24話「どういうわけか」
あれから数日経ち、コトハさんの体調はすっかりよくなって…。
「おさわがせしました…!」
今日からまた、みんな揃って学校で会えるようになった。
と、いうことなので。
「今日はスイさんの番ね。」
続けて。
「今日はカナミさんの番ね。」
さらに。
「今日はカノンさんの番ね。」
そして。
(今日はコトハさんの番…だけど…。)
どうしよう…。付き合ってるワケじゃないし…。
それになんか…。コトハさんに吸われた時だけ…なんか変な感じになるというか…。
(…相談するならトイトさんだな…。)
ということで。
トイトさん家にお邪魔してます。
「――それはただの方向性の違い。」
「なに?バンドの解散の話?」
「吸血液が意識を奪う方に特化してるか、意識を押さえつける方に特化してるかって話。後者はどっちかといえば珍しい。」
「へー。」
「ヅキは耐性も体力もないから、後者でも意識を奪われんだよ。」
なるほど。比率の問題なのか。
…いやなるほどじゃない。
つまりコトハさんに吸われるたびにあのキツイ感覚を味わわなきゃダメってことでしょ?
心臓は苦しくなるし、呼吸は上手くできなくなるし、脳ミソに電極ぶっ刺されて電気流されてるみたいなあの感覚を毎回…。
…とりあえず今日は一回吸ってもらって、ダメそうなら後で考えよう。
後――。
ダメだった。全然ダメだった。
耐えるとか耐えないとか気絶するしない以前に、途中で記憶が消える。
完全によくない気の失い方をしてる気がする…。…いい気の失い方なんて知らないけど。
(キツイ…。…キツイな…。)
マジで脳が焼ける。
カナミさんに自分のこと優先するって宣言した手前、どうにかしないと。
てなワケなので。
困った時のスイさんに頼ります。
「――いきなり耐性をつけるのは不可能だから、少しずつ育てて行くことになるのだけれど…。」
「その間もコトハさんには吸ってもらわなきゃダメだから…。」
「そうよね…。…チヅキ君って、痛みへの耐性は高いわよね?」
「え?まぁ、そうだね。死なないって分かってるから。…動脈を切っても冷静でいられるよ!」
「それは最早気持ち悪いわ。」
「そうですか。」
「そうじゃなくて。痛みに強いなら、無理してそれを避ける必要はないと思わない?」
しばらく経過し、充分に体力を回復できたので、順番をずらして連続でコトハさんに吸ってもらいます。
の、前に…。
「お願いがあるんだけど、いい?」
「いいよ。どうしたの?」
「吸血液出さずに吸ってくれない?」
「…どうして…?」
「出さないっていうか、極力私の中に入れないで欲しいっていうか、とにかく吸血液の量を減らして欲しいんだよ。痛みよりそっちの感覚の方がつらくて…。」
「わかった。私がんばってみるね。」
そう言って、コトハさんは私を抱き寄せて首に牙をあてる。
よしよし。これでひとまずの解決はでき――…ん?
コトハさんはなぜか一向に牙を刺そうとしない。
「…どうしたの?」
「…ダメかも…。」
コトハさんの口からは行き場を失った吸血液が大量に溢れ出ていた。
「大丈夫?吸血液つくるのにも体力使うでしょ?」
というか、あの量を私の体内に注いでたのか…。そりゃキツイわ…。
コトハさんは手で口を押えたまま首を横に振る。
向こうは向こうで、耐性がないせいで歯止めが利かなくなってる感じらしい。
やっぱり時間をかけて慣らしていくしかないのかな…。
「まぁいいや。とりあえず今日はもう普通に吸っちゃって。次までになんかいい方法考えとく。」
とは言ったものの、なんにも思いつかない。
私の負担を無視すればなんにも考えなくて済むのに、健康体でいるのってめんどくさいな。
とりあえず、私もコトハさんも“慣れる”までにはまだまだ時間がかかる。これは確定。
となると、解決は一旦保留してまだマシな方法を目指そう。
吸血液を吸血と同時に体内に入れられてるのは、要は血液注射みたいなものでしょ。だったら…飲み込んで胃に入れた方がまだマシ…?
…いやいや、それって口移しじゃん…。流石にマズい…マズいか…?
「――ダメ!ダメだよ!そういうのは恋人同士でするんだよ!?」
「じゃあ…付き合う?」
「それもダメ!私たち女の子同士なんだよ!?」
「私はそういうの気にしないし…。なんなら既に3股してるし、1人増えたところで…。」
「“3股”…?って…どういうこと…?」
「あれ…。言ってなかったんだっけ…。」
コトハさんに諸々を説明しまして。
「――と、いった感じで…。…どう…?」
「“どう”って…。…みんなと、もうそういうことしてるの…?」
「…唇はないよ。」
「ほっぺとかはあるんだ…。」
あるなぁ…。
「…一回だけ試しにやってみない?別にえっちなことするワケじゃないし…スキンシップみたいな…ね…?」
「…ヅキちゃんがそこまでいうなら…いい…よ…。」
私はコトハさんの頬に両手をあてて顔を近付ける。
そして、コトハさんは目を強く瞑った。
(……なにやってるんだ私は。)
コトハさんは私を私として接してくれてるのに、私がこんなことしてちゃ本末転倒じゃんか。
「ごめん。やっぱり聞かなかったことにして。」
「え、うん…。…でも、どうするの?ヅキちゃんに負担がかかるなら私は…。」
「大丈夫だよ。人間は慣れる生き物だから、そのうち慣れる。私も流石にそこまで体力がない訳ではないしね。ただ、頻度だけもうちょいギリギリを攻めていい?」
「もちろんいいよ。」
「ありがと。」
そう、この問題は時間が解決してくれる。
流石に私でも慣れるまで体力はもつはずなんだ。少なくとも死ぬことはない。
死なないなら、私はどうでもいい。
みんなはどうでもよくなんてないんだろうけど、こういう基準で生きてるのが私だから、受け入れてもらうしかない。
こんな生活続けてたら早死にするのは間違いないんだけどね。どうせ人間の私は吸血鬼のみんなを見送れないから、無理して少しでも長く一緒にいるより、元気なみんなと少しでも多く一緒にいたい。
それにそもそもみんなと出会う以前に、無理矢理起こして勉強しようとして、私の体は薬漬けの短命仕様になっちゃってるし。今さら長寿を目指しても遅いんだよね。
ということで。
「『第1回!和津池チヅキのファーストキス選手権』開催です!」




