幽霊退治屋セリスと魔王バルドル。その3
突発的にセリスに対して始まった魔王バルドルによる講義も核心部分に入る。
「さて次は、そうじゃなぁ・・・歴史的にヴィアールの戦いがなぜ始まったか説明するかのう。
「俗に言う所の旧ピアツェンツア王室と現在のピアツェンツア王室との確執」から始まった権力闘争の延長じゃ。
まあ要するに中央大陸の東部地方の主導権を巡る両王家の政治闘争とも言える」
「?!?!?!」セリスにとってはいきなりヘビーな暴露がブッ込まれる。
さてこれでセリスもヴィアールの戦いにおいての第三者の無関係者では居られなくなった・・・何せセリスはその両方の王家の直系の血を受け継いでいるからだ。
「お?さすがセリスじゃ。一瞬で自分の立ち位置を理解したな。
その青い顔の通りじゃ。もし仮にヴィアールの戦いを終わらせる事が出来る者はいるのか?と聞かれると儂は「その者はセリス・フォン・カターニア」と答えるじゃろう。
・・・理由は分かるな?」
「?!?!?!ちょっ?!」
魔王いわく両王家の直系の血筋を持つセリスは両王家の和解の証の様な存在である。
なので「両王家が和解をした以上はヴィアールの戦いなど不用」とセリスが女公爵になり本気で政治的に働き掛けたらもしかしたら終戦するかも知れないね?との理論なのだ。
「いやいやいやいや無理っす!そんなの私には無理っす!」
ブンブン首を振るセリスを真似て妹達も首を振る。
「おや?セリスが無理なら、そこの妹達に役目が回るやも知れぬぞ?
なにせその子達もセリスと血筋は全く一緒なのじゃからな」
「?!?!ずっこい!魔王がずっこい!そう言う脅し良くないね!」
魔王からの脅しにテンパったセリスが思い切り日本語で苦情を吠えると・・・
「ずっこいって・・・記憶によればお主は道民じゃなかったか?なして三重弁なのじゃ?」
セリスに釣られて魔王も思い切り日本語で返す。
「なしてー?」「ずっこー?」「なにー?」日本語が理解出来ずに顔を見合わせる妹達。
「うっさい!そう言う「なして」ってのは北海道弁だよ!
・・・・・・・・・ってか、なして魔王が「三重弁」や「道民」なんて単語を知ってるのよ?!と言うか、私達が今話してる言葉って日本語じゃーーーーーん?!?!」
突然始まった異国語での言い合いに妹達もキョトンとしている。
「なしてバルドルさんが日本語を喋れるのさ?!」
「ん?それは簡単な話しじゃ。儂は「以前は日本にも住んでおった」からじゃ」
かつて魔王バルドルは・・・以下省略。
「?!?!?!」
「まあ、儂の日本云々は今回の話しには関係ないし長くなるから省略じゃ。
機会が有れば話そう。言葉も話しも元に戻すぞ?」
さすがは百戦錬磨の講師魔王バルドル。逸れ始めた授業を即座に修正する。
「ううー??」もう何が何だか情報過多で頭を抱えるセリス。
「ふむ?少し悪ふざけが過ぎたかの?
