表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第14章
407/407

Stars Story11

仕事の会議のため、資料室に向かった蒼太と翼。

蒼太は翼から、"トラウマの告白"の裏にあった心情を教えられ───?

 今日は、昨夜、解決班が捕まえた殺し屋2人の取り調べが予定されていた。


 蒼太と翼は、今、”男子部屋”として使われているオフィスではなく、普段、優樹菜が仕事場として使っている資料室を借り、そこで取り調べの打ち合わせをすることになった。


 室内に流れる空気が、いつも翼と2人きりでいる時のものと僅かに違うような気がするのは───いつもと違う部屋にいるから、ではないような気が、蒼太にはしていた。


 翼から打ち明けられた、”あの話”───蒼太は、翼が自分に見せた、背負っていた重みがとれたかのような笑顔を、思い出していた。


 テーブルを正面に、隣合って、室内に腰を下して数分後、翼が、静かに、口を開いた。


「……蒼くん」


 蒼太は、顔を上げた。


「さっきは……ごめんね。……いきなり、あんな話して」


 蒼太の目を見つめて、翼が、頭を下げた。


 蒼太は、先程、翼に「ありがとね」と言われた時と同じように、ぶんぶんと、首を横に振った。


 そして、翼の目に向かって、「先輩……」と、呼び掛ける。


「ぼくに、何か力になれそうなことがあったら……何でも……いつでも、言ってください」


 蒼太は、翼の心に届くようにと、強く、言葉を発した。


 誰に対しても優しくて、どんなときでも頼りになって、何も言わずとも、他人ひとの弱さに気づいてくれる人───。


 そんな翼は、きっと、自分のことで誰かを頼ることを、あまりしない───でも、それは時に、心の壁に、とても辛い思いを植えつくすはずだ。


 ───そんなことは、あってほしくない。


 もし仮に、自分の力でそれをなくす手助けができるんだとしたら───自分は迷いなく、その道を選ぶ。


 そう思って───蒼太は、「……とは、言っても……」と、目を伏せる。


「……ぼくは……、ただ、話を聞くことくらいしか、できないかもしれないけど……」


 力になりたいという思いは強いのに、自分に対する自信のなさが、顔を覗かせる。


 こういうとき、ああやって、自分の意志をはっきりと言葉にできたらいいのに……。


「───そんなこと、ないよ」


 蒼太の頭に、翼の声が、掛かった。


 蒼太が顔を上げると、翼は、優しく、目元を笑わせた。


「ただ───聞いてもらえるだけで、救われるものってあるんだって、僕は、教えてもらったから」


 そう言って、翼は、僅かに、視線を下に向けた。


「こんな言い方、おかしいかもしれないけど……」


 言葉を選ぶように、翼が、声を発する。


「……2人が聞いてくれて、嬉しかった」


 ぽつりと、自分の感情を吐露するように、翼は言った。


「あんな話……聞いてて楽しいわけないし、もしかしたら、僕が、いつまで経っても、過去のことを引きずって、くよくよしてるだけかもしれないって思ったら、中々、言い出せないなって思ってた……。……でも、さっき、2人に聞いてもらえて……楽になったんだ。たぶん……僕は、ずっと、気付いてほしかったんだと思う。それで、誰かに、解かってほしかった。……自分から言いだせない癖に察してほしいなんて、すごい、わがままなんだけど……」


 目を伏せたまま、言葉を紡ぐ翼に───蒼太は、強く、首を振った。


「……そんなこと、ないです」


 今度は、蒼太が、その言葉を口にする番だった。


 そして、蒼太は、出会ってから今までを通して、翼に対して感じていた感謝を、伝えることを決めた。


「ぼく……昔からずっと、自分の気持ちを言葉にして発信するのが苦手で、そのせいで、誰ともうまく話せない性格だったんです。”ASSASSIN”に入る前は、何でも話せる友達も、相談できる先輩も、一人もいなかったし、これからも……もしかしたら、一生そうかもしれないって、思ってました。……でも、先輩と出会った時、先輩は、ぼくがうまく言えない気持ちまで、全部察してくれて、ぼくのことを、理解してくれた……。そのとき……ぼくは、この人の隣だったら、自分のままでいていんっだ───って思えたんです。それで、ぼくは、この取調班で、先輩と一緒に仕事がしたいと思って、”ASSASSIN”に入ることを決めました。……だから……、先輩がわがままだっていうことになるなら……ぼくの方が、先輩より、ずっとずっと、わがままです」


 翼の瞳が、蒼太の瞳を捉える。


 ───新緑の葉のような、鮮やかなその瞳の中に、真っ直ぐに光が、差しこんだように見えた。


 やげて、翼は、「……そっか」と、頷いた。


「……ありがとう」


 ふわりと風が吹くように───翼は、微笑んだ。


 それは、蒼太が大好きな翼の表情だった。


「───じゃあ、取り調べの準備、始めようか」


 翼が、テーブル上の資料を持ち上げて、確認するように、蒼太を見る。


 蒼太は、自分の顔に、自然と笑顔が広がるのを感じながら、「はい」と、頷いた。

よろしければ、評価・ブックマーク登録、感想など、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