その45 人形と兵器と不細工
俺と友美と芽衣。
それに房代さんと金子と夏子が教主室につくと、そこには国持兵団研究所所長の国持亮平が先に来ていた。
俺が調べた資料によると国持兵団研究所は、創設は第二次世界大戦当初で、人体の能力開発や医学的な改造を目的に作られた施設だ。
その研究は、時に医療倫理に反するということで、学会からは黙殺されることも多いが、間違いなく世界でもトップ3に入る高レベルの研究機関のようだ。
そして、国持所長は房代さんのおじいちゃんで、友美から見ると曾おじいちゃんということになる。
だが友美の態度から察するところ、友美はそのことは知らないかもしれない。
俺たちは、挨拶をして全員座る。
そこで秋彦さんは言った。
「今回、本当に意外なことだったのだが、荒川君が捕まえた彼女が爆滅団の幹部の娘だったらしい。そのため本部位置まで聴きだすことができた。こちらから先手を打ってこの騒動を終わらせたいと思うがどうだろうか?。」
だれも反対はしなかった。
もうイケメン爆滅団に話し合いが効かないのは明白だ。
奴らだけは、問答無用で倒さないといけない。
こんな重要な話し合いの中だが、俺はまったく別の話題を持ち出すか悩んでいた。
今回の話に関係ないが、今回の大きな戦いの前にはっきりさせたい話だ。
よく見ると、必要なメンバーが全員そろっているが、無駄なメンバーが一人も居ない。
こんなチャンスは、次の戦いまでにはもうないだろう。
おれは迷ったが口を開いた。
「あ、今回の殲滅作戦とは関係ないが、殲滅作戦前にハッキリさせたいことがあるんだが良いだろうか?それによっては今回の作戦に影響が出る内容なんで。」
秋彦さんは話を中断させた俺に、快く主役を譲ってくれた。
「もちんろん言ってくれ。荒川君が必要だというなら是非。」
そう居てくれたので、俺は今度は友美を見た。
「友美。この話はすっごく君を苦しめる内容かもしれない。だから外に出ていてくれないか。」
友美は、うっすら俺の緊張がわかったのだろう。
いつもみたいにギャアギャア騒がずそっと俺の袖をつかむ。
「Vさん、その話がもしもVさんが私を捨てるって言う話でなければ大丈夫です。いつか私も知る必要がある話しでしたら今聞きます。」
俺は、すこし迷った。
だが心を決め、俺の袖をつかむ友美の手にそっともう片方の手を重ねて国持所長を見た。
「国持所長、単刀直入に聞きます。友美は人造人間とか改造人間と言われる存在ですね。」
一瞬、その場の空気が静まり返る。
次の瞬間、金子と夏子が『何を言っているんだ』っと笑うような表情になった。
だが、秋彦さんと房代さんは目を見開いた。
そんななか、国持所長はいつものように飄々とした表情をしながらも、いつもとはまったく違う鋭い目をして俺を睨む。
「君は恐ろしい男よの。どこで気づいた。」
その瞬間、金子と夏子も目を見開いて驚いた。
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俺の腕をつかむ友美の腕に力が入る。
みると芽衣は、いつものようなアワアワしながら、うまく話しに割って入ってこれずに困っていた。
そうか、芽衣もうっすら気づいていたか。
国持所長は俺に体を向けて言った。
「さて、イケメンマスターの推理ショーと洒落こもうではないか。そんな非常識で唐突な結論にどうしてたどり着けたんじゃ。」
おれは、俺の袖をつかむ友美の腕を袖から引き離し、かわりに握手のように強く握った。
友美も強く握り返してくる。
「じつは俺も、芽衣が現れるまでは気づかなかった。だが芽衣という『改造された人間』が現れることで、俺の中の疑問はすべて線でつながったんだ。」
全員が、だまって俺を見る。
俺は言葉を続けた。
「まず渋谷で初めて友美と会ったとき、友美は走って逃げていた。おれはそこに追いついたら息が切れて限界だったよ。
