プロローグ
プロローグ
僕は哲学者になりたい。
17歳とか18歳の頃、わりと真剣にそんなことを考えていた。
今思うとアホとしか言いようがないが、あのころはそれなりに純粋で、かつ必死で、かつ「ソフィーの世界」かなんかを読んだばっかりだったのだろう。
ならば哲学者とはいかなるものか?
昼間っから酒を飲み、テレビでワイドショーを見たり、外をぶらついて、近所の主婦に「俺は哲学者だぞ。このやろう」と言っていても、それはまあ、広い意味では哲学者なのかもしれないが、僕がなろうとした哲学者はもっとちゃんとした哲学者だ。
白いシャツの上に黒いカーディガンなんかをひっかけて、哲学書を片手に大学の講堂で抗議をし、女子学生に「先生、ちょっとわからないことがあるんですぅ。この後お時間があれば私のマンションまで来て教えてくれませんかぁ」「うむ。まあ、いいだろう。君はひとり暮らしかね?」と黒ぶちフレーム眼鏡を右手の中指でくいっとあげるような、そんな立派な学問探究の徒である。
哲学者になるためにはどうすればいいか?
熟考の末に僕が出した結論は哲学科のある東京の大学に進学することである。
人一倍勉強熱心な僕は、高校卒業後、高校で習う内容をさらに1年間自主的に勉強し、満を持して東京の大学へ通うこととなった。
ただ、ひとつ断っておくが僕が哲学者を目指したことはこの後のストーリー展開には全く関係がない。
ようするに僕は東京で暮らす大学生だと言いたかっただけだ。