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2ー046 ~ ピッツァと氷像

 「わざわざ送ってもらって助かった。ありがとう」

 「ありがとうございます」


- いえいえ、大した手間ではありませんので。では僕たちは川小屋に戻りますね。


 ハムラーデル防衛隊西側の拠点に2人を降ろして、川小屋に戻って夕食だ。


 ハルトさんたちは防衛隊東と西で、それぞれに大岩の近くへ拠点を移す話をしてから、ハルトさんはハムラーデル王国の王都へ防衛隊の何人かと一緒に行って報告と今後のことを話し合うんだそうだ。

 カエデさんは大岩拠点に防衛隊の人たちと来ることになるんだそうだ。


 ああ、だから大岩のところの小屋、残しておいてくれって言われたのか。

 だったらもうちょっとちゃんと作ればよかったかな、お風呂とか。

 まぁ、今後も寄ることがあるだろうし、その時でいいか。


 あ、考えてみりゃ作ったのリンちゃんだった。






 川小屋に戻った。


 ロスタニア方面のことをそろそろ考えないと、って思ったけど、ロスタニア方面のことは、連絡隊が戻ってきて報告を受けてからのほうがいいと思うんだよね。


 すると、ハムラーデルの防衛隊が大岩のところに駐屯して陣を張るまでに、中央東8と、その南の収束地まで処理しておけばいいんだから、それなりに余裕はあるな。


 だったらまぁ、明日1日ぐらいは休養にしてもいいかもしれない。


 そんなことをリビングのソファーに(もた)れて考えてたんだけど、誰も居ないな。

 リンちゃんはお茶を淹れてくれてポットを置いたまま、裏のほうに…、あ、みんな居る。

 ああ、洗濯か。なるほど。


 今日の夕食、何かなぁ…、そういえばリンちゃんが『スパイダー』を受け取りに行ったときに補充した食材がどうのってリストがあるとかなんとか言ってたっけ。


 取り出してみてみる。

 よかった、俺でも読める文字で書かれてたわ。

 えーっと、うわー、どっさりあるなー、本来こういうのだけでも結構な出費なんだけど、いいのかなぁ、いつもタダでもらってる気がして落ち着かないなー。


 しかしベーコンとかはそのままの名前だからわかるけど、野菜類や果物類は名前見ても何なのかわかんないな…。


 キッチンに移動して、試しにひとつ取り出してみた。

 細長くてキュウリの太いやつみたいな…、なんだっけ?、赤いズッキーニか?


 包丁でちょっと切って、(かじ)ってみたら、あれ?、トマトっぽい酸味。

 汁気もある。つまりこれ細長いトマトか?、あはは、今まで料理に使われてなかったのでわかんなかったけど、あるじゃんトマト。いや、トマトじゃないけど。


 チーズ、ある。香辛料、ある。小麦粉、ある。ならばピッツァだ!

 おお、俄然やる気がでてきたぞ!


