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奴隷から始まる異世界旅行記  作者: 三之山勝
《 第1章 異世界で迷ったら奴隷になった 》 
5/229

<1-4>  「初めての奴隷旅団所属中隊  (前編)」

最新の本文修正日は2015年6月11日です。

 神様の褒美なのか解らないが、自分が居た会社よりヌルイ年季奴隷になってしまった俺ですが、奴隷になってしまったというよりはなるように仕組まれたのかも知れない‥‥‥。多分そうだと思う。


 そして「奴隷」と言う言葉に俺は不安を抱きつつ、尋問が終わってしまう。テントの外に出るが、まだ空が明るい事に「今日はもう遅い、もう休め」と、言われた事に俺は困惑してしまう。


 確かに空は明るいが夕方の4時ぐらいであろうか? 西日が眩しいし、まだ寝るような時間じゃないのに‥‥‥。分からない。


 それにテントを出た時にジョルジョネさんの「ヨシッ」という声もして、なにやら中で二人の話し声がする。何が「ヨシッ」なのだろうか?


 ‥‥‥。俺に分かるはずも無かった。






 そんな困惑していた俺の服を横からグイグイ引っ張ぱる存在に俺は気づかされる。そんな俺の服を引張ったのは先程の「猫君」であった。


 彼は俺を見上げて「コッチ、コッチ」と、言って更に俺を引っ張る。身長は俺の胸ぐらいで120cm程しかない。やっぱりどう見ても立っている猫である。


 「ちょっと待って、俺は『リョウジ』。君は?」


 俺の服を引っ張る彼の手を制止して、彼の名前を聞こうとすると、猫君? 彼はハッとなって話し出す。




 「えへへ、そうだね。おいら、土猫族の『プイホン』だよ。歳は十六、二回目の年季奴隷で今のは二年目だよ。新入りの歳はいくつ?」




 「ああ、俺は、二十五歳だよ。君は男の子だよね?」




 「当たり前だろ! 男の年季奴隷と女の年季奴隷は仲良くしちゃいけないんだ!」




 「えっ? 女性の年季奴隷も居るの?」




 「そんなことも知らないのかよ、めずらしいな~‥‥‥。他所の国の人?」




 新入りだと年下にタメ口を聞かされる事があると世間の噂では聞いていましたが、実際聞くと結構ムカツキます。後で「ナデナデ」させて貰う予定なので大人の余裕を見せ付けニッコリ微笑みます。


 あれ? ちょっと待てよ。プイホンが年季奴隷2回目で2年目って事は10歳から働いて7年目って事? 社会人として俺より1年先輩? 「プイホン先輩」として心の中で尊敬しよう。


 それにしても、女性が一緒だと色々ヤバクないか? 統制は取れているのだろうけど、気にはなる‥‥‥。


 「ねぇ、ねぇ、プイホンさん。女性も男性と同じ仕事するの?」




 「する訳無いだろ! 女の年季奴隷はご飯の用意や洗濯。後、お金を払えば繕い物もしてくれる。それに、120人近い中隊のご飯作るんだぞ、それだけで大変なんだからな!」




 「へ~、そうなんだ。俺さ~、他所の国から騙されて連れて来られて、逃げたのはいいけど荒野で迷っちゃってさぁ~。あまりこの国の事良く分らないんだ。プイホンさん、どうか色々教えてくださいよ~。お願いします!」




 「え~、仕様がないな。う~ん、ゴナベル奴隷長には世話するよう言われてるし、任せな! おいらがここを案内するよ!」




 「ちょろいねこだぜ!」と、内心思っていたが、こいつ世話を頼まれているなら「え~、仕様がないな~」じゃないだろ。おまけにそれをばらしてどうする?! まぁ、後で「ナデナデ」に「モフモフ」も追加だ!



