03話 地上に召喚された
俺は城の壁を破壊して、外に出た。
中は寒いし、扉から出るのが億劫だったのだ。このままじゃ冷気が逃げて、象悪魔が復活するかもしれないから、創生スキルで壁は塞いでおいた。
外には町があった。城があるんだから、そりゃ城下町くらいはあるんだろうな。
町には案の定、悪魔が闊歩していた。なんならみんな俺のほうを見ていた。
ちなみに俺は翼を生やしたまま、空中にいる。みんなが俺のほうを見上げていて、誰一人話すらしていなかった。
変に静かだなーと思ってたら、俺を見上げていた悪魔の一人が突然大声で叫んだ。
「新しい魔王様の誕生だ‼ 新魔王様バンザーイ‼」
その声が波及していったのか、新魔王様コールが沸き起こる。
「魔王は力が全て‼」
「弱い魔王なぞいらん! これからはあの方についていくぞ‼」
「うおおおおお‼」
急展開すぎてついていけない。とりあえず地上に降りる。
どうやら俺と象魔王の闘いのせいで、城はおろか城下町にまで戦闘の振動は伝わっていたようだ。
俺が象悪魔を倒したのを、全員が把握している。
極端な実力主義がこいつらの価値観なのだろう。王様を殺されたって言うのに、こいつらは混乱するどころか、俺のことを讃えてすらくる。
そんな中、俺に向かって斧が飛んできた。危ねえよ。とっさに手で弾いたからなんとかなったけど。
「何が新魔王だ」
「人型の奴が魔王だなんて冗談にもほどがあらぁ」
「俺があいつを殺して、魔王になってやるぜ」
あいつらが斧を投げた張本人らしい。他にも同じ様なことを言って、俺に攻撃してくる奴がいる。
あーうざい。とりあえずまとめてレーザーで薙ぎ殺しておいた。
間違えて俺を讃えてた奴まで殺しちまったけど、誤差だ誤差。そう思ってたんだけど、なんかまずかったらしい。
「ふ、服従してた奴まで殺しやがった……」
「前王様なら、こんなことはしなかった!」
なんか文句を言われた。力が全てとかじゃないのかよ。こいつらの考えてることがわかんねえわ。
よくよく聞いてみると、俺を崇拝とかしてるわけじゃなくて、強さにビビって讃えるフリをしていただけっぽい。なんか馬鹿らしくなったので、創生スキルで町ごとまとめて蹂躙することにした。
創生スキルを発動する。
イメージは灼熱。
一瞬で町が燃え上がり、あたりにいた悪魔たちを燃やし尽くしていく。そこら中で火柱が立ち上がり、まさに地獄絵図となった。
まあ悪魔がいるわけだし、地獄になったところで問題ないよね。
ちょっと暑かったので、俺は空を飛んでその場を離れた。
岩山から突き出ている岩棚に着地して、燃える町を遠くから見ていた。寒いところにいたり、暑いところにいたりで、風邪ひくんじゃねえかなって心配していた時だった。
俺の頭上に、魔法陣が現れた。サークル状だし、見たことのない紋様があるから、魔法陣でいいだろう。
ちょっとだけ、上に引っ張られるような感じがする。この魔法陣に吸い込まれでもしているのだろうか。
魔法陣を破壊することもできそうだけど、あまり危険も感じないし、いっそ飛び込んでみるか。
俺は上に跳んで、そのまま吸い込まれていった。
■□■□■
そこは暗い部屋だった。ロウソクの火で、仄かにあたりが照らされている。
俺は大きな魔法陣の上に立っていて、周りには黒装束の人達が十人くらい立ち並んでいた。この世界に来て初めて人間を見るな。
全員が歓喜の声を上げている。
「とうとう悪魔を呼び出すことができた!」
「我々の悲願がようやく叶う!」
「我々を異教徒と蔑んできた者共に、裁きの鉄槌を‼」
そりゃ悪魔を呼び出す奴らを、異教徒といっても間違いじゃないだろうな。
話を聞くと、つまりこの魔法陣は召喚陣ってわけだ。最近、いろんなところに転移している気がするな。死んだ後とか、悪魔城とか。
「この悪魔は契約によって、我らに手出しすることはない。従順な僕だ」
「我らに従い、愚か者どもを駆逐せよ!」
うわー面倒臭いことになった。俺、こいつらの言いなりになるのかよ。
「さあ、存在を抹消されたくなければ、我らの命に従え!」
そう言って一人の黒装束が、俺に向かって杖を振りかぶってきた。俺はそれを躱して、そいつの頭を握りつぶした。
……あれ? 普通に抵抗出来たぞ。言いなりってわけじゃないのか。
「馬鹿な! 契約によって我々に干渉できないはずなのに!」
「儀式は成功したはず! いったいなぜだ!」
どうやら本来は反抗できないみたいだ。多分こいつらに、俺を従えさせるほどの力はなかったのだろう。
俺を思い通りに操ろうとしたのがカチンときたから、一人一人の頭を握りつぶすことにした。部屋から逃げる奴も、追いかけて命を刈り取っていく。創生スキルを使う必要もない。
最後の一人を、外に出ようとしたところで殺した。そいつが出ようとしたのは、梯子を登った先にあるハッチみたいなところからだった。
俺はハッチを開けて上に出た。
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ハッチを開けたら、教会みたいな雰囲気のところに出た。もう使われていないようで、ステンドグラスが割れていた。アーチ状の屋根に穴が開いていて、日が差し込んできている。
創生スキルで翼を生やして、屋根から外に出た。
空高く飛んで、適当なところで滞空した。
下を見てみると、そこにはきれいな街並みが広がっていた。見た感じは中世のヨーロッパのような光景だった。
さっきまでいた廃教会のあたりはスラムみたいになっていたけど、それ以外のところは結構栄えているような印象だ。少なくとも悪魔城の城下町よりは、住みやすそうな所だ。
せっかく異世界に来たんだ。観光としゃれ込もうかな。
次回、ヒロイン登場。