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SECOND SCORE 0:グローリア・オブ・キサンド Ⅰ

 第22回講談社ラノベ文庫新人賞には落ちていた。第二選考に上がってきた作品たちを見てみると、異世界・ゲーム・恋愛・・・これらが今のトレンドなのがよく分かった。

 別に妬んでいる訳ではなく、むしろこれで受験に対して踏ん切りがついた。悔しいけど何故か清々しい気分。大学に入ってもこの小説は最後まで続ける。だから、しばらく待っていて欲しい。


 頑張れ、第二選考に勝ち上がった作品・作者たち!これはおべっかでもないし、何度も言うが妬みでもない。まだ読んではいないけど、自分の作品が落ちたという事は、「自分の作品よりも面白い」という保証となるだろう。僕が言うんだ。・・・もしこのサイトにあったら読んでみて欲しい。

 大分更新が遅れたことにも謝らなければならない。化学の勉強が色々大変なもので。


 それでは、SCORE0、どうぞ。

 それは、一日で終わった戦闘だった。被害が双方にあった戦闘だった。アークへシス軍は第六大隊の約二〇分の一である二三名が死亡、オグラ中佐含む四〇名以上が負傷し、帝国軍三〇〇〇名のうち死傷者は約一二〇〇名、負傷者七三〇名。

 首都に少なくとも残っていたクルバノフ騎士団及びソルジャーは市街地においてゲリラを展開し、結果的にすべての帝国軍を撤退させたのは夜が更けた後であった。しかし、メイジ・ランサーがただの先の尖った棒切れになっていた以上、殆ど使い物にならなかったのは言うまでもない。


 代償の大きい戦いだったが、戦闘が終わって戦争が終わるわけではない。むしろ、戦争を終えることは何よりも難しい事であることは、アークへシス軍の軍人にとっては痛いほどわかっていた。だから、戦争を終わらせるためにちょっとした「小細工」をするのだった。だが、その小細工は、「小」が付く割には大規模なものであった。


 惑星「ネメシス」の衛星軌道にいるカールたちの母艦、〈マーシャル6〉。その艦長、スズキ中佐。彼は今、そのプロジェクトを早急に進めざるを得ない状況に追い込まれていた。本来であればクルバノフとの会談の後に計画されていたものだったが、そのタイミングでジルカン帝国の侵攻に遭った。何ともタイミングが悪い。


「スズキ中佐。カールさんたちの使っているS4の装甲をこんなにふんだんに使うなんて、結構コストが掛かるのでは・・・?」この声の持ち主は、ハビエル・ロメロのものだった。彼は資材を急いで輸送するべく国お抱えの輸送船の船長になっていたのだ。

「構造自体はそこまで単純なもので、ただただ『熱疲労に強い合金』だから実際は・・・とはいえ、これ以上は軍事機密に抵触するかと。ですが、ここまで運んでくださり、本当にありがとうございます。」

「それでも一体、何のために・・・?」

「ただの小細工ですよ。」

 スズキ中佐は、コロニーからここまで運んできたロメロに対し感謝の念を述べるとともに、その「小細工」を進めるのだった。




 リオの作戦が失敗したことはすぐに帝国本土に伝わった。

「何故だ・・・何故・・・。」皇帝・エルバディーは困惑した表情だった。

 彼自身、作戦をリオ達と確認を取っていた。実際、アークへシス軍が技術的に優れていることは理解できた。しかし、たかが五〇〇名程で禁軍・空軍の再編成を迫られる事態になるとは思ってもいなかった。あの悪名高き第三代皇帝のように魔法を過信してなどいない。

 むしろ徹底的かつ合理的に使っている、そういう認識であった。にも拘らず、だ。


「・・・リオは、・・・マージ・ブリスツは、健在か?」だが、秘書官からの返事はこうだった。

「リオ閣下は味方に撃たれ重傷、どうも撃った方は錯乱していた・・・というより、一種のトリップ状態に陥っていたものと思われます。」

「内部工作か、誰が・・・!っ、いや、大筋の黒幕は分かっているんだ。今更聞くのは野暮だ。撃たれた後の状況はどうなった?」

「ほぼ作戦成功に思われていたものがあっという間に盤面がひっくり返った、そういう生存者が多くいました。・・・残念ながら、マージ・ブリスツの損傷率も少なくなく、一五名以上もの死傷者を出したと。それと・・・」