 テントを出て右手の方に箱型の馬車が2台並んでいて、それを彼が指差す‥‥‥。俺の視線は箱型馬車にはいかずに彼の手に注目してしまう。


 手には指があり地球の猫より、指が長くて物が掴める様だ。短い毛が生えていて指先の腹と手の平が肉球状態になっていた。思わず手を握って肉球を「プニプニ」してしまう。


 その瞬間! 握っていた手とは違う方の手が俺の鼻先を掠め空を切る。迂闊であった。地球の猫もそうであったが、馴れない内に肉球を「プニプニ」すると怒る事を忘れていた。


 それに、先程鼻先を掠めた手の指先には光る物が‥‥‥。あれは多分、爪であろう。危うく鼻が無くなる所であった。そのせいで咄嗟に握っていた手を放してしまった。嗚呼、触り心地は最高でした。




 「兄ちゃん! いきなり何するんだよ! 驚いて引掻きそうになったじゃないか!! ここの中隊にも一人、急に触った『人族ひとぞく』がいて引掻きそうになったのに。気を付けろよ!」




 はて? 人族ひとぞく? 人間の事? 誰だろう? この世界にも「モフリスト」が居る様だ。この異世界にいる地球人の「モフリスト」代表として親交を深めたい。



 「あぁ、ごめんごめんよ~。俺の国のでね。親切にしてくれる『プイホンさん』についやってしまったよ!」




 「そうなのか? 他所の国の仕来りじゃ仕様がないな、おいらは親切だからな!


 おいらはもしかしたら男に興味ある奴か、あの少尉の姉ちゃん見たいに、おいらの尻尾を触る『変態』かと思ったよ。


 尻尾を触られる事はおいら土猫族にとって『凄く嫌な事なんだ!』まさかと思うが兄ちゃんは触らないよね?」




 うんうん頷きながら、チョロイ様で鋭いご指摘にこめかみから汗がスーッと流れる。それにあの少尉がモフリストだと?! 土猫族データ「尻尾と肉球危険!」と、頭にインプットする。



 一先ず彼が落ち着くと、先程の箱型馬車の説明をしてくれる。


 2台はジョルジョネさん達偉い人が使うそうで、簡易ベットが付いていて3人寝れるそうだ。中に8人ほどの人間が乗れて、移動する時には中隊の馬車列前方に位置すると教えてくれる。


 そんな感じだが彼は特に「御者」。ああ、馬車を操る人で。その席が特別に座り心地が良くて、交代の時に争奪戦があるという噂を教えてくれた。


 どうやら1台は専属の御者がいて、もう一台は年季奴隷の持ち回りで御者をするそうだ。新人や若い年季奴隷は座ることが無く、彼は「羨ましい」と、俺に教えてくれる。



 次に俺がトイレに行きたくなったので「トイレ」を聞いたら、通じず。「便所」で理解してくれて、その場所へ連れて行ってくれる。


 便所は建設現場にある簡易トイレのような作りのようだ。簡易の組立式の壁のようで角に蝶番が見え、扉を開けると中は折り畳み式の椅子のような洋式便器であった。その時は小だったので気が付かなかったが、当然トイレットペーパーとホルダーが無い事に後になって気づく事になる。


 構造はあまり気にならなかったが外に出て気付いてしまう。普通の仮設トイレは便所の下に出した物を貯めるタンクがある。しかし、これにはタンクが無くもう一度便所の扉を開き中を見ると、直接床面に椅子式の洋便器が取付けてある。


 更に便器の中を覗くと、先程は気が付かなかったがあまり臭いがしない。なんていうか便器の中の底が見えなく真っ黒である。


 頭を掻きながら外に出て、待って居てくれた彼に聞いてみる。答えた彼もどのような仕組みか解らないが、これは「組立式簡易便所型魔技箱」という名前だと、教えてくれる。なんだか長い名前だが俺にはそう聞えたから仕方がない。最初の部分は意味が解るが「魔技箱まぎはこ」とはなんだ?