なに、あの戦争はそんなに簡単に済む話しでもないから安心せい。
両王家の血筋が云々とは可能性のかなり低い話しじゃ。
仮にセリスが本気で停戦に動いても直ぐに国王のヤニックに「幽閉」されるだけじゃ」
「?!?!?!全く!何一つ安心出来ないんですが?!幽閉って?!」
「ヤニックはセリスに対して・・・と言うよりは、お主達兄弟姉妹に対して過保護じゃからのう。兄弟がおらん奴は他の親族を大切に思っておるからな。
お主達に本格的な命の危険が有ると感じたら奴はお主達を王宮の中に隠してしまうじゃろう」
「え?そうなん?私達っててっきり陛下に嫌われてると思ってました」
と言うか・・・セリスの場合は国王に幽閉される前にエルフの女王に連れ去られると思います。
「実の所でヤニックの奴は権力に興味は無い。なので政争相手がどうこうでは行動はせん」
「そうなの?!」
セリスが産まれる前に国王ヤニックが政敵の大規模粛清を断行したのは有名な話しでカターニア公爵家も圧力に負けて軍門に降ったと言われている。
「それ以前にヤニックの王太子時代は行方不明の期間が長くてのう。
その間に8割方はお主の父が18代国王に決まっておった」
「?!?!?!」そうなっていたらセリスは「王女」となっていたね。
「ヤニックが帰国するとそこから熾烈な「王位の押し付け合い」が始まってな?結局は「あみだくじ」でヤニックが次期国王に決まった」
「嘘つけーーー!!」
ヤニックが国王に決まった経緯には「黙示録戦争」が深く絡んでおりとてもセリスには話せない内容なので冗談で済ませる事にするバルドル。
「まあ、王位継承の経緯についてはヤニックに直接尋ねるが良かろうて。
それくらいヤニックには権力欲が無かったと覚えておく程度でよい。
奴の原動力は今も昔も「一族の為に」じゃ。
その一族には当然ながらセリスも兄弟姉妹も含まれている」
「ふあー???」
セリスは国王ヤニックに自分達がそこまで大事に思われてるとは思ってなかった。
一応はピアツェンツア王家とカターニア公爵家は王位継承権を分つ政敵だからだ。
「そうでなければ自分のの切り札とも言えるイノセントやジャックをお主に何度も付ける訳がなかろうて。
それよりも!じゃ。
今までお主周りで起きていた数々の問題も奴的には割と幽閉ギリギリラインじゃったからな?これからの行動は自重するがよい」
「あい・・・」
うん、これからは行動には気を付けよう!と心に誓うセリスだが災厄とは向こうから勝手に訪れるモノである。
「奴の行動原理が分かった所で話しを続けるぞ?
ヴィアールの戦争は経済的な恩恵が大きく、あっちこっちの勢力の利権が複雑に絡んでおるからな。利権が絡む・・・となればマフィアと言った裏社会の連中も深く絡んで来ておる」
「やだ?!何それ?!怖い?!」
ちなみにこの世界のマフィア・・・裏社会の連中はかなりヤバい。
奴らは龍種などの高位存在すら精神を支配して鉄砲玉として敵対勢力に送り込んで来るのだ。
魔王バルドルが表向きの魔王ならマフィアのボス達は裏の魔王達と言っても過言ではない。
そんなマフィア連中達と魔王バルドル&エルフの女王の戦いは約800年にも及ぶが勝負は未だに付いていない。
エルフの女王はその戦いの過程で「核兵器」すら使用している始末なのだ。
「だからその辺のヤバい話しはお主の婆様に全て丸投げしてお主は関わらん方が吉じゃ」
「最初から嫌だって言ってるじゃん!絶対に関わりません!」
「しかしな?関わると金だけはめっちゃ儲かるぞ?一晩で億単位で稼げるのもザラじゃ。・・・・・・・お主なら突撃しそうじゃね?」
「それは否定しないけど、そんな怖いモンに関わるのはもっと嫌です!」
「うむ、戦争ビジネスになんぞ関わらん事じゃ。
さて、次はその戦争ビジネスの話しをもう少し詳しく話そうか。
ヴィアール辺境伯家にとっては合法的に要塞砲の発射試験を出来るし東方諸国へ要塞砲の威力を見せ付けて自領へ攻撃を牽制をする為に始まった戦争でもあるのじゃ。
そして旧ヴィアール王家にとっても経済的な恩恵が多い」
「なして?戦争って現地では経済的損失の方が大きいじゃん?」
なんかもう面倒臭くなったのか日本語のままで話しを続ける事にしたセリス。
「これが普通の戦争ならな。しかしアレは普通の戦争では無いので例外じゃ。
戦争を継続すればするだけ現地での経済効果が出る仕組みとなっている。
そしてヴィアール王家へヴィアール地方の統治料を支払ってヴィアール辺境伯家が同地を統治しておるからなヴィアール辺境伯家が儲かれば儲かるだけヴィアール王家は潤う仕組みにもなっている」
「・・・最初から気になってたんだけどさ?
そのヴィアール王家って・・・それって私のお婆様が当主を務めている「アグノエル侯爵家」の事?」
一応、「ヴィアール王家」と言う王家は公式には存在はしておらずバルドルの言う「ヴィアール王家」とは、主に亜人達が使う通称の様なモノである。
バーバラ夫人のお母ちゃん、つまりセリスの婆ちゃんのパトリシア・フォン・アグノエルさん(58歳)が家長を務めるアグノエル侯爵家がそのヴィアール王家の正式な名称である。
「そうじゃ。ピアツェンツア王国建国当時、中央大陸の殆どを支配していたヴィアール共和国(旧ピアツエンツア王国)を統治したのがアグノエル家だったのじゃ。
ちなみにヴィアールもピアツェンツアも、「ただの地名」から来ておるな」
「ほう?」
フランス王家のブルボン家も地名のブルボネーから来てるモンね。
「ん?え?じゃあ、今のヴィアール辺境伯家って???
