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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
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<1-8>  「年季奴隷で秘書見習い  (前編)」

最新の本文修正日は2015年6月11日です。

 土猫族のプイホンさんは今回年季奴隷の年季が明けたら商人になると聞いた俺ですが、どうやら俺の場合は年季が明けても、簡単に自由になれそうも無いです。その代わり魔王やドラゴンなどは相手にしなくてよさそうです。


 だって、皆は俺より遥かに強そうで、俺なんか何も出来ないので到底必要とされないよね? しかし、手に職を付けていると、何かと理由をつけて必要とされるみたいです。


 何が何でも俺を放したくないのが見え見えなのだか、どうしたものかと複雑な心境だ。武器を扱う勇者でもなければ「魔素術」という超常現象を起こせる賢者でもない。


 ただ、そろばんが出来るが小心者で、ちょっと間抜けな猫好きの建築現場監督である。あまり無理に俺ができる事を探すのは勘弁してほしいよ、自分が可哀想になるよ。


 そんな複雑な心境の俺であった。






 俺の質問がジョルジョネさんに舌打ちされ原因になる。馬の休憩を理由に突然指揮車を追い出された俺は、首を傾げながらも自分が配属された馬車に向う。


 その原因は俺が彼の意図を見抜き突っ込んだ為で、別に意図して突っ込んだ訳じゃないが図星だったらしい。


 俺は揺られる荷馬車の中で荷台のベンチに座り、そんなジョルジョネ大尉の言動を思い浮かべる。


 大尉が言っていた羊皮紙に書いてある奴隷契約書の文面を読みながら残りのパンを口に入れ、質問で出た文面の事を考える。



 あ~、乾いた口の中に水分を吸収する物を食べる時は、皆さんも気を付けてください。死にます、死に掛けました。プイホンさんが慌てて、俺に水を飲ませてくれなかったら死んでました。




 「兄ちゃんって、結構馬鹿だね! うつわと水は荷馬車の前の方に置いてあるのに、なんで一緒に飲まないの?」




 相変わらず名前を言ってくれない彼であるが、そんなプイホンさんに助けられた俺は一息つける。お礼を言い、彼を先生に格上げしようかと考えましたが、頭をナデナデで勘弁してやった。



 頭をナデナデしながら荷馬車の後部の景色を見ていると。なんと言うか、この世界に来た時に最初に出会った感じの生き物が、凄い勢いでこの馬車を追い越して行く。


 犬が犬? に、跨って馬車を追い越して行ってしまう。自分で何を言っているか判らない。脳内で「ここは異世界、何でもありだよ~」って、誰かが囁く。俺は言葉にならない声でプイホンさんに聞いてしまう。



 「あうあう、あの、あの、プイホンさん? 今から変な事、変な事聞くけど笑わないでね! 俺、外見てたんだ。大きな犬に小さい犬が跨ってね、もの凄い勢いでこの馬車を追い越して行ったんだ! 何か変だよね? あれって何?」




 「へ~、兄ちゃんは変じゃないよ。それね森人族もりびとぞくの姉ちゃんの獣僕じゅうぼくで、ボグフム姉ちゃんだよ。姉ちゃんは俺達、獣人族けものびとぞくで一番えらいんだ~。ボグフム姉ちゃんが乗ってたのは姉ちゃんの聖獣せいじゅうだよ~」




 「森人族の姉ちゃんてあの剣を背負った人? 獣僕? 聖獣? 獣人族で一番偉い?」



 また、訳の分らん言葉が出て来る。一応聞き返したがプイホンさんでは説明になっていない。ドルバンさんの方へ助けて目線を送る。彼はため息混じりにプイホンさんの隣の席に移ってきてくれる。




 「あのね、俺にあんまり頼られても困るが仕様が無いね。目、合っちゃったし、知ってる事を教えるよ。どうせ暇だしね、内の護衛隊長は知ってるよね?