 「あの~、プイホンさん。その『魔技箱』ってなんです?」




 「あぁ~、他所から来た兄ちゃんは知らないよな。すげぇ~便利なんだぜぇ~。遠い所に物を運んでくれる便利な道具で奴隷組合と王国軍しか待てないんだって。ゴナベル奴隷長が『高価だから壊したら20年はタダ働きだぞ』って言ってたよ」




 こいつ、散々自慢して受け売りかよと突っ込みたくなるが、これがあの「便利な道具」か~。よく外観を見ると仮設便所が6台連結してあり裏側にも同じように6台、そして一際大きいやつが1台同じく横に並んでいる。ああ、あのテントに居た俺の私物を触ってた奴で、やたらとでかいガルなんとかさんの分かな?


 どうも俺の建設現場監督の血が騒ぐ、構造が気になって仕方がない。仕組みは彼は解らないって言っていたから仕様がないとして、出した物は何処に行くんだ?



 「あのぉ~、プイホンさんその汚い話ですが、出したものって何処に行くのでしょうねぇ?」




 「え~っと‥‥‥。確か‥‥‥。あっ、近くの奴隷組合の堆肥置き場だった、かな? ある程度貯まったら独りでに送るのと、移動前に作動させるとか言ってたよ! たぶんそう言ってた『ゴナベル奴隷長』が!」




 「へぇ~『エコ』だな~、じゃあ堆肥は畑に使うの?」




 「ヘッ? 『へコ』? 何か分らないけど、堆肥は売ったり直営の農場とかで使うみたい」




 凄いぞ異世界、「物質転送装置」と「エコ」だよ! 地球に持って帰ったら大金持ちだ!! って、俺帰れるのか? それに持って帰っても地球で使えるのか?


 多分仕組みは魔法的な何かなんだろうな~‥‥‥。彼に急かされ次に行く。



 次に訪れた場所に有ったのが、先程見た箱型の馬車よりは小さい箱型が前にあり、後ろの荷台の上部に幌が付いた荷馬車か混合馬車? まるで建設現場に作業員が乗ってくる5人乗りの幌付ハーフトラックである。


 その箱型の壁には手作りの看板が掲げてあり、目を凝らすと「ドグマァン工房組合 ガルボルテ工房」と、書いてあるようだ。ガルなんとかさんの名前だよな? 工房っていうことは彼は職人?


 看板の横に小さく「農具、工具、武具、防具、その他の道具の修理と製作承ります。金額は相談のります」と、書いてある。


 あれ? ここって軍隊だよね? 商売もありなの? ジョルジョネさん大尉って言ってたよね?


 そうするとプイホンさんが説明を始める‥‥‥。多分受け売りの説明を。




 「ここの親方は「工房達人」の称号を持つガルボルテ工作長の馬車で、前の箱型に弟子が乗ったり、簡易寝具で寝たり出来るよ。工作長は大っきいから後ろが専用の寝床だよ。あと馬車の横に付いた扉もさっきと同じような仕組みの「魔技箱」だよ。


 ここは何でも作ってくれるし修理もしてくれるそうだよ。細かい事は後で工作長に聞いてみてね!」




 最後は投げたな猫っ児。一通、説明を聞くと馬車の周囲を見回す。確かに馬車の荷台の側面に木製だと思うが木枠に扉と取っ手が付いている。


 荷台の中を覗くと木枠が荷台中の方には飛び出ていない。厚さにして5cmほど、荷台の側面に取付けてある。荷台の中は寝具に毛布、ガルなんとかさんの私物らしい物しか中にはなかった。道具が何処にも無い。


 試しに外の「魔技箱」の扉に手をかけ引っ張ると鍵が掛かっているのか開きそうにも無かった。



 「そういえば周りに誰もいなかったけど、皆は何処に行ったのプイホンさん?」




 「ご飯だよ、馬車で移動する日は朝が早いからね。明るい内に晩御飯食べないと食べ損なっちゃうよ~。早く次ぎ行って終わらせないと食べそびれちゃうよ~」




 「じゃあ、他に行く前にご飯に付き合うよ。ご飯食べながら話しを聞いていい?」



 彼は頷き、俺に手招きをしてくれる。「ああ、手は握ってくれないんだな」と囁き、彼の後を付いて行く。すると、他の馬車の影で見えなかったが、テーブルが11組ほど置いてあり1つのテーブルに5人程が座れるベンチが2組置いてある場所にたどり着く。


 もう殆ど席が埋まっていて、むさい男共が会話しながら飯を食べていた。俺は彼と対面で座って話を出来る場所を確保して、彼がこっちに来るのを周りの様子を見ながら待つことにする。



 テーブルの席に座ると当たり前だがメニューはないし、皆同じ物を食べている。木製のお盆の上にジョッキの様なコップが見える。中身は酒かな? 