ヴィアールの王族がピアツェンツア王国に臣従して辺境伯家になった話しは嘘なの?」
お利口さんのセリスでも知らない歴史の裏話しの連発にセリスの頭が「?!?!」になっている。
「厳密に言うなら「それは嘘では無い」ヴィアール辺境伯家の初代当主は現在のピアツェンツア王国初代国王の王弟なのじゃ。
当時は、まだまだ弱小勢力だった「ピアツエンツア公爵家」の次男坊がヴィアール王家に「人質」として赴きそして当時のヴィアール王家の第一王女と恋仲になり結婚をしてヴィアール辺境伯家を立ち上げてピアツェンツア王家に臣従した。
第一王女、つまりヴィアール王家の者がピアツェンツア王家に臣従したのは事実じゃな」
「え?人質?!お姫様が人質になったの?!
つか・・・また私も知らん家門の名前が出て来た!ピアツェンツア公爵家って?」
「王族が他国の人質に赴くなど当時も現在も珍しくも何ともない事じゃろ?
ピアツェンツア公爵家については後で詳しく話そう」
直近の話しだと側妃の名目でピアツェンツア王国に避難して来たグリーンランド王国のアストリッド姫も広い意味では人質である。
要は出向いた先での待遇が良いか悪いかの違いだけなのだ。
「第一王女の結婚に際してヴィアール王家も婚姻の証として「ヴィアール辺境伯家をヴィアール地方の代官に任命した」それが今のヴィアール辺境伯家の始まりじゃ」
「おお!なるほど!ヴィアール辺境伯家はピアツェンツア王国に臣従はしたものの、主はあくまでアグノエル侯爵家と言うヤツですな」
最初は嫌々とバルドルの授業を聞いていたが元来は勉強大好きな優等生なセリス。
自分が知らない本当の歴史に知識欲がガンガン駆り立てられる。
「そしてご丁寧にも500年経った現在でもそのし主従関係は続いている訳じゃ」
「ヴィアール辺境伯の成り立ちは分かりました!
はいはい!じゃあ先生!そのピアツエンツア公爵家って何ですか?
私も今回初めて聞きました!その公爵家は現在の王室とは関係あるんですか?
特に紋章について興味あります!」
「おや?地雷を踏み抜いたかの?」セリスに勢いに少し驚く魔王。
これは自慢になるが世界歴史学を選考しているセリスは15歳にしてピアツェンツア王国の建国から500年間にあった中央大陸にある(かつてあった)貴族家の家門の名称と紋章の全てを覚えている。
その気になれば今すぐにでも「紋章官」になれるのだ
また話しが大きく脱線してしまうが「紋章官」とは、紋章にまつわる事案を発議すること、及びそれを管理監督すること。国家の儀式を手配しそれに参列すること。紋章や系譜の記録を保存すること及びそれを解釈すること。などを司るバチクソに頭の良い人の事である。
中世ヨーロッパでもどれだけ優秀な紋章官が居るのかが国の格の一つとも言われていた。
ちなみに2025年現在でも紋章官さん達はヨーロッパ各地でバリバリ仕事をしております。式典で着ている衣装がめっちゃファンタジーしててカッコいいです。
「いきなりめっちゃ目が輝いて来たのう。
ピアツエンツア公爵家は王家となった際に公式な記録からは全て抹消されておるからセリスが知らんのも無理はない。
この王都があるピアツェンツア地方を治めていた公爵家で現在のピアツエンツア王室の前進にあたる家門じゃ。
・・・今は王都として栄えてはおるがここら辺も当時は何も無いただの草原でのう。
今は国立公園になっているピアツェンツア湖の周辺のみに街があったのじゃ。