 彼女は森人族といって、俺ら人族の祖先がこの大陸に王国を建国する前から、この大陸の森に住んでいてね。彼女らは凄く好戦的で、最強の戦士一人は昔の王国軍千人以上を打ち破るといわれていたんだ。


 だから、当初は王国がこの大陸を開拓する時に、森を切り開くと必ず攻撃してきてね、大変だったそうだよ。そこで、さっき話した奴隷王事件で活躍した王子が居ただろ? その王子が彼らに助けを求めた。彼らは強いからね~、王子と森人族に何があったが知らないけど、彼らは盟約を結んでね。


 その結果は奴隷王が死に、森人族は彼らの森周辺に王国から自治区を勝ち取ったそうだよ。森って言っても、大陸全土の十二分の一もある大森林をだよ。大森林には森人族の聖地があって、森人族はその聖地を守る為に大森林周辺の森や林を大事にしていたようだよ。だから、侵入者や森の破壊者は許さなかったようだね。


 あっ、そうそう。森人族と獣人族っていうのは俺達人族が名付けた呼び名だ。遥か昔にその『聖地』に森人族が来た時に獣人族も一緒にその聖地にやって来たといわれている。他の地域にも獣人族が来たようだけね。


 彼ら森人族を敬い隷属してきた獣人族の中に森狼種もりおおかみしゅ森猫種もりねこしゅという種族がいてね。その付いて来た森狼種と森猫種は、他の犬種や猫種の原種といわれていて、土猫種やその他の発生種達は原種には畏怖を感じて森人族同様に敬ってしまうんだよ。


 プイホンから見たら彼らは神の使徒ってな感じかな。まあ同系統の原種じゃなければあんまり感じないみたいだよ。内の護衛隊長はその聖地を守る代表的な森人族の氏族の出で、彼女に付き従う獣人けものびとが『獣僕じゅうぼく』。それで、それぞれ森狼種と森猫種から各一名、計二名護衛隊員として引連れている。


 その森狼種と森猫種は大森林の中で生活しているのだが、森狼種と森猫種は種族特性で大森林に住む魔獣・・を付き従える事が出来るそうだ。俺らは魔獣・・と呼んでるが彼らは『聖獣・・』と呼んでいる。他の獣人族も聖獣・・がいるよだが、俺は詳しく知らないね。


 そんな事で護衛隊長の彼女に、二人の獣僕の彼女らがいるんだよ。彼女らっていっても俺ら人族には見分けはつかないがね、プイホンを見たら分るだろ。獣人族の彼女らな多少は胸があるみたいだが。


 その、魔獣の狼が小さくなって、立って歩いている感じだし、もう一人はその、なんていうか魔獣の虎に跨った黒豹なんだよ。夜に会うと驚くよ~、急に目が光るからね。特に黒豹の彼女。あ、クワビムって言ってね。護衛隊長を特に崇拝してるから護衛隊長と会話をする時は注意すると良い、必ず後で脅されるからね。


 ああ、護衛隊長はメルディムさんといい、特務少尉だからな。傭兵を五十年以上やってるらしい。そんな不思議そうにされても困るが、彼女ら森人族は長命だからな、見た目年齢の十倍は生きてるから、年下だと思うと痛い目にあうぞ!」




 そういう事らしい、大尉の方が詳しかったのかな? ドルバンさんにお礼を言って、また考え込む。



 あのエルフ姉さんは森人族で護衛隊長のメルディムさんといい、傭兵で軍人扱いの特務少尉で年齢200歳オーバー? 彼女の獣僕で護衛隊員の2名、それぞれ森狼種と森猫種の獣人族。


 森狼種は狼顔のボグフムさん、森猫種は黒豹顔のクワビムさんで、どちら共女性という。そして、彼女達が乗っているのが聖獣といわれるペット? いやしもべ? 僕の僕だよな。



 狼さんの方はあまり関りたくないが、黒豹さんの方は挨拶して虎の聖獣に乗ってみたい気がする。でも黒豹さんの方が性格きつそう。だって猫だもの気まぐれで自由人なんだよきっと。


 プイホンさんと同じように、肉球なんか触わっちゃったら、今度は鼻じゃなくて首が飛んじゃうよね‥‥‥。あ~、怖い。




 そんな事を考えながら座っていると、どうやら今日の野営の場所に着いたらしい。馬車が道を外れて止まったようだ。俺は羊皮紙をリュックに仕舞い、リュックを自分の魔技箱に仕舞う。


 それから野営の準備でテントやら簡易ベットをセットし終わると、また馬が誰かに連れて行かれたのか居なくなっていた。分担でやっているのだろうか?



