02話 悪魔の王に会いに行った
城の中を歩いていたら、大きな鏡があった。ふと、そこに映った自分の姿を見る。
カラスの羽みたいに黒く濡れた髪。金色に輝いている吊り目。頭にはくるんと丸まった角が左右から生えている。お手製のローブを着ていて、黒いしっぽがゆらゆらと揺れていた。
「悪魔に生まれ変わったのか」
ヒツジの頭とかウシの頭じゃなくてよかった。童顔な感じだけど、わりとカッコイイ。
「創生スキルを使えば顔も変えられるんだろうけど、このままでいいか」
自分の見た目を確認した俺は、王様探しを再開した。
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うろうろしている間に階段を見つけた。
王の間とかって大抵は上のほうにあるよな。城に入ったことないから知らないけど。イメージだイメージ。
ちなみにここに来る途中までに他の悪魔にも会った。最初に出会ったウシ頭みたいに、すぐケンカを吹っかけてきたから、光魔法で溶かしてやった。
逃げて仲間を呼びに行こうとした奴も殺した。多分、城の奴に俺のことは広まっていない。
階段を上った先には大きな扉があった。その前を、三又の槍を持った悪魔が二人、門番のようにして立っていた。
「貴様、侵入者か!」
「どうやってここまで入ってきた!」
同じ悪魔だろうに、なんで侵入者ってわかるんだろうな。城の中にいた悪魔は結構多かったし、全員を覚えてるわけでもないだろうに。服も別に統一とかされてないから、格好でバレるとも思わないんだけどな。
あれか、人型の奴は弱いから城に入れないとか言ってたあれかね。
「問答無用! 成敗してやるわ!」
門番悪魔達がそう言ってきたので、二人ともレーザーで溶かした。
でかい門を開ける。その先には、象の頭をした悪魔が玉座にいた。
めちゃくちゃでけえ。本物の象よりもでかい。よくあれで椅子が壊れないもんだと思った。
「人型の分際で、王の間に足を踏み入れるなど、不敬であるぞ!」
「曲者だ! ひっ捕らえろ!」
わらわらと、武器を持った数十人の悪魔が取り囲んできた。王様を守る近衛兵とか何かかな。ウザいからとりあえずレーザーをぶっ放して溶かした。
この広間にいるのは俺と、象頭の悪魔の二人だけになった。こいつが悪魔の王様かな。
「脆弱な人型悪魔がよくぞここまでたどり着いた。この玉座が欲しいか? 力づくで奪ってみよ」
いや、とりあえず会ってみただけなんですけど。世界を救えとか言われると思って来たら、バトルイベントが始まったみたいだ。ちょっと予想外。
「ふはは、ここまで儂の配下を殺めておきながら、のんきなことを考える奴だ。どうやら悪魔の弱点である光魔法を使うみたいだが、それだけでは儂には勝てん」
ここまできて、ふと思った。世界が滅びる原因って、この悪魔の王なんじゃないかって。
こいつを倒せば世界の危機とか去るんじゃないの。世界を救う気なんてなかったけど、こいつ倒して解決するなら、やってあげなくもないかな。
とりあえずレーザーを撃つ。
玉座から象頭の悪魔が消えた。
やったか。
直後に俺の体が真横に吹っ飛ぶ。柱などを破壊しながら、盛大な音をたてて俺は壁に激突した。
やったか、なんてあからさまなフラグを立てることになるとは思わなかった。
「ほう、儂の一撃を受けても立てるか。久しぶりに腕が鳴るのう」
今の一撃で埃が舞って、鼻がむずむずする。そんなことに気を取られていたら、目の前に象悪魔が接近していた。
「ほれ、もう一発だ」
また吹っ飛ばされるのはごめんだ。
さっきはレーザーを躱された。こいつはかなり素早い。まずは動きを止めるために、どうにかしよう。
俺は創生スキルで、象悪魔を止めるためのものを考える。頭に浮かんだのは鎖だった。
奴の足元から出現した太い鎖が、象悪魔を雁字搦めにする。象悪魔は俺に拳を突き出したまま、動かなくなる。
「な!? これはまさか、グレイプニルの鎖!? このような神具を持っておるとは!? 貴様何者だ!」
なんか勘違いしてるみたいだけど、これはお前の動きを止めるために即興で考えた代物だよ。
そのまま身動きの出来なくなった象悪魔に対して、俺は光魔法のレーザーを放出した。
象悪魔の体は、プスプスと音をたてながら焦げていた。今までの奴らが瞬殺だったのを考えると、さすがは悪魔の王といった感じだった。
目の前には誰も座っていない玉座がある。せっかくだし座ってみるか。王様気分を味わってみたいしな。
そう思って玉座のほうに歩みを進めていたら、後ろで卵の殻が割れるようなパキパキという音がした。振り向いたら、さっきの象魔王の死体から脱皮するように、何者かが生まれていた。
先ほどの象悪魔よりも体が大きく、腕も六本になっていた。
「まさか儂の真の姿を晒すことになるとは思わなかったぞ」
そう言って、象悪魔は部屋の中を縦横無尽に跳ね回った。
レーザーを放つも、かすりもしない。先ほどよりも素早さが上がっているようだ。
さっき動きを止めたように鎖を出してみるが、警戒されているのか、なかなか絡めとれない。次第に距離が詰まり、六本の腕が暴風のように俺に迫る。
どうすればこいつを仕留められるかは、まだ考えつかない。まずは攻撃を躱すことに専念した。
創生スキルを発動する。
イメージは翼。
俺はその場で跳躍し、象悪魔の攻撃を躱した。そのまま部屋の中を旋回して、こいつをどう倒すかを考える。
だが奴はその隙を与えないかのように猛攻してくる。象悪魔は三角跳びの要領で壁を蹴りあがり、またも俺に近接戦を仕掛けてくる。
王の間は広い空間だが、戦闘機動を行う上では少し狭い。空中を移動できても、大きなアドバンテージにはならない。どこにいても、象悪魔はすぐに俺に近づいてくる。
そこまで考えて俺はこいつを倒す策を思いついた。奴は素早く、こちらの攻撃は避けられる。そして俺は、どこにいても象悪魔の攻撃範囲からは逃れられない。
だったらこちらも範囲攻撃をすればいいだけの話だ。
俺は創生スキルを使用する。
イメージは凍結。
部屋全体に氷が張る。揺れていた旗も、舞っていた埃も。熱が奪われ、それら全ての動きが停止する。
そして象悪魔すらも動きを止め、奴は物言わぬ氷の彫像となった。
俺は勝利した。部屋はひどい寒さだが仕方ない。
下手に象悪魔を倒したら、また第三形態とか出てきかねないからな。王の間は、このまま極寒地獄にしておこう。
そして俺は王の間から出た。玉座に座ることは忘れていた。




