その37 友美の目から見た今
友美中心です。
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緊急警報が鳴り響く。
友美にも、金子達に緊張が走るのがわかる。
友美はこの状況で半年前のことを思い出していた。
あの日にとても似ている。
急に敵が入ってきて姉が裏切り、両親が殺され、世界が一変したあの日。
友美を守って父と母が目の前で死んだ。
そんな事がまるで昨日の事のように思い出される。
この半年間というもの、毎日その記憶は断片的に思い出してしまっていた。
そのたびに頭から一生懸命消し去っていた。
でもVと一緒にいるようになって思い出さなくなっていた事件。
今まで思い出すことを本能的に拒絶していた事件だったが。
なぜか今なら思い出せそうな気がした。
大人の緊張と非常警報が騒がしいが、それがかえって意識を潜らせるのに丁度良く感じた。
ゆっくり思い出してみる。
良く考えたら、父や母が死ぬ瞬間は見ていないかもしれない。何故見た気になっていたんだろう?。
良く考えたら、姉が父に抱きついたのは見てるが、刺したところは見ていない。 何故刺したと思ったんだろう。
良く考えると、姉が敵に歩み寄ったのは確かだけど、そのとき房代が蹴られたのは何でだっけな?。今思うと姉が危ないって叫んだ気がする。
良く考えたら、父は教団では英雄のように言われていたが、向かってくる敵は「仇」と叫んでいたり「爆発魔」とか叫んでいたこともあった。でも父が絶対に正しいと信じていた。
良く考えたら、秋彦のまえでVが父を否定するような事を言ったが、あれはどういう事だったんだろう?。 Vは意味の無い事はしない。
良く考えたら、母は良く友美や、姉の冬美に「ごめんなさい、私たちがあの人を止められなかったばっかりに、ごめんなさい」と言っていた。あれ、やっぱり父は正しくなかったんだろうか?
良く考えたら、秋彦も夏子もいつも優しくしてくれたし、父のことも支えてくれていた。私の入院する病院に来た時だって、秋彦は父の亡骸にすがって号泣していた。なんで嫌いになったんだろう。
Vと一緒にいるようになって、友美は自分で自分を守る必要がなくなったためか、今なら本当のことが思い出せそうな気がしてきた。
すると、このタイミングで芽衣は友美に手紙をさしだす。
友美は忘れていたモノが急に出てきて驚く。
「芽衣、これってVさんから預かった手紙だよね。」
芽衣は頷き、もう一押し友美に差し出しながら言った。
「友美っち、Vっちはこのタイミングを予想していたんじゃないかな。私はこのサイレンで自分が研究所を逃亡した日を思い出したよ。友美っちも何か思い出してる顔だった。だから今読んだほうがいいと思うんだ。」
友美は芽衣が差し出す手紙を静かに受け取り、封筒を眺める。
Vは言っていた。
この手紙は二人を引き裂くものかもしれないと。
今までの、Vの洞察力を考えれば、その言葉は嘘とは思えない。
だが、不思議と今なら受け入れられるような気がした。
友美は自分でも驚くほど静かな気持ちで受け取る。
「確かに今読むものかもね。Vさんは魔法使いみたいにタイミングいいや。」
そう言いながら封筒を開いた。
開くと、PCでプリントアウトした文字が並んでいる。
『友美ちゃんへ
この手紙を読んでいると言う事は、過去と向き合うことを選んだという事だと思う。
俺が調べた限り、先代のイケメンマスターである春雄さんは、俺とも意見が合わなそうだ。
本来、存在自体を隠していたイケメンスイッチを世に知らしめてしまったし、悪と思えばろくに調べもしないで爆発させてしまっていた。
そんなことを繰り返した結果、最初は遺族会だったはずの団体が『イケメン爆滅団』へと姿を変えて、野望を持ったようだ。
今回のエスパー騒動も、11年前に国持兵団研究所に機密保持のため、イケメンスイッチで攻撃したのが原因らしい。
今敵対しているエスパー軍団もうそうだ、あれは対イケメンマスター用の切り札だと思う。
歴史にタラレバはないが、渋谷の大虐殺も君のお父さんがイケメンスイッチを使用して暴れなければ起きなかった悲劇だと思うんだ。
今俺達は、先代のイケメンマスターが作った敵と戦っているといえるだろう。
そして俺が思うに、こうなる事を予想して、いつも君のお父さんに厳しい事を言っていたのが秋彦さんだったのではないだろうか。
友美ちゃんは俺を、無意識に春雄さんと同じようなイケメンマスターになることを願っているように思う。
だが、おそらく俺はきみのお父さんとは真逆の存在だ。
どちらかというと、友美ちゃが嫌う秋彦さんの様なスイッチマスターになると思う。
俺は、友美の望んだイケメンマスターにはなれない。
そのことを理解して、友美ちゃん自身がどうするか決めてくれ。
あ、あとついでだから書くけど、金子から聞いたイケメンマスターの最期は、どうも正しくないようだ。
だれかが意図的に情報操作した可能性がある。房代さんは春雄さんが刺された所は見ていないし、冬美が抱きついただけに見えたと言っていた。
だから房代さんに春雄さんの検死結果を調べてもらったら、やはり春雄さんの遺体には刃物の傷はなかったそうだ。
友美ちゃんの姉の冬美は、おそらく濡れ衣を着せられている。
人の記憶は嘘をつく。
今、友美ちゃんが真実だと思っていることも、実は後から聞いた話とかで歪んでいる可能性が高い。
金子も、実際に見ていない箇所を見たかのように語っていた。
もしも友美ちゃんが俺と一緒にいられないと思い、俺とはなれることになっても冬実の事だけは、きちんと真実を調べるようにしてくれるよう願う。』
友美はそっと手紙を畳んで封筒に戻した。
芽衣は心配そうに友美を見ている。
友美は芽衣にそっと言った。
「この手紙にはお父様は悪人で、Vさんはお父様とは真逆にしか生きられないって書いてあった。」
「友美っち、Vっちと離れるの?。」
友美はゆっくり首を横に振る。
芽衣は、安心した表情になった。
それを見て友美は芽衣に言った。
「私はお父様が悪人だったとしても、やっぱりお父様の味方。それと同じでVさんがお父様と正反対でもかまわないよ。私がVさんに染まるか、Vさんが私に染まるか、これからじっくり戦うんだ。」
「あはは、さすが友美っち、Vっちと一緒に生きるって所はブレないね。」
そういうと、二人でキャイキャイ笑いあった。
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読んでいただきありがとうございます。
これから物語りは加速する予定です。