 晩飯にありつく為に周囲を見回し、何処にテーブルが設置されているか確認してそこに向う。


 馬車は大きく三箇所に分かれて設置されていた。まず、男達が乗っている馬車は2列に各7台が並び、仮設トイレが一番右側に2列に巨大な仮設トイレが1台、全13台並ぶ。それが基準らしい。



 2列の馬車の左側が仮設食堂でテーブルが11組に5人掛けの長いすがセットされる。その左側に料理を作る調理場と調理用荷馬車、その隣に女性年季奴隷用の馬車が置いてあり、女性用の仮設トイレもそこにあった。仮設食堂の前方奥の方に指揮馬車2台と会議用のテントが設置されていた。



 仮設食堂を境に男女に分かれた配置である。馬は仮設の柵につながれていて、女性側の馬車の少し離れた場所にあった。そこに中隊の護衛隊が焚き火を囲い交代で夜回りしてる事も判った。初日もこんな感じだったのであろう。このように判りやすい配置なのに俺はパニックり迷ったのかと思うと情けなくなる。




 晩飯にありつく為に、プイホンさんと共に配膳の列に並ぶ。後ろの方からどでかい声で「リョウジ」と、呼ぶ声がしたので振り向くと、工作長のガルボルテさんであった。




 「晩御飯が終わり次第、工作馬車の方に来い!」




 俺は彼に頷いて返事をすると、早速晩飯を平らげる。そして、自身の安全の為に皿を傾ける行為をして馬車の陰に隠れる彼女を確認する。今日も大丈夫そうだ。


 プイホンさんはまだ食べていたので「工作長の所に行って来るよ」と言い残し、彼を置いて工作馬車の方に向う。彼は晩飯に真剣に取り組んでいたが大丈夫であろう。



 工作馬車の前で待っていると「もう来たのか」と、後ろから声がする。よく彼を見上げたら、ドワーフの高身長版だよなとしみじみ感じてしまう。身長は2mはあると思う。


 見上げて話をしないと会話が成立しない体は全体的に筋肉質でズボンは履いているが上半身は体毛がびっしりで上着を着ていない。実に、ワイルドな感じである。


 顔も口や頬、顎に至るまでひげが凄く濃い、もうなんか全身灰色の毛むくじゃらってな感じだが直毛ではない。露出している肌を捜すほうが大変である。だけど、彼の瞳もオレンジであり、森人族と同じ瞳の色だった。ああ、こんなのが斧とか振り回してきたらと考えただけで恐ろしくなる。


 俺がぼけ~っと、彼を見ていたので、彼は俺の意識を確認する為に目の前で手を振ってきた。俺はビックリして後ずさる。




 「おい、大丈夫か? まだ体の調子が悪いのか? 大丈夫そうだな、大尉からは聞いてるぞ! お前が大尉の『秘書見習い』になるから『秘書見習い』に必要な道具を作ってくれと頼まれたぞ!」




 いつの間にか、俺は大尉の「秘書見習い」になったそうです。彼はただ、俺に「中隊に関る事務仕事の計算を手伝ってくれ」と、言っただけであったはず。ああ、それって秘書・・の仕事だね。それに、秘書・・って言葉はここにもあるんだねと変な感心をしてしまう。


 彼は自分の馬車の荷台から彼が持つと小さい革袋を引っ張り出して来て、中身を出して俺に見せてくる。




 「ほれ、『算盤』はこれで良いか? これは俺の弟子が使わなくなった物をお前がいってた物に改造しておいたぞ。それと、簡易筆記用具とか言ってたがどんな物だ? 大尉が使っているものじゃ駄目なのか? 俺が使っているこれはどうだ?」