 石窯?、そんなもの作ればいいじゃないか。土魔法で。






●○●○●○●






 集会所でピザ作ったときはドライイーストとかオリーブオイルとか使ったんだけど、そんな都合のいいものはないので、以前街で買っておいたエールと食用油を使うことにした。

 ピザ職人じゃないので土魔法で作った平たい台の上に同じく土魔法で作った棒で伸ばすだけの素人仕様だけど、まぁなんとかなるだろう。


 石窯も火魔法で温度調整してしまえば薪や炭を使わなくてもいいし。

 魔法あると楽だなー、ハハハ。


 「あ、タケルさま、何を作ってらっしゃるんです?」


- ああ、ピッツァっていう、元の世界の食べ物なんだけどね。


 「そうですか、何かお手伝いしましょうか?」


- んじゃその生地をちぎって丸めて伸ばしてくれる?、こんな感じで。


 1つ分を、寝かせていた生地からちぎって、軽く丸めて小麦粉を撒いた台の上に置き、ぐにぐにと広げて棒で伸ばした。


 「なるほど、わかりました」


- 伸ばしたら横の台に乗せて、刻んであるチーズをぱらぱらかけて、具を並べれば、あとは焼くだけなんだ。こんな風に。


 「わかりました」


- そろそろいいかな、1枚焼けたかも。


 柄のついたヘラみたいなのを手に持って、石窯の中で焼けてるピッツァをざっと掬って、む、掬って、む…、掬って、取り出して大皿に乗せる。

 これも土魔法で作った。だからちょっとだけ身体強化しないと重い。


- こんな風になる。


 ピザカッターがないけど、風魔法でスパッと8分割。


- 熱いから気をつけて。手でこうして持って、フォークで支えながらくるっと畳んで、パクっと。


 こっそり火魔法で適温に下げた。じゃないと火傷するからね。

 ズルくないよ!


- うん、美味しい。ちょっと端のとこコゲたけど、まぁ及第点かな。


 そう。日本のデリバリーピザみたいに具がタップリ乗ってるものじゃないし、薄焼きの具が少なめのピッツァはこうして食べるんだと聞いたことがある。


 オリーブオイルじゃないのが惜しいなー。


- リンちゃん、こういうクセのない食用油じゃなくて、しつこくなくて爽やかな香りがするような植物油はあるかな?、柑橘系じゃなくて。


 「うーん、難しいことを仰いますね…、いくつか並べますので、選んでくださいますか?」


 並べてもらった中に、それっぽい近いのがあったので、それを使わせてもらうことにした。

 石窯のサイズ的に2枚ずつしか焼けないけど、まぁ、いいだろう。

 さっきは1枚だけ試しに焼いただけなんだけどね。


 そうして2枚が焼きあがる頃に、3人が洗濯を終えて入ってきた。


 「わ!、ピザですか!、懐かしーぃ!」

 「聞いたことはありますが、食べたことはないんですよ、楽しみです」

 「とてもいい匂いですね、美味しそうです」


- どんどん焼きますので、手を洗ってテーブルで食べてください。熱いうちに!


 「「「はーい!」」」


- リンちゃん、エールの冷えたやつがあるなら出してあげて。無ければいいけど。


 「大丈夫です、冷蔵庫にあります」


 あはは、準備いいなぁ…。






 大好評だった。また気が向いたらやってもいいな。

 できれば食べるほうに回りたい。


 「元の世界のデリバリーのと違って、イタリアンのお店で食べた本格的なのと同じで美味しかったです。タケルさん料理上手ですよねー、前から思ってましたけど」


- ひとり暮らしをしてたし、町内会のイベントでよく調理する側をやらされてたからね。


 「へー、そうだったんですか」

 「チーズが熱くて口の中を少し火傷しちゃいました、でもすっごく美味しかったです、ごちそうさまでした」

 「ホーラードにも似たような料理はあるのですが、パンの上にチーズと具を置いてオーブンで焼いたもので、これとはかなり違いますね、エールとの相性がとてもよかったです、堪能しました」


 生地ごと焼くからねーこれは。パン生地のピッツァもあったけど、小麦粉がそもそも違うのでよくわからん。


 って、メルさんも飲んだの?、前も思ったけどメルさん酒飲んでいいの?

 この世界のアレだからいいのかも知れないけど、絵面がどうみても小学生だから酷いんだが…、慣れるしかないんだろうな…。


 と、とにかく皆さん笑顔で満足してくれたようだ。リンちゃんも美味しいって言って結構食べてた。


 「里にも同様のものはありますが、これほど簡潔で手軽にできて、バリエーションも豊富に考えられるものではありませんでした、早速連絡して森の家で再現して広めなくては…っ!」