おそらく友美を追っていた連中も限界だったはずだ。だから連中は攻撃の手数が異常に少なかった。
そんな状態なのに友美はさらに走って逃げて、走ってまた戻ってきて、さらに走って敵を追った。体力がありすぎる。」
国持所長は笑う。
「ほっほっほ、若いからだとは思わなかったのかね。」
「最初はそう思ったさ。次に友美の腕の筋力だ。
あの異常な速度でイケメンスイッチをまわすには相当な筋力が必要だ。
だが友美の腕の細さでは『常人』なら無理だ。
まえに友美にアイアンクローされたとき、異常に痛かったんだが、あの筋力は異常なんだよ。」
国持所長は軽く頷く
俺はさらに続ける
「筋力以外ではあのルービックキューブを計算する能力も異常だ。なんせ友美はイケメンスイッチをあわせるとき、スイッチを回転させて確認しない。上から見える3面だけで計算してしまっているんだ。あれはすごすぎる。」
友美の手にさらに力が入るのがわかる。
おれは、もう片方の手を友美の手に添える。
手が冷たい。
「友美の食べる食事量と速度も変だ。細身の友美があの速度であの量を食べたら、絶対に消化しきれない。だが友美は俺とずっと一緒にいるが、ほとんどトイレにはいかない。あの食事を無駄なくエネルギーとして消費してしまっているということだ。
これは、芽衣が現れて気づいたよ。エスパーの芽衣も異常な速度で異常な量を食べる。それを見ていて気づいたんだ。友美と芽衣は筋力も背格好も食事法もトイレの回数も、ほとんど同じだということに。エスパーの芽衣が異常なエネルギーを必要としているのはわかるが、友美は違うはずなのに。
しかもベッドに入るとぱたりと眠り、おきるときもムクりとおきる。まるでそうプログラムされているかのようにな。芽衣も同じようにすぐ寝て、ムクリとおきる。」
国持所長は頷き、
「そうじゃ、異常はひとつならありえるが、いくつもあれば偶然ではすまない。」
おれはさらに続ける。
「一番の疑問点は、命よりも大事にしていたイケメンスイッチを出会って1~2分程度の俺に渡そうとしたことだ。だが友美が国持兵団研究所で作られたのなら納得が行く行動だ。
友美はイケメンスイッチを守るために作られたんですね?。
そして適度に不細工で戦闘力がある人間にスイッチを渡すようにプログラムされていたんではないのだろうか?
そう考えると、この友美のきれいな顔立ちも不細工を惑わすために作られたと考えることができる。友美の顔も芽衣の顔もシンメトリック過ぎる。これは普通の人間としては異常だ。」
国持所長は頷き俺に言う
「それだけかね?」
俺は首を横に振り続けた。
「いや、そう考えると歌田芽衣が俺になついたのも納得がいくんだ。芽衣にも主を選ぶプログラムがされていたんじゃないか?。兵器として使うつもりだったならば、絶対に必要なプログラムだ。それですべて納得がいく。そう考えたとき、友美がおれに付きまとった事に合点が行ったよ。」
国持所長は嬉しそうに笑うと
「ほっほっほ、やはり気づいたか。そう、エスパーたちはメガネを自分にかけた相手に従うようにプログラムしてある。芽衣がメガネをかけていたときは驚いたが、かなり抵抗されたろう。本能的に拒絶するようにプログラミングしておいたからな。」
ん?この話はおかしい。
芽衣は自分で顔を差し出して、俺にメガネをかけさせた。
まあ、ここは話がややこしくなるといけないからスルーしておくか。
「この結論の一番の決め手は、先代イケメンマスターの研究所への攻撃だ。これは友美が生まれた後に秘密を守るために行われたと考えると納得がいく。それ以外に前後に理由がない。
さらに、国持所長、あなたはイケメンマスターが死んだ後に生き残っていた人たちの記憶を改ざんしてますね。
脳にプログラムを入れるのが得意なあなた達なら、記憶の改ざん程度容易だろう。冬美を悪者にしたのも、おおかた行き場の失った冬美が国持研究所を頼るとでもふんだからでしょう」