 彼が出して来た物は巨大なエンピツのような物であった。芯は何で出来ているか分からないが黒っていうか、どちらかというと電子基盤に使うハンダのような感じで、若干硬めで書き難そう。一応、芯の回りは木製であり、外見は四角いが3m離れたらエンピツに見える。だが、片手で持つには、俺では無理である。


 彼にこの筆記用具の芯は何かと尋ねると「鉛」と「錫」だそうだ。驚く事に翻訳ではそう聞えた。俺は少し考え鉛筆って鉛じゃ無かったかな? と、考え始める‥‥‥。ようやく「黒鉛」という言葉を思い出し聞いてみる。



 「あの~、これの芯に『黒鉛』を、あ、いえ。その『黒鉛』を使えないでしょうか? それに配合は判らないけど肌理きめの細かい粘土を混ぜて焼き固めると、書き易くなるはずなんですが。それに、大きさを俺の手に合わせて作れないでしょうか?」




 「ふむ、『黒鉛』か。あれは結構希少でな、値が張る。なるほど、粘土を混ぜて焼き固めれば少しの量でも出来るかもしれないな。うんうん、出来る。よし、試作してお前に合わせて作ってみるか。旨くいく。うんうん、これはいいかも‥‥‥」




 どうやら一人の世界に入ってしまったようで、ブツブツ呟いている。今度は俺が彼の目の前をジャンプして彼を正気にさせる番だ‥‥‥。5分ほどジャンプさせられる。やっと気付いた彼は残りも、お前にやるといって袋ごと渡してくる。



 俺は汗だくで、汗をぬぐいながら彼が持てば革袋、実際俺が持てば大工さんが大工道具を入れる結構大きい革製巾着の道具袋だ。その道具袋の中身を見る。期待を裏切らずに最初に出て来たのは木槌きづちで、意味が分らない。


 次は、木の板20cm×20cm、厚さは5cm、ぐらいある。そして、革に巻かれた手鉋てがんな。これは片手で使えるぐらいの小さな奴で洋鉋ではなく和鉋で木槌で歯の調整を行うものであった。



 秘書見習いって大工仕事もするのかと彼に聞くと、試し書き用の木の板に書かれた文字を消す為の手鉋だそうだ。紙は貴重・・で、羊皮紙も高くは無いが試し書き用には出来ないと教えてくれた。



 そして、また道具袋の中を覗くと、中には少し小さめの巾着袋があり、その中に筆記用具の大尉が使っていたキャップが付いた小筆が3本とインク容れか、墨汁容れ? 例の徳利を立てに潰した様な形で、蓋はコルク栓のような物と大小の紐付き革袋5個と布製の巾着袋で洗濯物袋と書いてあった物が次々と出てくる。


 最後に奥の方に革のベルトが出てくる。帯幅は俺が建築現場で使っていた安全帯と同じ太さだが結構分厚いベルトであった。だいたい幅が5、6cmぐらいで厚さは1cm弱ありバックルが二つ穴用の奴が入っている。


 今着ている服装には腰に紐がついていてベルトは必要ないように思えるのだが?


 まあ、使う時に分るか。洗濯物袋はたぶん、今着ているこの甚平みたいな服を洗濯するのにこれに入れて出すのかな?


 算盤は少し大きくて長さ30cmぐらい、幅が10cmもある、珠は大きいが結構軽く動いて具合が良い。


 それらを道具袋に入れ、工作長にお礼を言って自分の馬車に戻ろうと歩いていると、期待通りにプイホンさんは俺を探している所であった。


 俺はキョロキョロしているプイホンさんの後ろからそろり、そろりと近付く。予定では彼がビックリするはずなのだが、俺の方が先に後ろから肩を叩かれ驚いてしまう。まあ、俺の驚いた声にプイホンさんも驚いたので、作戦は半分成功と言える。



 俺を驚かしたのは、先程のビックでワイルドなドワーフのガルボルテ工作長であった。彼は昨日の俺がテントの中で尋問されていた時に、最後に見た俺の携帯電話をどうしても、もう一度見たいとお願いしに来たのだ。


