫌い訓練中は部下と同じく風呂には入りません。
そんな時に水蓮の精霊達が霊視さんβを消臭しているんですね。
霊視さんβと同様にセリスの「守護花」である「水蓮の精霊達」が汗臭いセリスの体臭を消して水蓮の香りをセリスに身体に振りかけていたと言う訳です。
本来、守護花との契約という仕組みはエルフ特有の仕組みなのですが、セリスの前々世である「霊樹シルフェリア」が水蓮の精霊達の親玉だった事もあり今世でも健気に水蓮の精霊達がセリスを守護していると言う訳です。
800年前に霊樹シルフェリアの守護を受けたイリスの守護花も必然的に水蓮になったのですね。
ちなみに水蓮の精霊達との契約の本来の利点は消臭だけでなく「魔力上昇」の特殊効果です。
体臭の管理は水蓮の精霊達のボランティアに過ぎません。
そんな事とはつゆ知らずに怪訝そうに「ん?脇から花の香りがする?」と、自分の脇をクンクンするセリス。
「公爵令嬢が脇をクンクンすんな!」パシーーン!
「またミミリーが叩いたーーー!」
最近のミミリーは容赦なく私の頭を叩くんです!暴力反対です!
まぁ、確かにこれくらいの実力行使をせんと私の調教なんて出来ませんね・・・
散々スポンジでグワシされてフラフラになった私を美しい公爵令嬢に仕上げてくれるミミリー様・・・お世話になります。ホントすみません。
着替えが終わった頃を見計らって部屋の扉が開き、廊下から愛しの弟妹達がわらわらと出迎えてくれます。
ただいま!美しいおねいちゃんが帰って来ましたよ~。
「「「わーい、ねーたまーおかーりー」」」
「「「姉上!おかえりなさい!」」」
「「お姉様!おかえりなさいませ!」」
ドンドンドンドンと私に抱き付く弟妹達。いや、ちょい待って待ってぇ?!多い多いってぇー!
「ぐふっ!ただ・・・いま・・・ぐえええ?!?!」
チョークチョーク!締まっている!おねいちゃんは締まってますよ!弟妹達よ!
皆んなから締められておねいちゃんは苦しいです!チョーーーク!!
そうなんです。現在のカターニア公爵家は、長女の私(15歳)を筆頭に→双子の妹(13歳)→三つ子の弟(10歳)→三つ子の妹(8歳)の9人兄弟野球チームなのです。そして現在のお母様は絶賛妊娠中!
つまりお腹の子と両親合わせて11人家族の予定。
なぜ予定かと言うとお母様のお腹の中で元気に成長中のチビちゃん。
このお腹のチビちゃんが双子なのかどうかが公爵家の運命の分かれ道になります。
普通なら双子とかを心配する様な事では無いのですがカターニア公爵家はこれまで、単体での姉→双子の女の子→三つ子の男の子→三つ子の女の子と天文学的な確率で多産が続いているのでどうなるか分からないんですなこれが。
一応この世界でもお腹の赤ちゃんの状況を正確に調べる手段があるにはありますが妊婦さんには負担が掛かる鑑定魔法なので病気の治療目的以外でお腹の赤ちゃんを調べる事はありません。
なので赤ちゃんが1人っ子なのか男の子か女の子なのかまだ分かりません。
ね?!これだけ兄弟が多いんだから将来的にお金なんていくらあっても足りないと思いません?
今から頑張って弟妹達の学費を貯金せねば!!
そして・・・子供達や使用人達には大変にお優しい両親ですがある重大な問題があります・・・その日の晩餐時に早速その問題が発覚!
「おかえりセリス。また仕事だったのかい?ご苦労様だったね」
「はい、お父様」
ほんの30分前まで汗だくボロボロだったと思えないほど淑女らしく振る舞うわたくしでございますわ。
「セリス?ウチの馬車を使わなかった様ですが・・・まさかまた、街中を走ったりしてませんよね?」
「はい、今日はお父様がお仕事で馬車を使うと思い事前にレンタルしました」
王都には便利な貴族向けのレンタル馬車屋さんがあるんです。まあ・・・思い切りケチりましたけどね!
「・・・・・・・・・・・・・後でミミリーに問いただしますわよ?」
「申し訳ありません。軽くジョギングしました」
「そう・・・食事が終わったら、わたくしの部屋に」
「あい・・・」
くっ・・・最近のお母様は私の淑女な演技に騙されなくなっちまったい。
「そう言えば・・・ボタノ炭鉱の株で得た配当金を王都の孤児院に寄付してしまったよ」
と、ここで父のコーバ公爵がいきなりの爆弾投下開始!
「はっ?!!」私は驚愕する・・・いや!驚愕もするわ!
「まぁ?それは良い行いをなさいましたね旦那様」
嬉しそうに手をパンッと打ち鳴らす母。
・・・いや!ちょっと待って欲しい!父と母よ?!
ボタノ炭鉱の株の配当金?!それってまさか・・・私が他国をも巻き込み法律に触れる寸前までインサイダー的なアレやコレの操作しまくって国王様と宰相様に外務大臣様に財務大臣様に全力で媚を売りまくりようやく手にした公爵家の運営資金?!それを孤児院に寄付ぅ?!
「孤児院の子供達も大層喜んでな、こんなに可愛い感謝状までもらってしまったよ」
父が子供達からの感謝のお手紙をホクホク顔で家族皆んなに見せて来る・・・
「まぁ?なんて可愛らしいお手紙ですこと」その手紙を見て大喜びの母バーバラ。
「あ・・・ああああ」
「あ」しか言えん私・・・やべぇ気を失いそうだ!
そうなんです・・・
ウチの両親はいわゆる慈善事業馬鹿なのです。
ピアツェンツア王国の国民からも「慈愛のカターニア公爵」で親しまれている・・・お人好し全開の公爵様で各所社会福祉施設へ寄付や寄贈をやりまくるのです!
いやこれがですね?例えば父がお酒や女遊びをやりまくるとか母がドレスや貴金属を買いまくる贅沢をするなどが原因での貧乏なら精神年齢が父と母より遥かに上な私が情け容赦無く父と母を処断して終わりなのですが・・・何せ父と母には悪意が無く、そしてとても良い行いが原因で我が家は貧乏なのです。文句が言い辛い・・・もの凄く!
慈善事業を良いですが先ずは自分の家の事から!と再三に渡り注意してはいるのですが寄付癖が治りません!
お願いします!誰か助けて下さい!
そして今回は虎の子だった公爵家の運営資金を孤児院に寄付してしまった・・・のですね?
うぐぐぐぐ・・・寄付してしまった以上、今更返せと言えないですね。
また私が稼ぐ他ありません・・・ぐふぅ・・・意識が遠のく・・・
これが私が幽霊退治屋をしている理由です。
運営資金に穴を空けまくる両親に代わりお金を稼いで自分達の生活費にする為に・・・
「あ・・・あああああ」
良質なタンパク源を確保して幼い弟妹の成長の為にもベン精肉店との取り引き停止だけは断固阻止しなければならないのです!
他のお肉屋さんだと足元を見られるから駄目なのです!
意識朦朧としたままフラフラと部屋へ戻った私はそのままバタンキューでした・・・
悪意がない行き過ぎた善意・・・恐ろしい・・・でふ・・・
明日からのミモザちゃんとの遊びを死ぬ気になって頑らねば・・・