「まだ悪いニュースでもあるのか?」皇帝は、自分の代で帝国が終わるのではないか、という事を危惧していた。そうなれば、国民がどうなってしまうか分かっていた。今まで侵攻してきた分のツケがここで回って来た、という事だろうか。

「いえ・・・その・・・」

「この際だ、もっと悪い事でも起きたのだろう?」

「原因があるんです、カルナブルクにあの例の『騎士団』が、それと国境付近にいるはずだった『ソルジャー』が王城に・・・。交渉をしに来ていただけであると・・・。それが発覚したのは王城に押し入って入る数秒前だったとの・・・陛下?!」その言葉を聞いた瞬間、エルバディーは何かを悟ったのか、大声で笑いこけた。


「フフ・・・フハハ・・・ハハハハハ!・・・あはははは・・・ハハハハハ!!」それは、諦めに近い声だった。

 あの「騎士団」、未知の技術力でわが軍を圧倒した、あの、あの・・・!彼らは、ただ自衛のためだけにカルナブルクに結集していたのだ!もし一日早ければ、死人は出なかった!!

 ソルでは、敵わない存在・・・触れるべきでなかった存在だった!

「へ、陛下・・・。」

「ハハ・・・。仕方ない。この際だ。」

「陛下!一体何を?!」

「この帝国の生贄として生を全うするだけだ、『全責任は我にあり』と。・・・死んだ後のことは頼んだぞ。かつて我らが攻め入った国々の住人のように、『したたか』に生き永らえるのだ。」


 それと時同じくして、兵士長の一人が報告に来ていた。

「申し上げます!我ら帝国皇都・チテルグラード上空に何やら船らしき物影が!早くお逃げに・・・」

「いや、結構だ。それよりも二人共、国民を早く脱出させるべく手配してくれ。私は人柱としてここに残る。もし生き永らえたとしても、恐らく公開処刑だろう。」

 それは非常にも、自分を切り捨てるつもりであるという意思表示であった。続けてこう言った。


「いいか、お前らは『この戦争は全て皇帝の独断で行わされていた』と裁判で言うんだ。リオや他の提督たちに対しても同様に言わせるんだ。だが、リオや、もし生きていたらタングストやメグリ―にも言伝を頼む。『内部工作を行った人物を徹底的に洗い出せ』と。良いな?!」

「「・・・ハッ!!」」秘書官と兵士長は同時に言った。だが、二人共大粒の涙を浮かべていた。


「さて、城郭で最後の時間を過ごすか・・・。意外と人生は大きく崩れるものだ・・・母上。」そう言い残し、外に出た。

 すると見えてきたのは外殻を黒の装甲で覆われた空飛ぶ箱舟ーマーシャル6だった。そう、スズキ中佐の言った「小細工」とは、このことであったのだ。


 すると次の瞬間、チテルグラード沿岸部に流れ着いて来たものであろう流氷が、何筋にもわたる光によって一瞬で蒸発した。マーシャル6の威嚇射撃だろう。多くの人々がこれを目にし、より一層恐怖を感じ取った。

 が、それも束の間の事だった。


 音声が聞こえて来たのだ。その言語は、彼らエルナシア人が使っている物であった。

「・・・皇帝よ、降伏されよ。わが軍は『平和的外交』を求める。一般市民に対して何ら危害は加えない・・・。」外務相のフレデリックが音声越しに言った。それは、昨日リオが幼王タリウスに言ったものと酷似していた。


「どうやら、まだ死ぬべき時ではなさそうだ・・・。」エルバディーは一人、誰も聞いていない中で独りごちた。




 前線基地の簡易的な牢屋に、クルバノフ王国の宰相、テネフは捕らえられていた。いくら宰相という階級であるとはいえ、捕虜は捕虜だ。その立場である以上、好き勝手行動させるわけにもいかない。第一、彼は幼王の拉致作戦を失敗に導いた張本人であるのだから。だからと言って、手に枷を付けるのはどうなのか、とテネフは自らの境遇をあざ笑った。

