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古き英雄の新たな物語  作者: 光影
序章 魔力を持たない天才魔術師
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白井優美との出会い

 脳内に聞こえる魔人の声に影と呼ばれる一人の少年が目を覚ます。

 本名と年齢は不詳、性別は男性、赤紫色の腰まで伸びた髪と少し高い声が特徴的。



 影が目を開けると部屋に眩しい朝日が入り込んでくる。

 瞼を擦りながら影が寝ているベッドから起き上がる。

「くそ……またこの夢か……」

 ここ数日同じ夢ばかりを見る影はベッドから立ち上がりながら言葉を呟く。



 影は三年前まで国の軍に所属していたが魔人との戦いで街に甚大な被害を出してしまいその責任を負い辞職した。

 総隊長と呼ばれていた影の地位はこの国では女王陛下に次ぐ地位だったが作戦の全責任を負い辞職してからは毎日平凡な生活をしていた。


 影が部屋のカーテンを開け、珈琲を飲んでいると玄関のチャイムが鳴る。

 影の家に来る人間は影の過去の経歴を知っている人間ぐらいだが玄関から、

「起きてますか?」

 と、言う声には聞き覚えはなかった。


 影は念のため警戒し、近くにあった魔晶石を手に取り玄関に行く。

 魔晶石は石に魔力を保存した物で石を割る事で魔力を周囲に放出し、魔法発動の為の補助アイテムである。

 また魔力変換率が少し悪くなるが魔晶石から直接魔力を吸収する事も可能である。

 影は生まれつき体内で魔力を生成することが出来ずに現代魔法は自力では使えない。

 使えるのは古代魔法と魔晶石を使う事で補う事が出来る魔力量の現代魔法だけである。

 三年前の戦いで影はこの国唯一の古代魔法を使う魔術師として戦場となった街を護った。

 総隊長となった影の実力は未だに未知数と言うのが世間の評価であった。



 影が玄関の扉を開けると、一人の女の子が立っていた。

「初めまして、私ノーブルイヤン街に住む白井優美と言います」

 優美は影を見て一礼する。

「どうも。あの~ご用件を聞いてもいいですか?」

 礼儀正しく挨拶と自己紹介をする優美に影は会釈して手に持っていた魔晶石をポケットにしまう。

 

 優美はピンク色の長い髪に綺麗に整った顔立ちと美人だった。


「あの時は私を助けて頂きありがとうございました。本日はそのお礼と一つお願いがあってお伺いしました」


 影はノーブルイヤン街と言う街を知っている。

 影が三年前、軍に総隊長として所属していた頃に魔人の来襲により影が直接戦場に出向き守った街の一つだったが、残念ながら白井優美と言う女の子は知らない。

 多分他の誰かと勘違いしているのかもしれないと影は思う。


「はぁ……人違いかと思いますが」


 影は首を傾げながら優美に呟く。

「あの時と言うのが三年前のお礼と言っても同じ事を言われますか?」

「はい」

 この国は王都を中心に四つの街が隣接して一つの国となっている。

 魔人関係の依頼は全て王都で精査し必要に応じて軍が派遣される仕組みを採用している。

 それを無視して影の元にお願いがあると言ってきた女の子。


 影は今朝の夢の件といい今のお願いの件といい悪い予感しかしてなかった。

 厄介事と分かっていて話しを聞くのはちょっと気が引けるので申し訳ないが優美のお願い事を聞く前に断る事にする。


 影の一言に下を向く優美。

「何故とぼけるのですか?」

「別にそうゆうつもりじゃ」

「影様ですよね?」

「えっ………」

 

 優美の一言に影は一瞬言葉を詰まらせる。

 影を様付けで呼ぶのは軍にいた部下ぐらいだった。

 立場上戦場に直接出る事があまりなかった影の素顔を知る人間は王都でも限られた人間しか知らない。


「タダでとは言いません。必要なら私の全ての財を差し上げます。足りないなら私の身体と心の全てを差し上げます。だから……もう一度……私達の街をお救いしてはくれませんか?」


 優美は下を向きながら履いていたスカートを両手で握る。

 簡単に身体も心を差し出すと言ってきた優美に影は話しを聞くことにする。

 女の子がそんな事を言えば今の時代、男の玩具となる可能性がある。

 それを知った上で影にこの話しをする優美の覚悟を無駄には出来なかった。


 敵意がない事が分かったので影は微笑みながら、今度は素の影で話すことにする。

「女の子がそう言う事を簡単に言ったらダメだよ?」

「私の未来は影様が私をあの日救ってくれたから今があるのです。その影様が望むなら私は全てを捧げるつもりです。だから私のお願いを聞いてはくれませんか?」

 朝早くからとてつもなく重たい話しをしてくる優美に影は夢の件もあるし無視するにはタイミングが悪すぎると考える。

「ほら顔をあげて中に入って。詳しい話しを聞いてあげるから」


次話も頑張ります

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