 そんな気合いれなくても…。

 リンちゃんが特に気に入ったのは、チーズマヨ野菜燻製ピッツァだった。

 もう目がキラッキラして食べまくってたよ、ハハハ。


 ま、たまには、こういう風に元の世界の料理のニセモノを作ってみるのもいいかな、なんて思った夜だった。






●○●○●○●






 翌日、やっぱり今日はダンジョン処理に行かずに、適度に訓練したりしゃべったりして過ごすことになった。


 もうメルさんなんて土壁を自分で作って、槍の使い方を試したりするようになってるし、ネリさんやサクラさんも、土壁つくって無詠唱の魔法を練習したりするようにまでなってるからね。

 みんな成長すごい早いね…。他人(ひと)のことは言えない俺だけどさ。


 勇者補正ってやつだね。


 メルさんは幼少から魔力を鍛え続けてきたようなもんだから、さもありなん。

 別に王女補正じゃないはず。






 それで、皆がそれぞれ訓練してるのを見ながら、やっぱ夏になりつつあるから外は暑いわけで、なら、室内みたいに氷でも置いておけば、少しは涼しくなるんじゃないかと考えたわけだ。


 水魔法と火魔法(温度を下げる側)で、魔力操作しながら形を作り上げていけば彫刻しなくても氷の彫像ができるんじゃないかなと。


 氷の彫像かー、面白そうだ。魔力操作の訓練にもなるんじゃないか?、(りょう)もとれるし。いっちょ作ってみっか。


 何にしようかな?、リンちゃん……、ってのは何だし、サクラさんが剣を居合いみたいに構えてるところも良さそうだけど本人はともかく、また他がうるさそうだ。

 俺的にはメルさんが馬で、んとナポレオンがやってたみたいな有名なポーズ、ってのを作ってみたいんだけど、氷だと脚部がやばそうだ。方法はあるかもしれないけどね。


 それでふと、アリシアさんって手もあるなと思ったんだけど、よく考えてみたらアリシアさんのイメージって最初のスゲー眩しかったのしかなくて、見ながらなら作れそうだけど、明確なイメージってのがいまいちはっきりしないんだよね。

 だってまだ2・3度しか会ってないし。


 なら、ウィノアさんがいいんじゃね?、って思った。

 え?、風呂で毎日見てんだよ、そんでもっていつも半透明だから氷でも違和感がないので作りやすい。

 ってことでウィノアさんの氷像を作ってみた。


 魔法スゲーのな。みるみるうちにできたよ。等身大ウィノア氷像。


 うゎっ、メルさんが跪いて拝みだした、やばい、失敗だったか?

 

 でもウィノアさんは胸飾りから『わぁ♪、うふふ♪』って声でて喜んでるっぽいし……、あ、あれ?、喜んでるのウィノアさんだけ?、他は何か不機嫌っぽいような雰囲気が……、メルさんはいいとして。


 しょうがない!、リンちゃんとサクラさんも作るか!






 というわけで作った。

 リンちゃんの氷像にはお気に入りのハートと花柄のいつものポットを持たせてみた。

 透明だから柄よくわからんなこれ。

 そんで笑顔にしておいたんだけど、『タケルさまにはこう見えているのですね…』などと口ではいいつつもまんざらでもなさそうだ。


 サクラさんの氷像は、さっき考えてた袴姿で居合いの構えみたいなポーズにした。

 ちょっと袴のディテールが微妙だけど、下半分が安定した形なので氷像としても実に良い。まぁまぁの出来ってところかな。


 サクラさんはそれを見て、胸元で手を組んで感動してるようなうるうるの目になってたけど、急にどっか走って行っちゃった。

 何だろう?、何かまずかったのかな?


 「ねーねータケルさん~、あたしのは?、あたしのは?」


 とか考えてたらネリさんに袖を引っ張られた。え?、作れって?、しょうがないなー。


- そうですね、一人だけ無いのもアレですし…。ん?、あっちの空に何が?