後に「ヴィアール王家から無理矢理に中央大陸の王権を譲渡されて」ピアツエンツア王家となったのじゃ」
「?!?!王権の譲渡って何さ?!?!」
「言葉の通りじゃ。
当時の中央大陸は共和制政治でまとまっていた。
その共和制度の盟主にして代表だったアグノエル侯爵家からピアツエンツア公爵家に代表の座を譲り渡されたのじゃ。
譲渡された理由は儂にもよく分からんがどうやら政治的な責任だけをピアツエンツア公爵家に負わせて、自分達は影から操る・・・いわゆる「院政政治」を目論んだのであろうな。
まあ、その目論みは見事に失敗してピアツェンツア王家は力を大きく付けて中央大陸を掌握して自分達は没落して東方の田舎貴族に追いやられて現在に至るのじゃがな」
「完全無欠なる自業自得じゃん!」
自分のアグノエル侯爵家の御先祖様達がアホ過ぎて悲しくなるセリス。
しかしアグノエル侯爵家没落の原因になったピアツェンツア公爵家もセリスの御先祖様である。
「そうじゃな。亜人族の儂から言わせれば当時の人族の政争など「オメー等は、揃いも揃ってバッカじゃねえの?」って感じなのじゃが・・・当時の王侯貴族にも色々な思惑があったんじゃろうな」
「ホントよ!王侯貴族って面倒くせえ!マジざっけんなって話しですよ!」
その大昔の得体の知れない政争のせいで500年以上の時を超え子孫のセリスに「歴史的な責任」として降りかかっているのだ。そりゃセリスも怒るだろう。
「貴族とは今も昔もそう言う生き物じゃからなぁ」
「あ~。これは聞かない方が良かった~」
「でも面白いじゃろ?」
「そりゃもう!」
これが自分に無関係の話しならバチクソに面白い話しである。
何せ当時をリアルタイムで見ていた人物からの暴露だからだ。
ちなみにアグノエル家からピアツェンツア家への王権の譲渡は超常的な要素を過分に含んだ理由だったのだが、バルドルは「バカ」の一言で片付けてしまった。
何なら今でもアグノエル家の初代当主の事も「バカ」だと思っている。
何なら「この変態野郎」だとも思っているのだ。
バカは分かるが変態とは?
そしてセリスは「自分自身がその大昔に存在していた変態野郎と称されているアグノエル初代当主と直接対面して」悲鳴を上げる事になる未来を知らない。
「はいはい先生!次はヴィアールの戦いの経済的効果の話しをもう少し聞きたいです!
なして戦争をすれば逆に潤うんですか?出来れば裏話なんかも含めて!」
「セリスの先生になる者は大変じゃのう」
セリスは王立学校でもこんな感じに教師に纏わり付き質問攻めにして苦笑いされている。
セリスの中ではもう魔王バルドルはめっちゃ良い先生になったのだ。
「しかし、ふむ・・・裏話か?・・・・・・・・・」
ここから先はセリスに聞かせると色々と不味い話しばかりなので、どうボカして話しをするか、どこまで暴露するか考え始める。
そして、「ふーむ?ヴィアールの戦いと冒険者の関係について話そうかのう」バルドル先生の講義はもう少し続くのだ。
しかしここで、限界が来た妹達から待ったがかかる。
「ねーたま、おことばがへん~」「ヘン~、てれーずわからない」「ねーたま、なちて~??」
日本語で話し続ける2人に抗議が入る。
「ああ!ごめんね!何言ってるか分からないよね!」
興奮して日本語で話しまくる自分に対して妹達から苦情が入ったのでセリスは現地の言語に戻ります。
「セリスの言葉が戻った所で話しを続けるぞ?
