221.おでかけ
いつも、誤字報告などもありがとうございます!非常に助かっております!
あの本以外にメモが書かれている本自体はあったのだが、本当に補足のようなメモで、日記のようなものが書かれた本は見つからなかった。
本を渡した日の夕食後に、母さんは書庫に行っていたようなので、思い当たる本を確認して回収したのかもしれない。
そして今日はドラードと一緒に買い物に出かけている。
寒いので理由もなく外に出る気はなかなか起きないが、買い物となると話は変わってくる。
――何かを買ってもらうわけじゃなくても、見て回るだけでも楽しいし、この冬の空気も嫌いではないからなぁ。まぁ今は"魔法で温かくしておいて何を言ってるんだ"って、自分でも少しは思うけど。
そう思いながら、速度を合わせてくれているドラードの隣を歩く。
出掛ける前に母さんから、"寒いから馬車を出してもいい"と言われていたが、この空気を感じたかったのであえて歩きを選んだ。
ドラードもそれに同意してくれたので一緒に歩いているのだが、荷物のことを考えると馬車を出せるならその方がよかったかもしれないと思う。
「せっかく馬車を出せるかもしれなかったのに、よかったの?」
「ん? 別に問題はないぞ。普段から"荷物があるから出してもいい"って言われてるが、こうやって周りを見ながら歩いて行くのもいいものだからな」
「そうなんだ? それならよかった」
「それに、馬車じゃなくても、カー坊と一緒なら寒くもないしなぁ」
ドラードはそう言って笑いながら頭を撫でてくる。
「いや、ドラードもできるでしょ……」
「できはするが、せっかくカー坊が使ってくれるなら俺まで使う事もないしな。それにこれもカー坊の魔法の練習の一環だ」
「またもっともらしいことを言って……まぁ別にいいんだけど……」
「ま、その代わり疲れたら抱き上げてやるから、言えよ?」
そんな話をしながら村のあたりに着くと、ステラとルナが見えた。
「あ、カーリーン様、こんにちは!」
「うん、こんにちは、ルナ、ステラ」
ステラのことは気軽に呼び捨てで呼んでいるからか、ルナもそれでいいと言い出したので敬称を省くことになった。
一応貴族である俺に"さん付け"で呼ばれるのを気にしていたのか、自分の姉であるステラが呼び捨てなのに、自分は敬称付きなのが嫌だったのかは分からないが。
「2人はお手伝い?」
「えぇ。といってもちょうど終わったところよ」
「それでお姉ちゃんと帰りながら話してたんです。あ、そうだ、カーリーン様。町のこっち側に新しく本屋さんができたの知ってます?」
「そうなの?」
町へついて行くことは多いが、新しい店舗などの情報はあまり入ってこない。
入ってこないというよりは、そもそも露店などは入れ替わりが結構あり、主にそのあたりで買い物をするので分からないという感じだ。
その分、ただ見て回るだけでも楽しくはあるのだが。
「えぇ、市場よりもこっち側にあるらしくて、このままルナとちょっと見に行ってみようって話をしてたの」
「へぇ~。結構本とか買うの?」
「うぅ~ん……平民でも買えるような額ではあるけど……あんまり気軽には買えないから、どんな店なのか見に行く程度にしようかと思ってたわ」
――そう言えば母さんも専門書は高いけれど、普通の娯楽用の本とかはそこまでじゃないって言ってたっけ。まぁそれでも平民の子供のお小遣いじゃそうなるか……。
そんなことを考えていると、ドラードがなにかを思いついたように手を軽くたたいた。
「そうだ。それなら、オレが2人にも買ってやるよ」
「え?」
急に思いもよらないことを提案されたルナは、ポカンとした表情でそう言う。
「嬢ちゃんたちにはカー坊がよくお世話になってるしな。それに、秋口にはかなりいい山菜を採って来てくれたし、その礼だ」
「それなら以前、お菓子を貰ったけど?」