 空を見上げて指をさしてるネリさんの視線を追って空を見上げたけど、青空しかない。


 「違いますって、ポーズですよ、ポーズ。このポーズで作ってください!」


 何だろう?、何かどっかでみたようなポーズが混ざってるような、ただ上を指差して見上げてるだけなような…。ま、いいか。


- いいけど、服装はそれでいいの?


 「はい!」


 いい返事だなー、よし、せっかくだしキリッとした表情で……、ネリさんのキリッとした表情ってどんなだっけ…?


 あ、デコピンされて額を押さえて涙目で笑ってるのしか思い浮かばないぞ?、やば、もう魔法発動しちゃって、ああぁ……。


 「……タケルさん?、どうしてそんなポーズなんですか?、酷くないですか?」


- イメージを思い浮かべようとしたらついこうなっちゃって……ごめんなさい。


 「目の前にポーズしてるあたしが居るのにですか!?、……作り直してください!」


- はい…。


 それでその氷像を溶かそうとしたら、


 「待ってください!、まさかそれを壊そうとしたんじゃないでしょうね?」


- え?、だってこれ失敗作だし。


 「新しく作ればいいじゃないですか」


- あっはい。そうします…。あ、ポーズお願いします。


 「はーい!」


 何だか迫力に押し切られたような気がする。でも今回は俺が悪いんだし。

 というわけで今度こそとばかりにネリさんをよく見て、周囲から目で見て、と。


 「はっ、そんなじろじろ見回さないでくださいよ!、は、恥ずかしいじゃないですかー!」


- そんなこと言ったって、見慣れないポーズだし、しっかりイメージしないとできないんだからしょうがないじゃないですか。


 「サクラさんの袴姿なんて見たことないですよね?」


- あれは想像図だから、袴の細かいところが結構いい加減なんだよ、ネリさんの服装はいつも見てるものだから、その分ちゃんとしないと。


 「そ、そういう事なら、じっくり、見て、見ていいです…」


 どうして赤くなるんだよ…。そんな意識されたらこっちも意識しちゃうじゃないか。

 そう思ってしまうと、空を見上げてるネリさんの金色の後ろ髪が揺れて、光がきらめいてきれいだなとか思ってしまうじゃないか!、いかんいかん。今度は真面目にやらないと。


 なんとかできた。

 どうしてこう精神的疲労感があるんだろう…、軽い気持ちで涼をとろうってことだったのに…。


 はぁ…、と深い溜息をついて、テーブルに用意されてる氷が浮かんだお茶を飲む。


 ふと見るとウィノア氷像の前でまだメルさんが拝んでたよ。


 それはいいけど、氷像だからそのうち溶けるよ?






●○●○●○●






 風呂から出て、さて今日の夕食は何だろうな、匂いからするとスパイシーな肉料理かな、って思いながら外に出たら、いきなりネリさんに詰め寄られた。


 「タケルさん!、どうしてあれだけは溶けないんですか!?」


- え?


 何のことかと思ってみると、ウィノアさんの氷像だけ溶けずにそのまま残ってた。

 他のは半分ぐらい溶けてるから元が何なのかわからない氷の塊になってるのに…。


- あれ?、ほんとだ。なんで?


 「ふふふ、信仰の力です。あ、お風呂次は私ですね」


 とか言いながら川小屋――もう旅館ってぐらいのサイズだけど――に入っていくメルさん。


 「メルさんずーっと祈ってたんだよ?、だから溶けなかったのかな…」


 え?、あれからずっと祈ってたの?、って、維持しつづけたってこと?


- 魔力操作と火魔法(温度操作)で維持してたんですかね…、ネリさんもそうやって維持してれば溶けなかったんじゃないですか?


 「えー、そんなに魔力操作ずっとできないよ…、他の訓練だってしてたし、晩御飯のしたくだって手伝ってたし…」


 それは集中力が続かないって意味なのか、時間的にできなかったって意味なのかどっちなんだ?

 それと、それはそんなに口を尖らせて言うことなのか?


