その36 国持兵団研究所
ホテルに着くと、すぐに教団から連絡が来た。
今すぐ国持兵団研究所の所長に会えるらしい。
研究所の決断、早!
予想をはるかに超える高速展開で心の準備が間に合わないよー。
嬉しい悲鳴とはこういう状況の事をいうのだろう。
まあ行かないという選択肢はないのだけど。
会ってくれるなら行くしかない。
少し迷ったが、友美と芽衣も連れて行くことにした。
そこで、何があるにせよ二人が近くにいたほうが、何かと動きやすいと判断したからだ。
ホテルに迎えの車が来て、俺たちは研究所に向かった。
一時間後・・・・
俺たちは秋彦さんと合流し、あっさり研究所の所長室に通される。
展開早すぎ。
なにより、研究所側の決断はすごいと思う。
よほどキレるリーダーが率いているのだろう。
所長室に通されたのは、俺と秋彦さん、そして夏子の3人だ。
友美と芽衣は、別の部屋で金子達と待機してもらった。
そして
俺たちの前には、数人の秘書っぽい女性と、背の小さいおじいちゃん『国持亮平』所長が座っている。
あっけなく、そして素早い展開に俺のほうが慌てそうだった。
一通りの挨拶を済ませると、国持所長は俺に向かって言う。
「一目でわっかぞ、あんたがイケメンマスターであろう。
正直いうとな、芽衣がイケメンマスターの一団に助けられたと聞いたときは背筋が凍ったわい。またイケメンマスターがスイッチで襲ってくるかもしれんからな。すぐにイケメンに近い連中を避難させて、お前達の接触を待っておったのよ。そしたら憎きペルシアの華から接触の願いが来たんで驚いたワイ。てっきりイケメンマスターが問答無用で襲いかかってくると思ってたんでな。」
秋彦さんは深々と頭を下げた。
「昔の兄の所業にかんしては、真に申し訳ありませんでした。爆発した人の臓器で恐ろしい状況になったと聞いております。人の生き死にを謝るだけで許してもらえるとは思っておりませんが、どうにか関係修復の努力をさせてください。」
すると国持所長の横に居た女性が、テーブルをガツンと蹴っていった。
「ふざけるな。私の兄は私の前で爆発したんだぞ。笑いながらコーヒーを飲んでいただけなのに・・・いきなり爆発して殺されたんだ。お前達にその悲しさや怒りがわかるか!。」
秋彦は頭を深くさげたまま答えられないようだ。
俺は、そこで話しに割ってはいる。
「近しい人を殺された気持ちは生涯消えないと思う。そしてこのイケメンスイッチが憎い気持ちも生涯消えないと思う。だが、全ては先代のイケメンマスターの行いだと割り切ってはもらえないだろうか。今の俺と手を組んで欲しい。ただ、芽衣が殺してしまった人たちの関係者にはこれからどう償うかは考えるつもりだ。」
ほっほっほと笑いながら、国持所長が俺に言う。
「『いの4号』・・・いや、今は歌田芽衣と名乗っているんだったかな。そやつが殺したのは傭兵だから気にせんでいい。うちの研究所に今は戦闘要員はいないからな。天道殿からの電話では芽衣がこちらに反逆した事も知っていながら引き取りたいという話ではないか。芽衣をそちらに渡す代わりに我らに資金援助で手を打てと言う事かのう。今度のイケメンマスターは先代みたいに乱暴ではないようで助かるわい。」
俺は、なんとなくこの所長は、俺のお願いを聞き入れて資金援助を受けるつもりなんだと感じた。
ちょっと俺達に友好的過ぎるのは気になるが、話の流れは大事にしないとな。
まあ、頭が切れる人のようだから、どこが落しどころとして一番良いかきちんと考えているのだろう。
この流れなら、
だとすれば、次に国持所長から出される提案は、すでに予想が付いている。
俺は先にその条件を差し出した。
「国持所長、エスパー軍団はココを狙ってくる可能性も高いですよね。でしたら資金援助以外にも、防衛のお手伝いも出来ると思います。過去の遺恨はあるとも思いますが、今生きている人も守らないといけませんから。それに逃亡中のエスパー全員を捕まえるか殺害し、事態を収束させるのもペルシアの華が行いましょう。いかがでしょうか。」
国持所長は数回うなずき、ヒヒヒと笑いながら
「なるほど、こちらの足元も見ようって言うのかい。意地の悪い商人じゃな。だが、いきなり人間を爆発させるよりは遥かにマシじゃ。いつかワシらはあんたらから得た資金であんたらに復讐するかも知れんぞ。それでもいいのか?。」
秋彦さんは静かに頷く。
「かまいません。そんな気持ちを起こさせないような人間であるように努力して、あなた達の復讐心を消せるよう教団を指導するつもりです。」
国持所長は満足そうに微笑んだ。
「わかったわい。ペルシアの華を信じたわけではないが、秋彦殿と現イケメンマスターを信じよう。」
随分あっけなく俺達を信じたな。
不思議だけど、向こうには向こうの事情があるんだろう。いまは大人しく話の流れに乗っておこう。
そこでいきなり非常ベルが所内に響き渡る。
所長室に若い女性職員が飛び込んできた。
国持所長は女性職員に問いかけた。
「何事じゃ!。」
「大変です、エスパー達が襲撃してきました。」
それを聞いて俺はスクリと立ち上がった。
「国持所長、さっそく俺たちの出番のようだ。俺は話が通じる相手には話し合いをするが、話す事を放棄した奴には手厳しいぜ。」
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