 その他にも大きい木製皿に先程俺が食べたようなスープ、だが大きい具がたっぷりのスープが入っている。後は木製のスプーンとフォークだがフォークの先は2本しかない。それらを使い食べている。


 それにテーブルの上には大きなバスケットにフランスパンのようなものがあり、厚手に切ってあるものが沢山乗っていた。また、そのパンをスープに付けて食べている人も見かける。



 ああ、飯は沢山食べれるようだな。視線の向うにプイホンさんがお盆を持って並んでいる。何か、エプロン姿の女性の人と話している様だ。


 多分こんな感じだろう。「俺が、新人を案内してやってるんだ、凄いだろ!!」と、言っているようだ。その証拠に「ほめて、ほめて」の目線を彼女に送り、彼女は苦笑いしながら彼の頭を撫でいた。


 本当に16か? と、突っ込みたくなる。そして、彼はお盆を持って急いでこちらにやってくる。「ニコニコ」している表情は解らないが彼の尻尾は正直だ「ピンッ」と立っていた。


 あれは猫系が嬉しい時か、機嫌の良い時になる感情バロメータで。犬とは違い尻尾を素早く振り出したら要注意!! イライラしてる証拠になる。



 彼はテーブルに着くと「フウフウ」とスープに息を吹き掛ける。そして、パンを取りパンに絡めて熱そうに食べ始める。やっぱり猫舌なのかな?



 「あのさ~、プイホンさん? あそこの女性達って年季奴隷なの? 夜とか大丈夫なのかな? こんなに男がいるのに危ないよね?」



 しかし、彼は「モゴモゴ」いって会話にならないので、代わりに俺の隣の男が教えてくれる。と、いうか、脅してくれた。




 「なんだ、兄ちゃん知らんのか? ここの護衛隊長を! 剣を背中に2本と腰に1本挿して、鎧中にクナイや手裏剣を挿してる森人族もりびとぞくの女を!


 夜中に女共に近付いただけで、あれが飛んできて命が幾らあっても足りねぇぜぇ! それにその他にも一杯いるし、兄ちゃん一遍試してみろよ?」




 そんな事を言ってその親父に自分の肩を叩かれた。冗談は顔だけにしろよ親父! いや、親父じゃなく同世代かもしれないが、先程のエルフ以外にもあんな危ないのがいるのか?


 よかった~、早めに知れて。いや、現場事務所の事務員の女性の前ですら赤面して話せない俺が心配することじゃなかった。


 先程のアミュネス少尉は大丈夫だったな‥‥‥。外人だからか? 先程は色々と混乱してたし、今この場で面と向ったらまともに話ができない自信は有る。



 少し気になったが「クナイ」はこちらでもクナイなんだなと、一人感心していたら、ようやくスープが冷めてガツガツ食い出したプイホンさん。


 時々熱さが残った具材に、びっくりして吐き出している。その仕草が可愛い‥‥‥。いや、そっちの気は無いです。あくまでも猫としてです。



 そして、食べ終わると、お盆ごと持って先程の場所に走って行き食器を戻している。ちょっと気になったが、彼はあそこに行く前に皿を綺麗になめ、皿を先程の女性の方に見せてから食器を運んでいったのである。


 ああ、別に皿を舐める仕草が可愛かったという事じゃない。彼が女性の方に皿を見えるようにした事がちょっと気になっただけである。



 彼だけかと周りを見ると、周りも皿は舐めないが綺麗にスプーンでよそってから、一様に皿を先程の彼女の方に見せるではないか。何かの儀式? テーブルマナーか? 俺が不思議そうにしてると、またもや隣の親父が恐ろしい事を教えてくれる。