- そうかそうかよしよし。


 「また口で言ってるだけじゃないですかそれー!、ちゃんと行動もしてくださいよ!、ほら、ほらぁ!」


 いや、頭をこっちに寄せられても、おっと。


 「ああっ、どうして逃げるんですか!?、もー!」


 そりゃ逃げるでしょ。


- あ、いや、氷像を見てみようと思って…。そういえばサクラさんは?


 「ちぇー、サクラさんなら報告書がどうのって部屋に」


 ちぇーて…。


- そう。んじゃ氷像見てから食事のしたくを手伝うよ。今晩何だって?


 「んー、リン様何か小麦粉こねてましたよ?」


 あれ?、スパイシーな肉料理じゃないのか?、何だろう?、行けばわかるか。


 そしてウィノアさんの像…。

 何だこれ!、全然溶けてないぞ?

 表面にうすーく魔力が…、あ!、これ結界じゃん!


 さてはウィノアさん…。


- これ、メルさんだけの力じゃないでしょ、ウィノアさん。


 胸元に小声で話しかける俺。やっぱ慣れないなぁ…。


 『あまりに良い出来だったので、つい…』


- つい、じゃないでしょ、そりゃ出来を褒められたら作ったものとしては嬉しいですけど…。


 『あまりに熱心に祈りながら維持しようとしていたので、少しだけお手伝いをと…』


- 結界魔法なんてプラムさんのテキストに無いはずなんだからメルさんの魔法じゃないですよね?、少しなんてもんじゃないですよ、やりすぎですって。


 『だって温度維持だけでは表面が溶けてしまうのですよ?』


- それでどうするんですかこれ。まさかずっと残すつもりじゃないでしょうね?、


 『だめですか?』


- だめです。


 『しょぼーん』


 ネリさんじゃあるまいし…。


- こういうのは、溶けていくのが自然なんですよ。こんなことウィノアさんなら言わなくったってわかってることでしょうに…、だから夜の間に溶かしますよ?、いいですね。


 『す、凄く嬉しかったのです…、私の姿をこれほど如実に表現した像は過去になかったので…、儚く溶けてしまうのが寂しくて…、ですから…』


 う…、今度は泣き落としか?、しょうがないなぁ、もう…。


- ですから、溶けないようにと頑張ってたメルさんを手伝った、と?


 『はい…』


 うーん、でも氷像をずっと残すのはちょっとなぁ、いくらなんでも…、ああ、代わりにガラスみたいな素材で作ればいいってことか。ここでやるのもあれだから、河原のほうで、えーっと、ガラス…、水晶、石英、金属を分離したときの応用で鉱物の分離ってできるんじゃないか?

 ちょっとやってみるか…。できなかったらまた考えればいいし。


- うーん…。


 と考えながら河原まで来た。


 土魔法で穴掘って、ウィノアさんに教わった魔法瓶みたいな結界で器を作って…、河原の石ころをざらざら入れて、と。温度を上げて…、確か石英ガラスって石ころ溶かして作るのが古典的方法で、不純物だらけになるとかなんとかだったよな。


 うぉ熱!あっつ!、赤外線放射か、魔法瓶結界じゃだめだな、少し離れよう。


 遠隔で不純物分離…、むっず、きっつ!、えーっと横に土魔法でスペース確保して結界張って不純物流し込んで…、む、まとめると案外少ないな、まぁいいやあとで。

 これって石英ガラスのでっかいレンズとか作れるんじゃね?、いあまぁ使い道ないけどさ。ホント魔法ってヤバいわ。

 そんなこと考えてる場合じゃなかった、集中集中…。


 そんでもって昼に作ったときみたいにウィノアさんのイメージを形にしながら温度を下げていけばいいってことか。


 おおお……、溶けてる石英からウィノアさんが生えてきた。そんで、あ、足りない、やりなおし。


 『あああ…、どうして途中でやめてしまわれたのですか!』


- へ?、素材が足りないので、もうちょっと増やさないとって…。


 『あ、そうでしたか』


 近寄るとめちゃくちゃ熱いので結界操作で周囲の石ころを集めてざらざらと入れた。

 そんでもってまた加熱と分離。

 加熱はいいけど分離は不慣れだからつらいなー、疲れてきた。


 とかなんとか頑張って、できた。

 温度下げて近くでみてみたけど、薄く水色つけたほうがよかったかなぁ?

