その31 あるエスパー少女の回想 柏
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半年前
エスパー部隊の佐藤柏は、荒川武威に訓練されているときに、思いのほか成果が挙げらなかった。
柏は武威が休憩をしている時に、そっと近づいて話しかけてみた。
「Vさん、自分は何ていいますか・・・最近上手く気持ちが乗らないんですが、Vさんはそう言うときはどうするんですか?。」
武威は傍にあったベンチに腰を下ろすと柏に言う。
「なんだい、なにか気なる事でもあるの?」
すると柏は思い切っていってみた。
「実は・・・ESPを使おうとすると、仲間だった畑野君を殺してしまたことを思い出してしまい、力が萎縮してしまうというか・・・怖くなってしまうんです。忘れるコツとか知っていたら教えて欲しいのであります。」
Vは優しい目で頷く。
「その話は聞いているよ、長井に逆らえなくてしょうがなかったと。辛いだろうが、忘れるのではなく、乗り越えるしかない。」
それを聞いて柏はガッカリした顔をした。
「いえ、Vさんみたいに強い人に聞くのは間違いでした。なんとか忘れて見ます・・・。」
「ちょっとまって。それは違う。俺も自分の行動に怯えて何も出来なくなたことがある。すこし状況は違うけど、自分の臆病な過ちが怖くて戦えなくなったのは一緒だと思う。」
それを聞いて、柏は驚いた。
「え?Vさんが臆病だったんですか?。」
頷き、Vは語りだした。
「ああ、俺がまだ対麻薬組織部隊にいたときにな、需要な証人の護衛についたんだ。そいつは麻薬組織のボスですごい悪人だったんだ。法廷でのそいつの証言は重要で、巨大な世界的なルートを潰せるほどに重要なものだった。だが護衛中に俺はだれかが離れたビルから狙撃しようとしていることに気づいたんだ。でも俺は・・・身を挺して証人を守らず・・・・避けてしまったんだ。」
「え?狙撃の弾丸を避けたんですか?。」
「ああ、一瞬迷ったよ。避けては駄目だって。でもな、ひどい悪人を守るために死ぬのが本当に怖くなったんだ。だから俺は狙撃ルートから身を避けてしまった。次の瞬間、そいつは頭に穴が開いて死んだよ・・・。それが俺が対麻薬組織の部隊を除隊して、サラリーマンになった理由だ。」
柏は、初めて聞く武威の失態に驚いた。
だれもがロンリーVの伝説を偉大だと語るのに、まさかそんな初歩的な失態をしているなんて夢にも思わなかったからだ。
柏は聞いた。
「それで・・・どうしたんですか?。」
武威は力なく笑う。
「どうにも出来なかったよ、友美と出会うまではね。
でも血の渋谷で友美と出会い、友美が俺の力が必要だといってくれたんだ。
俺はアレで救われた。友美を守り通すことで、やっとあの自分の呪いから開放される気がしたんだ。
そうしたら、いつのまにか戦えるようになっていたよ。
忘れることは出来なかった。乗り越えるしかないんだ。」
柏は、この時初めて、武威を生身の弱さをもつ人間だと感じた。
そして不思議な話だが、この武威の弱さを支えて見たいと思うようになると、また元通り強大なAクラスのESPが使えるようになったのだ。
その思いは、運命に苦しんでいる友美もエスパーの仲間も、みんな助けたいという気持ちにまで広がっていた。
もしかすると、柏はその時すでにマインドコントロールのプログラムを破っていたのかもしれない。
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