Stars Story11
仕事の会議のため、資料室に向かった蒼太と翼。
蒼太は翼から、"トラウマの告白"の裏にあった心情を教えられ───?
今日は、昨夜、解決班が捕まえた殺し屋2人の取り調べが予定されていた。
蒼太と翼は、今、”男子部屋”として使われているオフィスではなく、普段、優樹菜が仕事場として使っている資料室を借り、そこで取り調べの打ち合わせをすることになった。
室内に流れる空気が、いつも翼と2人きりでいる時のものと僅かに違うような気がするのは───いつもと違う部屋にいるから、ではないような気が、蒼太にはしていた。
翼から打ち明けられた、”あの話”───蒼太は、翼が自分に見せた、背負っていた重みがとれたかのような笑顔を、思い出していた。
テーブルを正面に、隣合って、室内に腰を下して数分後、翼が、静かに、口を開いた。
「……蒼くん」
蒼太は、顔を上げた。
「さっきは……ごめんね。……いきなり、あんな話して」
蒼太の目を見つめて、翼が、頭を下げた。
蒼太は、先程、翼に「ありがとね」と言われた時と同じように、ぶんぶんと、首を横に振った。
そして、翼の目に向かって、「先輩……」と、呼び掛ける。
「ぼくに、何か力になれそうなことがあったら……何でも……いつでも、言ってください」
蒼太は、翼の心に届くようにと、強く、言葉を発した。
誰に対しても優しくて、どんなときでも頼りになって、何も言わずとも、他人の弱さに気づいてくれる人───。
そんな翼は、きっと、自分のことで誰かを頼ることを、あまりしない───でも、それは時に、心の壁に、とても辛い思いを植えつくすはずだ。
───そんなことは、あってほしくない。
もし仮に、自分の力でそれをなくす手助けができるんだとしたら───自分は迷いなく、その道を選ぶ。
そう思って───蒼太は、「……とは、言っても……」と、目を伏せる。
「……ぼくは……、ただ、話を聞くことくらいしか、できないかもしれないけど……」
力になりたいという思いは強いのに、自分に対する自信のなさが、顔を覗かせる。
こういうとき、ああやって、自分の意志をはっきりと言葉にできたらいいのに……。
「───そんなこと、ないよ」
蒼太の頭に、翼の声が、掛かった。
蒼太が顔を上げると、翼は、優しく、目元を笑わせた。
「ただ───聞いてもらえるだけで、救われるものってあるんだって、僕は、教えてもらったから」
そう言って、翼は、僅かに、視線を下に向けた。
「こんな言い方、おかしいかもしれないけど……」
言葉を選ぶように、翼が、声を発する。
「……2人が聞いてくれて、嬉しかった」
ぽつりと、自分の感情を吐露するように、翼は言った。
「あんな話……聞いてて楽しいわけないし、もしかしたら、僕が、いつまで経っても、過去のことを引きずって、くよくよしてるだけかもしれないって思ったら、中々、言い出せないなって思ってた……。……でも、さっき、2人に聞いてもらえて……楽になったんだ。たぶん……僕は、ずっと、気付いてほしかったんだと思う。それで、誰かに、解かってほしかった。……自分から言いだせない癖に察してほしいなんて、すごい、わがままなんだけど……」
目を伏せたまま、言葉を紡ぐ翼に───蒼太は、強く、首を振った。
「……そんなこと、ないです」
今度は、蒼太が、その言葉を口にする番だった。
そして、蒼太は、出会ってから今までを通して、翼に対して感じていた感謝を、伝えることを決めた。
「ぼく……昔からずっと、自分の気持ちを言葉にして発信するのが苦手で、そのせいで、誰ともうまく話せない性格だったんです。”ASSASSIN”に入る前は、何でも話せる友達も、相談できる先輩も、一人もいなかったし、これからも……もしかしたら、一生そうかもしれないって、思ってました。……でも、先輩と出会った時、先輩は、ぼくがうまく言えない気持ちまで、全部察してくれて、ぼくのことを、理解してくれた……。そのとき……ぼくは、この人の隣だったら、自分のままでいていんっだ───って思えたんです。それで、ぼくは、この取調班で、先輩と一緒に仕事がしたいと思って、”ASSASSIN”に入ることを決めました。……だから……、先輩がわがままだっていうことになるなら……ぼくの方が、先輩より、ずっとずっと、わがままです」
翼の瞳が、蒼太の瞳を捉える。
───新緑の葉のような、鮮やかなその瞳の中に、真っ直ぐに光が、差しこんだように見えた。
やげて、翼は、「……そっか」と、頷いた。
「……ありがとう」
ふわりと風が吹くように───翼は、微笑んだ。
それは、蒼太が大好きな翼の表情だった。
「───じゃあ、取り調べの準備、始めようか」
翼が、テーブル上の資料を持ち上げて、確認するように、蒼太を見る。
蒼太は、自分の顔に、自然と笑顔が広がるのを感じながら、「はい」と、頷いた。
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