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魔法学院の留年生、基礎を学びすぎて最強です  作者: 雨合羽


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ep,1 留年生

「君は留年だ!」


俺は、何度聞いたかわからない言葉を浴びせられていた


「研究に戻っていいですかね」


「よくない!」


そう言うと、学長は顔を真っ赤にした


「なぜ君は卒業しようとしないんだ! 君の作った魔法が素晴らしいことくらい、私だって理解している! だが、上層部は利用価値がないとして卒業を認めようとしないんだ!」


「そうですか」


「そうですか、じゃない! 君は自分で新しい魔法を生み出すという卒業条件を満たしている! それなのに、いつまでもここに留めておくわけにはいかないだろう!」


「じゃあ、卒業させてくれればいいのでは?」


「だから、それができれば苦労はしないんだ!」


血圧上がるぞ、このじじい


「はぁ……そういうわけで、君の卒業条件は今日から変更される」


「は?」


そう言って学長が手を振ると、俺の目の前に一枚の書類が運ばれてきた


そこには、複数の生徒の名前と成績が記されていた


「その書類に書いてある生徒たちの卒業を手伝ってあげてはくれんか」


「……俺が?」


「そうだ」


学長は深いため息をついた


「上層部のお偉いさん方の子供たちなんだが、いかんせん卒業できるほどの見込みがなくてな」


「それを俺に押しつけるんですか」


「人聞きの悪いことを言うな。君の新しい卒業条件だ」


「さっきまで卒業条件を満たしてるって言ってませんでした?」


「だからこそ、特例なんだ!」


いや、知らんが


俺は書類に目を落とした


そこに並んでいるのは、成績不振、実技試験不合格、魔法制御能力不足……


見事なまでに問題児ばかりだった


「ちなみに、全員を卒業させれば俺も卒業できるんですよね?」


「もちろんだ」


「途中で一人でも脱落したら?」


「……その場合は、君の留年が確定する」


「帰っていいですか?」


「まだ説明は終わっておらん!」


研究に戻りたいだけなんだが


どうして俺が、他人の面倒まで見なきゃならないんだ


「わしがわざわざ上層部にかけあって実現させた、特例中の特例なんだぞ!」


学長は机を叩いた


「君の研究や魔法には驚かされることばかりだ! わしだって、君が成し遂げたことの価値を理解しているつもりだ!」


「はあ」


「なのに君は、研究ばかりで卒業する気がまるでない!」


いや、研究がしたいから研究しているんだが


「いいか、君が作り上げた魔法は、わしには理解できない部分も多い。だが、それが価値のないものだとは思っておらん」


学長は一度言葉を切り、深く息を吐いた


「だからこそ、こんな条件を通すために頭を下げて回ったんだ。いい加減、卒業しなさい!」


……このじじい


「わかりましたよ、詳しい資料研究室に送っといてください」


そういって部屋を出た俺はため息が止まらなかった


研究室へと向かう途中教員とすれ違うたびに腫れものを扱うような目で見られる


「慣れたもんだな」


そう思いながら研究室へと入る


「アーク、送られてきた資料をまとめてくれ」


『かしこまりました。』


いつも通りの返事


さて、どんな問題児が待っているのやら


『送られてきた資料を確認しました』


「それで?」


『生徒は全部で七名です。そのうち六名は、世間で名を馳せる権力者たちの跡取りのようですね』


7名のうち6名が権力者の子供か


面倒なことになりそうだな


「残りの1人は?」


『データベースに該当する情報がありません』


「名前すらないのか?」


『いえ、名前は記載されています。ただし、身元に関する情報がほとんどありません』


「それで、成績は?」


『基礎魔法の理論を理解できていないようです』


まあ、珍しい話でもない


「それだけか?」


『いえ。本人は、理解できない力を使いたくないと主張しているようです』


「……ほう?」


『「理解していないものを使うつもりはない。理解できていないのに、魔法を生み出すことなどできるはずがない」と、学長に啖呵を切ったそうです』


俺は資料に目を落とした


理解できないから使わない、か


普通なら、理解できなくても使えるように努力するものだ


だが、こいつは違うらしい


「アーク、その生徒の資料を詳しく調べておいてくれ」


『かしこまりました。興味を持たれたのですか?』


「いや」


俺は椅子の背もたれに体を預けた


「少し気になっただけだ」


♢


この世界は普通じゃない


ちょっと強い魔法が使えるからと、おごり高ぶる権力者


新しい魔法を生み出し、学園の評価を上げ、金を稼ぐことにしか興味のない上層部


そして、そんな連中に従うしかない学長


そんな学長に、俺は4歳のころ拾われた


それ以来、魔力を増幅させる方法や基礎魔法を教わってきた


おかげで、俺は学園の期待の星だった


……あのころは、だが


基礎魔法の根底に疑問を持ち、既存の理論を疑い始めた


それから俺は、周囲の期待とは違う道を歩き始めた


そして今も、卒業できないままこの学園でくすぶっている


「さてと」


行くか


研究室を出て、中庭のベンチへと向かう


資料によれば、そいつはいつもこの時間に中庭にいるらしい


ベンチに座り、手元の本を読んでいる生徒


周囲には誰もいない


俺はそいつの前で足を止めた


「お前か? 基礎が理解できなくて魔法を使えないとか抜かしてるやつは」


「あんた誰? それに私は使えないんじゃない。使わないの、悪い?」


いいや? 何も悪くないさ


理解できないものを、理解したふりをして使う


それが当たり前になっているこの学園で、こいつは自分の考えを曲げていない


周りからどう思われようと、自分が納得できないものには手を出さない


……なるほど


俺は思わず笑みを浮かべた


「気に入ったよ」


「は?」


「たった今から俺はお前の師匠だ。ついてこい」


「……はぁ!?」


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