その17 きれいに忘れた用事
リビングでくつろいでいるお姉ちゃまを見ていたら、私は凄く恐ろしいことに気づいてしまった。
こんな恐ろしいことを、なんで今まで誰も気づかなかったんだろう。
房代さんと芽衣は沢山の朝ごはんをテーブルに並べてくれているけど、この恐ろしい事実は、多分食事の前に言わないといけない気がする。
「ねえお姉ちゃま、お姉ちゃまの髪がワックスつけたみたいにテカテカだけど、最期にお風呂に入ってのはいつ?。」
お姉ちゃまは、言われて眠たい目で頭をコリコリ掻く。
「いつもVさんがお風呂に入れって言っうから入るから、Vさんが居た日が最後にお風呂に入った日かな。」
やっぱっりいいいい!
するとキッチンから房代さんが血相を変えてこちらに来た。
そしてお姉ちゃまの頭を触ったり匂いを嗅いぎだす。
「冬美様!今すぐお風呂に入ってください!。
それまで食事は待ちますから。女の子なんですから5日間もお風呂に入らないなんて駄目ですよ。
最近は私が言わなくてもお風呂に入っていたんで油断してしまいました。私やVさんが言わなくても毎日お風呂に入らないと駄目です。さあ、早くお風呂へ。」
食事前に言ってよかった。
これで気持ちよく食事が出来そう。
芽衣はESPで沢山のお皿を浮かせて持ってきながら、いつもの困った顔。
「冬姉は変なところが抜けてるよね。昨日、国持兵団研究所のシューターで密着した時に少し臭う思ったけど、やっぱりお風呂に入ってなかったんだ。」
私もそのとき気づいたのですよ。
お姉ちゃま、ずぼらすぎなんだから。どんだけVちゃま頼りで生きてたるんだか・・・。
いや、Vちゃま頼りで生きていたのはお姉ちゃまだけではないか。
私も、芽衣も、房代さんさでさえそうだったんだもの。
多分、私達はすでに5人家族で、全員でVちゃまに頼って生きていた。
Vちゃまが居なくなって、私達家族は、いっぱいずぼらになったのがその証拠だね。
芽衣はテレビの電源を切らないで寝ちゃうし、房代さんは夜の献立が決められなくなった。
お姉ちゃまがお風呂に入らなかったのは論外だけど、私も脱いだ服をそのままにしちゃってるかも。
Vちゃま・・・・Vちゃまがいないと私達はだめだな。
そこに頭を拭きながらお姉ちゃまがもどってきました。
「風呂に入ったぞ、食事にしよう」
お姉ちゃま、お風呂入るの早!
房代さんはすぐにお姉ちゃまの体をチェックして、一応石鹸で体を洗ったのを確認する。
「冬美様はカラスの行水ですね。もっとしっかりお風呂に入ったほうがいいですよ。」
「でも今日はVさんが100数えるまで出てくるなって言わなかったから。」
「そんなことまで指示されていたんですか。しょうがありませんね、今日からはまた私が入るときに一緒に入りましょうね。」
「わかった、声をかけて。」
お姉ちゃま・・・まさか逃亡生活中は、いつも房代さんにお風呂に入れてもらっていたの?
なんか、ここまで来ると呆れるのを通り越して、可愛いとさえ思えるなぁ。
そして全員席に着いた。
ヨシ食事だ!今日もアゴをはずして一皿を一口で食べちゃうぞ!。
すると私の横から、奇妙にユックリな声が聞こえました。
「わーい、今日もご馳走ですね。お腹いっぱい食べちゃうぞ!。」
わ、びっくりした、いつのまに夏子さんがいたんだろう。
「な、夏子さん!いつからいたんですか?」
「え?冬美ちゃんがお風呂から出てきたあたりからですよ。友美ちゃんは気づかなかったのかな?。」
そういいながら、夏子さんはニコニコしながら私のほっぺを人差し指で、むにっと押す。
芽衣も房代さんも驚いた顔をしているところを見ると、この二人も気づいていなかったっぽい。
冬美お姉ちゃまは、そもそも夏子さんの登場に興味が無いらしく、ウズウズしながら房代さんの『召し上がれ』の声を待っているみたい。つまりお姉ちゃまも気づいていないっぽいです(今も)。
「夏子さん、たぶんみんな気づいていなかったと思います。」
「えー、それは寂しいですねえ。でもまあ良っかあ。さあ食べましょう。」
房代さんは、動揺しつつも大人の対応をします。
「あ、いらしていたんですね夏子様。それではご一緒に召し上がって行って下さい。」
それを聞くなりお姉ちゃまの眠たい目がキリっとした。
「いただきます!」
いけない、出遅れた。私と芽衣も慌てて箸を持った。
「いただきます!。」
一気に目の前の皿を掴んで口に運ぶ。
このときばかりは、お姉ちゃまや芽衣はライバルです。
できるだけ沢山食べたいなら、必死に食べないといけの。
コツは、出来るだけ沢山一口で食べることだよ。
わたしは顎をはずして、一気に食べ物を流し込んで食べる。
芽衣とお姉ちゃまも顎をはずして、ガッツガッツ食べてる。
私は大体10皿くらい食べたところで、今日の朝食はなくなった。
芽衣も10皿だ。でもお姉ちゃまは13皿食べてる。
うう、出遅れたのが致命的だったな。
「ごちそうさまでした」
おわりの挨拶は、いつも三人一緒だね。
房代さんと夏子さんは、そんな私達のフードファイトが目に入らないかのように、落ち着いて食事を続けた。
芽衣は食事がすんだら、早速テレビのスイッチを入れに行く。
そのくらいはESP使えばいいのにと思うんだけど、芽衣いわく、指でポチっとやるのが良いらしい。 ブンとテレビがつく。
すると唐突にテレビに、鳩屋元首相が出ていた。
あ、朝から嫌な顔を見ちゃったな。
そして、鳩屋元首相はうれしそうに言ったのだ。
『渋谷の惨劇はイケメンスイッチという神秘の兵器によりテロリストが引き起こしたものです。ですがイケメンマスターと呼ばれた男性が、イケメンスイッチを奪い返し、地獄のテロ集団であるイケメン爆滅団を殲滅してくれました。私は元首相として、イケメンマスターの功績をたたえて表彰したいと考えています!。』
私達は全員で、数秒固まってテレビを凝視してしまった。
そこで夏子さんが叫んだ
「ああああ!大変ですよ、うっかり忘れていましたが、鳩屋ぽっぽさんの暗殺をしていませんでした!。」
うわああ、そうだった!
Vさんが消えたり、美メン教団との戦いですっかり忘れていたけど、そもそもはコイツを止めるために、あの日の私達は出発したんだった!!。
テレビで鳩屋元首相はさらに言葉を続けている。
『イケメンマスター、彼は我々の英雄です。そしてイケメンスイッチをイケメンマスターから我らが譲り受け、国の管理下に起きたいと考えております。』
最悪です・・・。
お読みくださりありがとうございます。
鳩屋さん豆知識:馬鹿な事を言うけど本人は大真面目です。




