彼の事情と魔女事情
ちょっとずつ更新していきます。
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愛するママへ
お客人が目を覚ましました。
彼の話では、魔女がシュタット王国に呪いをかけたらしく、
私たちがその犯人に思われてたようです。
とりあえず、魔力の質を調べて冤罪を晴らそうと思います。
特に因縁のない私が行った方が良いと思うので、ママは森で待っててください。
ママの愛するロゼッティより
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「うん、こんなもんかな」
すっかり旅の準備を終えたロゼはセビリアーナへの手紙を書き、ダイニングテーブルの上へ分かりやすく置く。
少し大きめのリュックの中には、衣服以外にも厳選された魔導書や魔道具が入っている。
逆に荷物の少なかったノヴァが、二人分の食料を持ってくれることになった。
ここは素直に甘えることにする。
「じゃあ出発しましょう。夜になる前に、森を抜けてシュタット王国内に入りたいし」
王都までは距離があるので、まずは森近くの村へ向かうことにする。
森を歩きなれているロゼは、軽快に森へ足を踏み入れる。
一方ノヴァは、狼に襲われたばかりだということもあり、少し及び腰だ。
「よく、こんな森の奥で暮らすことが出来るな」
ルボア家が見えなくなってから、ふとこぼれるような声でノヴァは問う。
「慣れちゃえばいいところだよ。静かだし、資源豊富だし。魔法練習しても危なくないし」
「でも狼いるだろ」
よっぽどトラウマらしい。
「そりゃ小さい頃森に入ってたら確実に食べられてたけど、ママが魔法で守ってくれてたからね。今は私も魔法が使えるから、襲ってこないし」
賢い獣は、決して自分が勝てない相手を襲ってこない。
この森の狼たちは、ロゼが彼らより強いことをよく知っている。
「ちなみに熊も出るよ。出たらやっつけてあげる。熊鍋食べよう」
「熊!?」
ロゼの言う通り、森では狼や熊に襲われることはなかった。
道案内もあるおかげで、まだ日が沈まないうちに森の出口付近まで来ることができた。
村では宿屋を借りようとなった時に、ノヴァはふと気付く。
「…私たちは、兄妹に見えるだろうか」
背はノヴァのが数センチ大きい。だが、顔立ちも髪や瞳の色も別々だ。
そうなると兄妹で通すのは難しいだろう。
「んー…じゃあ貴族のお坊ちゃまと使用人ってことにしようか。その方が無理ないかも」
ただでさえノヴァは良い身形をしていて、ロゼは平服なのだ。
お忍びで来た貴族のお坊ちゃんとその侍女という方が分かりやすい。
宿屋の主人もそれに納得し、ロゼはホッとする。
それぞれの部屋に荷物を置き、食事をするために近くの酒場に入る。
因みに生まれて初めて森の外へ出たロゼは、きょろきょろと世話しなく辺りを見渡している。
「明日からは、ここから出ている乗合馬車に乗る。3日も揺られれば、王都にたどり着くだろう」
そこまで遠くなかったことにロゼは感心する。
ノヴァが持ってきてくれた地図には、シュタット王国とサーブルク王国周辺が詳しく書かれている。
「なぁ、聞いたか?シュタット城に出入りしている商人から聞いたんだが、どうやら城は今厳戒態勢らしいぞ」
ふとした会話が、二人の耳に入る。
ノヴァは暗い表情へと変わる。
「何でも、どんな奴らも門前払いを食らってるらしい。どうやら王様じゃなくて、宰相殿の名前で厳戒令が敷かれているらしいが…」
ロゼがちらりとノヴァを見ると、無表情なノヴァがいる。
その間に頼んだ料理が運ばれてきて、ノヴァは静かに食事に手を付ける。
「…今は、パーティ当日たまたま領地に戻り留守にしていた宰相殿が政を動かしている。彼がいなかったら、この国はそうそうに瓦解しているだろうよ」
「そうなんだ。よかったね、その人が無事で」
だが、ロゼは逆に気になってしまう。
そんな偶然があるんだろうか。
これには何か裏があるんじゃないか、と。
「それにしても、ノヴァはただの見習い騎士じゃないの?というか、何でノヴァが魔女探ししてたの?ノヴァもパーティにいたの?何でノヴァだけ無事なの??」
疑問に思っていたことを、ロゼはここで一気に吐き出した。
こんなに一気にしゃべるロゼを見たことないノヴァは少し驚いた顔をしたが、質問に真摯に答えた。
「…私は確かに騎士見習いだ。パーティにも出席していた。何故かあの日城にいた人間の中で唯一、私だけ魔法が効かなかった。だから自分で魔女を探す事にしたのだ。責任も感じた。ロゼも私には回復魔法が効かないと言っていたが、もしかしたら、私は魔法が効きにくい体質なのかもしれないな」
その言葉にロゼは納得する。
魔法が効きにくい体質というのは聞いたことがないけれど、魔法があるんだからその逆があってもおかしくない。
「…そっか。魔法が効きづらいのがいいこともあるわけだね。魔女の私としては複雑だけど」
魔法を扱う者からすれば、ノヴァは天敵と言える。
かくいうロゼも、ノヴァのせいで自信を叩き折られた。
「じゃあ、私からもいいか?…その、魔女というのは、どういうことが出来るんだ?シュタット王国には魔法を使う類のものはいないんだ」
実のところ、魔法を使用できる者は少ない。
理由としては、まず、魔法を学ぶには独学は厳しい。
本を読んだだけでは理解はできないものだ。
先人に教えを乞うて学ぶ必要がある。
ロゼにはセビリアーナという最高の師匠がいた。
特に一子相伝というわけでもないが、魔法使いは人にわざわざ教えようとするタイプの人間じゃない場合が多いらしい。
それこそ親から子へ、という場合や、何らかの理由がある場合だろう。
「魔女、って一括りにしちゃうけど、得意分野は多岐にわたるよ。冒険物語みたいに攻撃魔法が得意な魔女や、呪い専門の魔女、占い師やまじない師っていう人もいる」
名称だけでも、魔女・魔法使い・魔導士・占い師…と、様々だ。
「なんでもできるって思う人もいるみたいだけどね。私は占いとか得意じゃないし、空も飛べない。得意なのは薬作りだから、薬師って言っても通じるかもね」
そう言ってロゼは自身が持っていた薬瓶をノヴァに見せる。
「ママが近くの村に卸してるんだけど、効能が高くて、結構評判いいんだって。怪我をした貴方に使ったのも私が作った薬なんだよ」
瓶にはロゼが作ったと分かるように、魔法でバラのマークを入れている。
魔法でつけているので、ロゼ以外にはこのマークを入れることは難しいので詐称することも出来ない。
ノヴァは、ロゼの薬瓶を持ち上げる。
「へぇ…。確かに綺麗な色をしている。騎士団で使っている薬は濁っているし、とても苦かった」
飲んでもいい?とノヴァが聞いてきて、ロゼは「いいよ」と答える。
「ん…。甘いな。それにいい香りがする」
「作り方は残念ながら企業秘密です!他にも風邪薬とか、酔い止めとかも作れるよ。あぁ、媚薬とか惚れ薬の類もあるけど、あんまりおすすめはしないかな」
ロゼがそういうと、ノヴァはブッと薬を吹き出した。
「もったいない!それ一つで銀貨3枚!」とロゼはノヴァをなじるのだった。
この話までお金の単位を考えてませんでした。
金貨1枚=10,000円
銀貨1枚=1000円
銅貨1枚=100円
青銅貨1枚=10円
私が分かりやすい単位にしました。ええ、私が。