国持所長は頷き
「おどろいた男だわい。情報の断片からそこまえたどり着くとはな。だが補足しておいてやる。確かに冬美がわしらを頼ることを期待しておった。じゃが冬美はわしらを頼ってこんかった。思ったよりも強い娘だったようじゃ。そこは計算外じゃったよ。」
おれはゆっくり頷き。
「そもそも、もっと早く気づくべきだった。美少女が不細工になつくのは不自然だった。その最初の段階で異常だったんだ。だが渋谷の人間大量爆発の異常さで、俺はその一番初めの異常さを見落としていた。」
そこで、身を硬くして聞いていた友美に、秋彦さんが声をかけた
「友美、すまない。私たちでは兄さんを止められなかったんだ。イケメンスイッチ使いとして限界を感じていた兄さんには、房江さん・・・つまり君のお母さん以上のスイッチ使いが必要だった。だから自分の子供に改造をして『娘』にしたんだ。スイッチを扱う才能が自分を裏切らないように、息子ではなく娘を欲した。それ以外の部分は荒川君の推理どおりさ。すまない友美。本当にすまない。」
友美は目を開いてボー然としていたが、すっと俺から手を放した。
そして立ち上がりふらふらと後退しながら言った。
「Vさん、つまり私はお父様の作ったプログラムに従ってVさんを巻き込んだだけだったんですね。私がVさんを大好きなのもプログラムのせいなんですね。
ごめんなさい、わたしはイケメンマスターの素質のある人をだまして利用するためのただの人形だったなんて知らなかったから、Vさんごめんなさい。
私、Vさんに捨てられても文句言えない人形だったんですね。」
そういうと、目を見開いたまま友美の目からポロポロ涙がこぼれた。
すると芽衣が立ち上がり、友美の両手をつかむ。
「友美っちは人形じゃないよ。いままでだって一緒に笑ったり怒ったりしたじゃん。友美っちが人形だったら、兵器の私は余計人間じゃなくなっちゃうよ。ねえ、そんな泣いちゃだめだよ。」
芽衣の目からも涙がこぼれている。
友美は言葉が出ないが、芽衣を見つめて何かを言おうとしている。
しかし言葉にならないようだ。
おれは立ち上がり、泣いている友美を強く抱きしめた。
女の子を抱きしめるにしては力を入れすぎかもしれないが、強く抱きしめる。
「馬鹿を言うな!お前は今まで俺の何を見てきたんだ。俺がそんな小さい事を気にするわけ無いだろ。むしろ俺にはラッキーな出来事だ。だからお前は気にしないで俺のそばにいろ!。」
そして、そばに居た芽衣も力強く抱き寄せる。
「人形が何だ!兵器が何だ!おれなんか不細工だぞ。
俺は二次オタでフィギュアに本気で恋ができるし、アニメのロボットみてハアハアする駄目オタクの不細工だ。
そんな俺に、アニメみたいにある日いきなりメイド服が似合いそうな美少女がまとわりついてきて戦いに巻き込まれたり、人間兵器の美少女が仲間になったりなんて、アニオタの本望ってもんだろうが。
俺は友美のプログラムに感謝する。おれは芽衣の存在にも感謝する。だからガタガタ言わずにずっと俺のために俺のそばに居ろ!。」
力強い俺の恥ずかしいセリフだが、ふたりは俺にガバリと抱きついて泣き出した。
「Vさん、Vさん、私の選らんだ人がVさんで本当によかった。わたしでもずっと一緒にいても良いんですよね。ずっとそばにおいてください。」
「Vっち、わたしも人間兵器だけど、Vっちがエッチなお店に行くときは、ちゃんとメイド服着ていってらっしゃいとお帰りなさい言うよ。」
感動的だけど、芽衣ちゃんは気が利き過ぎです。
お読みくださりありがとうございます。
Q、人形と兵器と不細工。一番なりたくないのはどれですか?
夏子「不細工はいやでーす」
房代「できたら不細工じゃないほうがいいですね。」
金子「あはは、不細工になったら自殺しますわ。」
V「俺の心のHPはもう0だ・・・。」




