サプライズティー
「質問!
赤ちゃんは、男の子?女の子?どっちですか?」と渡辺は、すぐ声を上げる。
「実弥ちゃんの何処に惚れたんですか?」
「高知は、何故行ったんですか?」
「魚は、何が捕れますか?」
皆の質問が続く。
初めの挨拶は、緊張していた二人が、頬の筋肉を緩めほんのり紅くなってきた。そしてゆっくり優が話し出しました。
「僕は、三人兄弟で長男なんです。親には、借金があるんです。それを少しでも返したいと思います。漁師の仕事は、高収入なので挑戦しているんです。」
「長くかかりますが、実弥には、寂しい想いをさせてしまうけれど、皆様どうぞよろしくお願い致します。」
優が、再び頭を下げた。周りの人々が、神妙な顔で聞いている。そこへ切り分けられたケーキと紅茶が運ばれて来た。優は、その紅茶を見てふと思い出した事があった。
「実弥ちゃん。この間、紅茶にレモン入れたら、色変わりするの飲んだよ。知ってる?」
「普通、紅茶にレモン入れたら、少し色薄くなるね。」
「初めは、青っぽい紅茶なの。そこにレモンの薄切り入れるとふわ~って変わるんだ。飲んだ事ある?」
「知らないわ。それマジックかしら?」
「違うよ。」
そんな会話を背中で聞いていた花好きの七瀬が、ゆっくり振り向き話し出した。
「それはね。アオイ科のピンクムラサキ色の花のハーブティーでね。そこにレモンを入れると化学変化をおこすんだよ。
アントシアニンに酸性を加えた変化ということだよ。
青紫のお茶にレモンを入れるとたちまち、ピンクになっただろう。
このハーブティーは、胃の粘膜を保護してくれたりするそうだ。」と七瀬が説明した。
「サプライズティーとか、ブルーフラワーハーブ等と言ってネットでも買えるね。」と言う声が聞こえた。
すると誰かが、
「永田さんのお庭にあるお花かな。初夏に咲くうんと背が高くなる花かな?」と声に出した。
「あぁ、そうです。ウチの庭にタチアオイあります。下の方から、咲き出して上まで咲くと梅雨明けって言われてるんです。まぁ、微妙ですけどね。」と永田が会話に加わり話が盛り上げってきた。
「七瀬さんって花に関する事、何でもご存知ですね。」と言われ、七瀬は、背筋を伸ばして小さな咳払いをした。
「私は、仕事を引退してから、時間が沢山ある。花を見るとどんどん育てたくなるんでね。幸いここは、土地が広い。空いている土地に勝手に何か植えても文句言われる事もない。都内で暮らした事もあるが、その点ここは、暮らしやすい。どんどん花が咲く村になっていくね。」
聞き落とさない様にと集中していた優が
「実弥ちゃん、ここ、花野村って知識人いっぱいだね。ここに居たら楽しい事たらけだね。」
「そうね。お花の事は、勿論、お仕事の事、妊婦の健康、そして育児。何も心配ないのよ。すぐどなたかが、教えて下さるのよ。だから安心してお仕事に出てね。」
「そうだね。早くお金貯めてここで暮らしたいね。」
と優が言うとなつが、
「移住二世のナンバーツーも永住しますように。ねっ。」
村中に花が咲き、話の輪が広がり、人口も増えてきた。
そして笑顔も広がりつつあった。
かつて村長の波那井が、夢描いていた村に近づいてきた。移住者が増え、移住者が家族を作り、家族ぐるみでの付き合いが広がってきた。
都会では、隣の住宅との距離が近く、思いっ切り大きな声で歌う事など出来ない。花を植えるスペースも狭い。
遠慮しつつ、気を遣っての暮らしより、七瀬の言うように花野村での日々は、心穏やかで過ごせるのでしょう。
徐々に移住二世が増え、はなさがさく地になる事でしょう。
お読み頂きありがとうございます。
若い優と実弥の新しい形の家族。
心配してしまいますが、人々に好かれるタイプは、何でも乗り越えて行くのでしょう。