 牢屋の鉄のドアにある格子窓から、死体や負傷兵たちの生み出す濃い血の匂いと腐臭が混ざり合った空気が流れて来た。その匂いが、帝国軍の境遇がいかなるものであるか、容易に想像できた。

 間違いなく自分は処刑されるだろう。であるならば・・・


「地獄がより一層賑やかになるな・・・。」そのような考えが浮かんできた自分が腹立たしい。言葉には出さないまでも、やはり心の奥底には帝国を、故郷を憎むのだろう。

 救いがたい思考の中をさまよいながらテネフは、己の処刑を刻一刻と待っていた。

「出ろ。」見張りの兵士がドアのカギを開け、催促した。

「どうした?」

「出ろと言っている。司令官がお呼びだ。・・・もっとも、今の戦況となっては・・・。」


 言われるがままに、兵士についていく。道中、野戦病院の惨状が見えた。

「こ、これは・・・。」さっきまで、帝国軍の兵士たちが傷つくのを何とも思っていなかったテネフだったが、この惨状を見てからは、絶句せざるを得なかった。

「・・・痛い・・・痛い!」

「おい、死ぬな!お前は婚約を申し込んだばっかだろう!お前が死んだら、妹はどうなるんだ!!死ぬなよ!おい!・・・馬鹿野郎、馬鹿野郎!!!」

「か・・・母さん!!痛いよ!痛い・・・いた・・・い・・・。」

 傷ついていた兵士たちは、腕や足、酷い場合は胴体に穴が開いたままワープしてきた者がかなりを占めていた。・・・テネフは、手で己の口を押さえるしかその場を耐える手段が見つからなかった。

「あ・・・あんまりだ・・・。」声にもならない声で、テネフは言った。これが、結果なのか・・・?カールたちに挑んだ結果なのか?!

「急げ。司令官もいつまで意識が持つか分からない。」


 そう言われ、長い廊下を抜けると部屋に辿り着いた。すると待っていたのは、左足を伸ばさざるを得ない負傷をした男であった。そう、リオは生きていたのだ。

「どうもあんな再開になってしまったことがどうも残念です、先輩。」

「先輩・・・?はっ、お前はウルツ・・・?!そうだ思い出した、お前指揮官だったのか?!」

「・・・大出世でしょう?」にこやかにリオは言った。そう、三十路に近い彼らは、帝国の学園で学んでいた者同士だった。テネフが殺人容疑で学園から迫害を受け退学に追い込まれた時、数少ない擁護者の一人でもあった。


「呼び出したのは他でもなく、先輩がクルバノフの重要な関係者だからです。先刻、本土はクルバノフと『アークへシス』という空の民が統治する国家に降伏したそうです。ですから、先輩とタリウス王には会議に出席せざるを得ない、という状況です。」

「それは・・・分かった。だが、そうなってしまえば、お前は・・・?」テネフは困惑していた。これで自分が死んでしまう事はなくなった。だが降伏したら今度は、リオが処刑されてしまうのではないかという不安がよぎった。


「それよりも皇帝陛下が()()()()()()しまうかもしれません。そうなれば、内部分裂から戦乱の世に逆戻りになってしまう・・・。」

「そうか・・・。」

 一休止置いてテネフは聞いた。

「俺が去った後、学園の様子はどのような感じだった?その・・・」少しだけ気になったことがあった。帝国の

「六代のパライト帝になるまで空気は最悪でした。『ソルは選ばれし帝国の民だけが有用に扱える』という時代錯誤も甚だしい内容で・・・うっ!」言いかけている最中に、左足に傷みが襲った。

「お、おい・・・。」テネフはリオの容態が良いとは到底言い難い事を悟った。


「いえ・・・それより、五時間後、怪我人や亡くなった身柄の輸送と、同じタイミングで、先輩も帝都に輸送するそうです・・・ホントはクルバノフに、送る方がいいと・・・ですが・・・申し訳・・・」痛みに耐えながらリオは言った。