さて、真魔族も新型のゴーレムの性能テストをしたいし外貨も稼ぎたいから戦争に協力しておる事は理解しておるな?」
「あい」なぜかセリスではなく妹の1人のテレーズが頷く。
「良い子良い子!」「きゃー」お利口さんな妹に抱き付きウリウリする姉。
「損得の観点からも両者の思惑が一致した訳じゃが副産的な話しとして荒ぶる冒険者達のガス抜き&金稼ぎにもヴィアールは利用されておるな」
「そう言えば・・・ヴィアール辺境伯領って冒険者達の総本山だって聞いた」
魔法世界の「冒険者」と言う職業は実の所で歴史が浅くまだ150年程度の歴史しかない。
前身としては世界各地を自己防衛しながら商売して回る「武装商人」や、その名の通りの「傭兵」と呼ばれる者達は昔から居たが冒険者とはニュアンスが少し違う。
冒険者と言う名の職業の普及が遅れたのは冒険者の概念を知っていた過去の転生者達も積極的に冒険者を推奨していなかったからだと思われる。
「え?だってもう各専門職のギルド有るじゃん?器用貧乏になりそうな冒険者はあんまりオススメ出来ないなぁ」との理由らしい。
地球の異世界転生モノの話しを聞いたエルフの女王の「そんなに便利ならその冒険者ギルドとか立ち上げ方が良くない?」との質問に対して日本からの転生者だった今は亡きグリフォンの魔王の言葉である。
真っ先に「異世界チートぉお!!!冒険者ぁー!」とか言い出して冒険者の大軍を産み出しそうなタイプだと思ったが反対派だったのは驚きだ。
そして同じ地球出身のセリスの反応は?と言うと、「え?なして?オールラウンダーの冒険者が居れば何かと便利だったじゃない?」だったが、魔王バルドルもグリフォンの魔王と同じ意見な様子で・・・・「セリスはオールラウンダーと軽く言うが全員の全員がなんでもこなせる万能の士の訳がないからな。それなら自分に見合った得意分野の職業ギルドに在籍して能力を伸ばす方がより効果的だろう?」との返答だった。
商業、技術ギルドの概念自体は大昔から有りその活動内容も個別の専門的な内容で別れている。
冒険者制度は一歩間違えればオールラウンダーとは名ばかりの全てにおいて中途半端な事しか出来ない者を量産する危険性もあるのだ。
「あ・・・そか。ギルド内に技術を教える者が少ないからかあ」
「冒険者の立場を日本流の言葉に置き換えると「短期バイト」と言っても良いからのう」
「身も蓋もねえ!」でもそう言われると少し納得できたセリス。
話しを聞くと比較的最近誕生した運送専門業を冒険者が担うのも何か一つ専門的な職業を確保する為だと理解出来る。
「いや、それは単に利権の話しじゃ」
「だから身も蓋もない事を言うのをやめい!」
「利権と言えば倒したゴーレムから取れる魔石はクズ石とは言え高く売れるからな。
「クズ魔石の出力は弱いので軍用とかには転用は出来ないが電化製品などを動かすのにクズ魔石は市場でかなり重宝されておる」
「あー?そっか~。だからイノセントさんもヴィアールの戦争について何も言わないのかぁ~」
「いや?アヤツは単に興味ないだけじゃろ?担当地域も違うし」
「だから、以下略」
それから1年後、セリスが西の大陸から帰って来た冒険者ギルドマスターのイノセントに今回と同じ質問をした事があったのだが、イノセントからは、「ん?んー・・・そうだな。その辺はマスター同士で随時対処しているから別に問題は無いぞ?」と、やけに口を濁した回答が返って来たのだ。冒険者ギルド的にもヴィアールの戦いが収束されると困るらしい。
「とまあ、こんな感じにヴィアールの戦いは複数の勢力の思惑が重なって行われている代理戦争、仮想戦争なのじゃな。
儂は単に戦争の名義貸しをしているだけなのじゃな」
「戦争の名義貸し・・・」
「戦争が長期に及んでおるのでたまに計画外の侵攻などをして「戦争自体がだれないように」メリハリを付けておるがな」
「メリハリとか言うのかなぁそれ?」
「まあ・・・何度も繰り返しになるが「アレ」には下手に関わらんのが吉じゃろうて。
今回はかなり雑多な説明だったがヴィアールの戦いは今の話し以上に複数勢力の複雑な思惑が絡む政争でもあるのでシカトするのが1番じゃ」
バルドルは思い切りボカシたが人族と亜人族以外の人外達も絡んだ戦争でもある。
「そうさせて頂きます」
ヴィアールの戦いの真相が分かってスッキリしたセリスなのだが。将来的にその余波と言うか流れ弾を食らって酷い目に遭わせられる事を今のセリスに知る術は無いのだった。
「どうじゃ?満足したか?」
「はい!ありがとうございました」
「一応、ヤニックには「セリスが公爵になるのに必要な知識は儂が教えておいた」と伝えておくわい」
「それはやめて下さい!お願いします!」
これにて魔王バルドルによる授業は終了したのだった。
一仕事終えた魔王バルドルは、いつの間にか寝ていたセリスの妹達と一緒に夕飯まで爆睡したのだった。
「ほれ、もっと食え」
「あー」「うまー」「まー」
自分に出された料理を丁寧に細く刻んでドンドン妹達の口に放り込む魔王バルドル。
親鳥が雛に食べ物を与えている様にしか見えない。
「どう見てもただのお父さんじゃん・・・」
子供に優しい父親にしか見えない魔王を見てセリスは仄かな恋心を・・・抱く事は皆無だった。