 「兄ちゃん、不思議そうな顔してどうした?」




 「いや、あの~。皆さん、皿を綺麗にするのは解るけど。なんで皿をあの彼女に見せるのかな? と、思いまして。ああ、この国の仕来りならいいのですが、少々気になりまして」




 「あぁ、あれか~。そんな仕来りはこの王国にはねぇけど、ここ特有って言うか、まぁ、その。あれをやったほうが長く生き残れるらしい」




 「はぁ? あれをやらないと命がなくなるのですか?」




 「いや、あまり大声じゃ言えねぇけど、ここの料理人に料理長補佐がいて。彼女が俺達が大人しく料理を味わいながら食べているか監視してんだょ。でだぁ、たまたま、虫の居所が悪いやつが口を滑らし『ここの料理はまずい!!』ってだったけど、言ってしまったんだとよ!


 そしたら、次の飯の時にそいつが料理を一口食べた途端、泡吹いてそいつだけ倒れやがってよ。で、見たんだよ『気持ち悪い笑みを浮かべた料理長補佐』をよぉ。馬車の陰から覗いてた所を見たやつが居てよぉ。それ以来、だ~れぇも食事には文句言わなくなったって話だ」  




 「はぁ。で、その人はお亡くなりになったんですか?」




 「いや、暫くして気が付いて青くなってな。次の飯の時に皿を舐めて『大変、美味かったです』と、大声で彼女に聞えるように言い放って、皿を彼女が居る方に向けたそうだ。それを真似て、皆ああやってな‥‥‥」




 つばを飲み込む。恐ろしいぞ料理人! まるで、いや、軍隊の料理人を怒らすと大変な事になるっていうのはどの軍隊でもそうだし、どこの組織も料理人に喧嘩を売るやつはいない。まあ、それを知らない奴はいるが‥‥‥。映画だと死ぬけどね。



 俺の場合は、学生の時に弁当を作ってくれた料理人じゃないが母親にオカズの文句を言ったら。次の日、嫌に軽い弁当をあけたらメモ紙に「自分でお金を稼いで家にお金を入れてから文句を言ってください」って書いてあったなぁ~と、思い出す。



 あぁ~、早めに聞けて良かったぁ~、確かに先程のエプロン姿の女性達とは違い、調理場の後ろにある馬車の陰に人がチラチラ見え隠れしている。



 そうやって話をしていると次々人がまばらになってきて、空いたテーブルと椅子を一箇所に足を折り畳んで積み重ね始める。


 俺もプイホンさんと一緒に片付けを手伝う。そして、一組だけ残して後はロープで縛ってしまう。



 どうやら、残ったテーブルで彼女達が座って食べるようだ。飯を食ってから後片付けをするらしい。ロープで縛るのは飛散防止の為か? 建設現場と同じだな。


 段々日が落ちて辺りが薄暗くなる。多分あれが料理人専用の馬車かな? と、眺める。外観は工作長の馬車と同型だ。



 プイホンさんが寝床に案内するというから付いて行く。彼は全部の馬車の説明は諦めたようだ。道すがら全部で馬車が11台ある事だけを話して、残りはまた今度と、話をはぐらかされてしまう。


 しかし、120人近く居てそれだけで済むのはやはり魔法の箱「魔技箱」のおかげらしい。追々聞いてみよう。



 直ぐにその場所に着いたが、凄い機能的な荷馬車であった。キャンピングカーにもこんな装備の奴があったような事を思い出す。


 荷馬車の両側にテントが付いて組み上がっていた。その両側に6人が寝れるような大きさで、中を覗くと簡易ベットと寝袋のような物が置いてあった。そして、荷馬車の荷台の中にも簡易ベットが2列に3台置いてあった。