「分かった。落ち着いたらまた来る。その時は、お前がどうやって昇り詰められたのか、詳しく聞きたい。気が向いたらでいいが・・・。」帝国に良い思い出は少なかったが、リオを含む多くの善良な人々に出会えたのもまた事実。だからこそ、さっきのような考えに至った己が愚かだった。

「ええ・・・。」リオは、汗だくになりながらもにこやかに言った。そして、テネフは回顧の混じった部屋から退出した。




 その後、テネフは帝都チテルグラードで既に合流していたタリウス王、フレデリック外務相、ローゼンバーグ准将らと合流した。そこには、「王の護衛」の名目で騎士団分隊長のセルス・ピネルもいた。

「テネフ・・・あの時は本当にすまなかった・・・。」マーシャル6の中で、タリウス王はテネフに言った。

「いいのです、陛下。あれは私が無茶をしただけの事。本来であれば私は陛下の命令に背いたとして裁かれても仕方のないことです。」

「結果は悪くはなかった、むしろ結果論だが独立も保て、戦争も終わった。それでいい筈だ、テネフ。そなたのおかげで最小の犠牲で済んだのだ。」だが、テネフはまだ引っかかることがあった。


「これで、帝国の連中は大人しく戦争をせずにいられるでしょうか・・・?」

「どういう事だ、冗談じゃないんだろう?いくら冗談でも・・・」ローゼンバーグ准将はテネフに問い詰めた。

「貴方方は、皇帝を処刑して戦争に片を付けるおつもりですね・・・?」

「・・・退位させて、とは考えてはいるが・・・。」フレデリックは言ったが、テネフは少し間を置いて言った。


「今ここで皇帝を退位させたら、帝位という名の空席が出ます。その穴を埋められる人材がいないのです。まともな人材で。」

「捕虜だった時に情報を掴んだのか?」タリウス王は言った。

「帝国の指揮官、リオ・ウルツワイツは実を言うと学園で知り合いだった。戦闘が終結した後に呼び出されただけですが・・・。」

「若干の軌道修正をしなくてはならない・・・?」フレデリックは言った。どうやら、明後日の講和会談までに草案をまたまとめ上げなければならないようだ。

 そして官僚たちに目を向けた。

「仕事だそうだ・・・。」目を向けられた官僚は、若干半泣きであった。




 そして無事、会談が行われた。その内容は、

「一、帝国は王国に対する侵略行為を禁止する。破られた場合、アークへシス軍は『被・侵攻側』に付くものとする。これは、王国が帝国に侵攻する場合でも同様である。」という切り口から始まったが、その内容は比較的安定して「停戦のための条文」であったと言えた。

 アークへシスという名の巨人による上からの命令であることは否めない。しかし、最後の条文には、

「この条文は、クルバノフ・ジルカン双方が恒久的な安定的外交構築を目的としたものであり、これはアークへシス軍が第一号駐屯基地(砂漠)や第二号駐屯地(山脈付近の集落付近)から軍が撤退して以降も有効である。」

と書かれてあった。また、一方的にアークへシス側に利益が行かないように調整されたものだった。

 こうして、会談も無事に終えられた。


 一般市民には殆ど影響が無かったため、戦争犯罪人として裁く人間は限られていた。勿論、リオや空軍大将も除外された。

 だが、ロレン・フェリス少佐・・・彼だけは別だった。部下に一般市民も「抵抗するそぶりを見せれば構わない、殺せ」と命令していたのを陸軍の生存者から聴取したのだ。

 だが、そこで事件が起きた。ロレンは自殺していたのだ。

 実を言うと今回で終わらせようと思っていたものの、予想以上に尺が長くなりそうであると考えたので、急遽こうする事態に至った。パートⅡは明日更新。やっと、カールが再登場(病院のベッドでだけれども)。

 そして、泣こうが笑おうがこれが第一章の最後。


 第二章は、まだマイルドだった第一章と比べ重い展開・・・グロさの比重がより一層重くなることが予想される。「覚悟がある者だけが~~」状態にもなるのやも・・・。

 それでも、ここまで読んでくれた者にとっては、そんなことは些細な事。それでは、また。

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