「それはそれ、これはこれだ。あの山菜はすごかったからなぁ。あ、もちろん食費とかの経費からじゃなくて、オレ個人の金から出すからな?」
「え、で、でも、私はカーリーン様とお話ししてるくらいで、お姉ちゃんみたいに何かしたってわけじゃ――」
「ドラードさんがそう言うなら、ありがたく頂くわ」
遠慮しているルナの言葉に被せるように、ステラがそう言う。
「え、お姉ちゃん……」
「おう。それじゃあ案内してくれ」
ステラに続いてドラードまでその気になり、ステラの案内で歩き始めたので諦めたようだ。
「……いいのかなぁ……」
「気にしなくて大丈夫だよ。ドラードから言い出したことだし、こう言ったらあれだけど、俺は友達って呼べるのがルナとステラくらいだからね。出会ったら色々話してくれるだけでも楽しめてるから、ありがたいし」
「カ、カーリーン様もそう言うなら……」
ルナは遠慮気味にそう言いつつステラの背中を見ていたが、俺の言葉を聞いて若干照れつつ納得してくれたようだ。
――うん。我ながら友達宣言するのはちょっと気恥ずかしかったな……事実なんだけど、色々事情を知ってるステラと違って、ルナに言うのはさすがに。
その気持ちを切り替えるように、今日は何をしていたかなどの話をしながら移動する。
「カーリーンの周りは温かいわね……」
「まぁ魔法を使ってるからね。ステラもできるでしょ?」
「可能か不可能かで言えば可能だけど、魔力量がねぇ~」
ステラはどこかわざとらしい口調で、俺の目を見ながらそう言ってくる。
「あぁ~。そ、そうだよねぇ。今日もお手伝いしたあとだもんね」
――そっか。ルナに、魔法は使えるけど、魔力量とかを変に思われたくはないもんな?
そう思いながら別の話題を振り、本屋へ向かった。
橋を渡り、いつも市場へ向かう道の途中を曲がる。
位置的には橋の近くにあるステラたちの家と、市場の間くらいなのだが、この辺りは建物が密集しており、ちらほら色んな店舗も見える。
以前、アリーシアと一緒に買い物に行った店はもっと町の中央の方にあり、その店と比べるとこぢんまりとしている店ばかりだが、そういう店もそのうち入ってみたいなと思いながら、その前を通り過ぎていく。
「ここらしいわ」
ステラがそう言いながら立ち止まる。
途中にあった店と比べると若干大きく、直射日光を避けるためか窓の半分くらいをカーテンで覆っているが、その隙間から見えるところにも本を並べてあるのが見える。
「ほぉ~。結構広いみたいだな」
「そう言えばドラードって本読むの? あんまりそんなイメージないけど……」
「はっはっは。まぁそうだろうな。実際あまり読まんしな」
「"あまり"なんだ」
「あぁ。部屋にはあるし、持ってはいるぞ? まぁ、ここで話してても邪魔だし、入ってみるか」
「そうだね」
そう言って店に入ると、新しい店と言うことで改装したてなのか、木と紙のいい匂いがする。
「いらっしゃいませ~」
カウンターで本を読んでいた店員さんらしき人が、本を置いて声をかけてくる。
「ごゆっくり、お探しください」
赤毛の獣人の店員さんは、ニコッと微笑んでそう言ってくる。
「だそうだ。嬢ちゃんたちも見てきな」
「えぇ」
「はい!」
最初は遠慮していたルナも、大量の本を目の前にして嬉しそうに返事をしている。
「お客様は身なりから貴族さまだと思うのですが、本日はどのような本をお探しで?」
2人が離れていくと、店員さんが近くまできて話しかけてくる。
見た感じ20代半ばくらいの女性で、獣人にも様々な見た目の人がいるが、この店員さんは人間に近い容姿の方だ。
――尻尾や耳を見る感じ、キツネの獣人かな? いや、赤毛だし、狼とか? いやいや、毛の色は関係ないか? っと、あまり不躾に見るのも失礼だよな……。
そう思った俺は、そのフサフサでゆっくり揺れている尻尾から視線を外した。
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