 荷馬車は前に御者が2人、荷台に12から14人は乗れそうだ。各自の荷物が無いのは例の魔法の箱のお陰であろう。多分このベットも収納できるに違いない。嵐の時はどうすんだろ? 多分何かまた魔法系か何かで処理しちゃうんだろうなと、考えていると、プイホンさんが俺を呼ぶ。




 「兄ちゃん! コッチ、コッチ~。この人がゴナベル年季奴隷長で隣が1号車長でドルバンティス年季奴隷長補佐です。ささ、新入りの挨拶してね!」     




 すると、またもや彼は「ここまで案内して、紹介もできたよ」と、言いたそうに奴隷長に「ほめてほめて」の目線を送る。そして、奴隷長は苦笑いしながら彼の頭を撫で出した。俺もすかさず、リュックを足元に置いて挨拶をする。



 「初めまして、行き倒れで助けてもらい今度年季奴隷になりました『アサガ リョウジ』といいます。『リョウジ』で結構ですので、これからよろしくお願いします」     




 「まぁ、そんな硬くなるな。一応、奴隷長と言われているが、年季奴隷の親玉じゃなく、大尉と年季奴隷の橋渡しの役みてぇなもんだ。名前はゴナベルしかねぇから『ゴナベル奴隷長』でいいぞぉ。


 それに、大尉からは聞いているし、心配するな。他所の国みてぇに奴隷に鞭打つ奴もいねぇし、町に行ったってぇ、奴隷を馬鹿にする奴ぁこの王国にいねぇよ。後はそいつに聞いてくれぇ」




 「奴隷長! 丸投げですか? ああ、丁寧な挨拶をありがとう。貴族か1級市民ですか? ああ、ですが同じ年季奴隷なんで気軽にしてください。私も『ドルバン一号長』か『ドルバン』でいいですよ。貴方は今日から1号車の一員です。私達のところはプイホンの他に12名の年季奴隷がここに居ます。


 もう寝ている人も居るから挨拶は程々に、あと人が沢山居てを覚えるのが大変でしょうが、ここの服の襟に各自の名前が書いてあるので特に心配しなくてもいいですよ。あと、起床時間はどでかい音がしますから大抵の者は目を覚まします。それでは、細かいことはプイホンが教えてくれるから彼に聞くといい。早く寝ることをお勧めするよ。では良い夢を!」




 ベラベラとまくし立て彼は行ってしまったが、プイホンさんというと「俺が任されたぜ!」と、言った感じに猫の髭の様な髭がピンと斜め上に上がっていた。顎にスープのカスを付けながら得意になって俺をテントに誘導するが、俺は反対側のテントの中に顔を出し先程と同じ挨拶をしようとしたが、皆は寝ていた。


 気を取り直し、荷馬車の中を覗いたが、誰も居なかった。そして、プイホンさんが居るテントに入りまた同じ挨拶をしようとしたが、中の4人と一匹は全員寝ているではないか。



 「寝るの早えぇーよ!」と、例のごとく一人突っ込みしたが声には出さなかった。



 どうやら俺の寝床のベットは入り口に一番近い場所らしい。俺はリュックを寝袋が敷かれた簡易ベットの上に置き、枕にしてベットに横になる。横を向くと隣はプイホンさんであった。彼は熟睡しているようで寝袋の上で丸くなって寝ている。


 彼の寝姿があまりにも可愛かったので、俺は彼が先に寝た事はどうでもよくなってしまう。テントの中も薄暗いので俺も寝ることにする。体を起こし寝袋を見る、寝袋はチャックではなく重ねしろが結構あり端に紐が所々付いていて結べるようになっていた。



 暗くなって少し寒くなったので寝袋に入り仰向けになる。今日の数時間で多くの出来事がありすぎて頭が整理できない。



 やがて、眠くなり寝てしまったが、思わずガバッと起き上がり「なんで、語尾に『ニャ』が付かないんだ? おかしいだろう!」と、呟いてしまう。



 おかしいのはどうやら俺本人のようです。


 と、いう事で横になり寝てしまう俺であった。





 後編へつづく

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