 でも何混ぜたら色つくのか知らんし、不純物分離が完全じゃなかったのか、あちこちほんのりピンクやらほんのり黄色やらほんのり青やらほんのり緑やらになってる。これ以上は今の俺の技量じゃ無理だからもういいやこれで。


 俺は掘った穴埋めて土魔法で椅子作ってちょっと休憩してるとこ。

 風呂あがりだったのに汗だくだよ、胸元んとこがやけに濡れてるけど汗だよなこれ。

 そよ風が心地いい。


 まさかウィノアさんが感激して()垂らしたなんてことは…、ないだろう。


 ん?、ウィノアさんなら今その像の横で実体化して同じポーズとってるよ。

 そんでちらちらこっち見てる。

 突っ込み待ちだな。たぶん。


- なんで並んでるんです?


 『いえ、何となく♪』


 嬉しそうだなぁ…。


- 喜んでもらえたなら重畳です。他の人に見られる前にどっか持ってってくださいね?


 『はいっ♪』


 不純物がほんのすこし混じっているせいで部分的にうすーく色がついてて違うようになってしまった。好意的に言うと虹色とも言えるが、俺からすると(まだら)色。


 そんな石英ガラスの透明な像の周囲をくるくる踊る、像と同じ姿の半透明な精霊…。

 その前で石の椅子に座ってもたれてる俺。


 あ、晩御飯の準備を手伝いに行くんだった。

 その前にちょっと身体の汗をどうにかしないとな。水魔法で球体つくってくぐるか。


 『あっ、お清めなら私が…!』


 と聞こえた瞬間どばーっと包まれた。

 うぇっ!?、おおう、あっ、アッー!


- あっ、ちょ、ストップストップ!


 『はい?』


 アナタ イマ ナニ シヨウトシマシタ…?


- 急いで晩御飯の手伝いに戻らなくちゃいけないんですよ。


 『もう、お礼ぐらいさせてくださいな』


- そういうのはいいですから。


 『しかたありませんね、はい、終わりましたよ』


 はやっ、さっぱりきれいになって乾燥までしてくれたよ。


- ありがとう。さっぱりしたよ。


 『こちらこそ、素晴らしい像をいただきましてありがとうございます』


 いつもほんのりほわほわした淡い光が周囲に浮かんだり消えたりしてるんだけど、それの光量が当社比300%ぐらいになってるよ。

 嬉しそうだなぁ…。


 あ、日が暮れてたからか。

 やば、ご飯のしたく手伝うって言ってたのに!






 「タケルさま、河原で何してたデスか?」

 「すんすん、やっぱりお風呂上りのタケル様からはいい香りがしますね」

 「どれどれ?、すんすん、あ、ほんとだ!、何で何で?、同じ石鹸だよね?」

 「ほんとですね、花のような香りがしますね?」


 ちょ、全員で迫ってこられるのは怖いんだけど…!




20180715:ディティール⇒ディテール 修正です。

20180816:分かりにくい表現かもしれない部分を変更。

 訂正前)ハルトさんたちは防衛隊東西にそれぞれ大岩の近くに拠点を移す話をしてから、

 訂正後)ハルトさんたちは防衛隊東と西で、それぞれに大岩の近くへ拠点を移す話をしてから、

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2019年05月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
なるほど。わかりません。
2020年01月にAI分析してもらいました。ファンタジーai値:634ai だそうです。
同じやん。なるほど。やっぱりわかりません。
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