 俺は迷ったが彼から革の道具入れを貰ったし、携帯の着メロでも聞かせて楽器ってことにすれば納得するかなと思い、見せる事を了承する。



 結果的にそれは杞憂に終わった。未だにガラケーで年式の古い携帯電話のバッテリーは、長時間の充電無しでは限界であったようだ。見事に電源が入らない、電源を切っていたのにだ。工作長に見せて壊さないように確約を取り、彼に携帯電話を渡す。


 彼は不思議そうにボタンを押そうとしたが、指が太すぎてどうやら押せないようだ。プイホンさんも不思議そうに見ている。当たり前だろう、この世界にプラスチックや液晶画面なんかがある訳がないはずだ。


 一通り見終わった彼に「これは何か?」と、聞かれる。しかし、どう説明していいか迷った挙句、俺の国の「便利な道具」で今は力を使い果たし、使えないとだけ説明する。


 嘘は言ってないが彼が納得する訳も無いと思った。しかし、彼は今は使えないという事に引っ掛かったのか「使えるようになったらまた見せてくれ」と、言い残し自分の馬車に帰ってくれた。プイホンさんも何か突っ込みを入れるかと彼を見ると、どうも興味ないらしい。



 やっと解放された時にはもう日が落ちていた。俺は貰った道具袋と携帯を自分の魔技箱に仕舞い、替わりに寝袋を出して扉を閉める。


 明日も朝は早い。自分の寝床に行き、今日は革サンダルの紐を解いて足の埃を払い寝袋に入ってまた考え事をする。



 今日は思わず、ジョルジョネさんの仕事を手伝う秘書見習いになってしまった。いったい、俺にどんな事を更にやらされるか考える。


 その内、剣を持って戦えとか言われたらどうしよ~‥‥‥。と、クヨクヨ考え横を向く。すると、薄暗い中にプイホンさんが寝言で「もう食べられないよ~」と言い、舌を出して口の周りを舐めている。


 彼のそんな様子に、何か馬鹿らしくなる。折角、人語・・を話せる猫に出会えたのだから取り合えずいいかなと、自分に言い聞かせ眠りにつく。


 昨日のように、突然ガバッと半身を起こし「モフモフするまでは死ねん!!」と、新たに誓うのであった。




 気持ちよく寝ていたが、一眠りして急にトイレに行きたくなり目を覚ましてしまう。まあ、歩いて3分も掛からない。寝袋を出てサンダルを履いて紐を軽く結んでテントを出る。外は満月ではないが月明かりで真っ暗闇ではない。足元も見えるし便所の方に向かうとランプが灯っていた。



 仮設便所に入り用を足し、ランプに目をやるとオイル系かロウソク系のランプなら灯りが揺らぐが、ここにあるランプはじっと見ていても、明かりは揺れない事に気付く。不思議に思いランプに手を近づけるが、手が熱くない。


 よく見ると、ランプの光っている所が何かの光の玉が浮かんでいるように見える。どうやら、これも魔技箱と同じ便利な道具らしい。



 そんなランプに首をかしげながら便所を出る。ふと、何か光ったような気がして暗闇に視線が行く。ちょっと離れた工作馬車の陰に2つの光る何かが見え、よく目を凝らして見ると、時々消えてはまた光る。


 この光景を何処かで見た記憶がある事を思い出す。暗闇で猫が隠れている時に見る光景だ。プイホンさんは寝ていたし、寝起きであほな俺はつい見に行ってしまう。



 少し近付いたところで、突然声がする。




 「おまえ! 何処に行く? 今は消灯時間だ! もしかして逃亡か?」




 何か行き成りピンチになりました。女性の声にも聞えたが、そんな事よりナイフのような刃物を鞘から出す金属音がして、こちらの方に近付いてくる。俺は思わず尻餅をついてへたり込んでしまう。




 「夜に、このあたい(・・・)から逃げられるとでも思ったか?」と、刃物を振り上げ近付いてくる。



 思わず頭を抱え込んで目を瞑ってしまう俺であった。




 後編へつづく

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