8月11日 4階
いつものように自動ドアが開く。今日は休日ということもあって、院内はとても暗かった。まるで、こんなところに人がいるのだろうかという感じ。受付にいたお爺さんみたいな人から名前を書く様に指示される。もう何回もしているから理解はできる。ここに名前を書けばいいんだろう。受け取ったボールペンで名前を書いていく。"新谷穂波"と。時刻は、16時ちょうどだった。この病院は、17時には、面会が終わるだけに、どうしてもこの時間くらいまでまでには来ないといけなかった。お爺さんから、ひもが付いた名札を受け取り、私は歩き出した。
歩いていくと、横に検温とモニターが映し出されていた。おそらく、不審者防止の対策なのだろう。たしかに、病院に不審者なんて一番最悪だしな。私は歩くスピードを全く緩めずに進んでいく。お父さんが入院しているのは4階。角を曲がり、エレベーターが来るのを待った。休日ということもあり、音があまり聞こえない。この病院は、ここ最近建て替えられたということもあり、綺麗なところではあった。昔から、お母さんもお父さんも汚いところがとても大嫌いだった。そういう血が私にも流れているのかなと思う。
エレベーターの扉が開き、ボタンの操作を行う。4階のボタンを押したのと同時に扉が閉まっていく。今日もワカさんいるかな?というか、看護師って大変な職業だよな。ちゃんと寝れるのか?今までは、ICUなんて入ったことなかったからこそ、夜勤の看護師がどれだけしんどいかなんて想像することはできなかった。4階のランプが点灯し、扉がゆっくり開いていく。この角を右に曲がる。ここを真っ直ぐに進むと右手にナースステーションがある。首を右に曲げるけど、看護師の人たちはあまりいなかった。今日は休日だしな。ナースステーションを通り過ぎると私のお父さんが入院している部屋があった。ノックをし、部屋に部屋の扉を開ける。すると、そこにはいつもの顔があった。
看護師「こんにちは」
私 「こんにちは」
お父さんの身なりを整えたところのこの様だった。
看護師「ちょうど今、見ていたところよ」
私 「どうですか?」
恐る恐る聞いてみる。
看護師「昨日までよりは、よくなっているみたいね」
私 「そうなんですか?」
看護師「もうすぐしたら、話すこともできるわ」
私 「よかった」
これまで、全然話せてなかっただけに、肩の荷が降りた感じだった。




