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02話 悪魔の王に会いに行った

 城の中を歩いていたら、大きな鏡があった。ふと、そこに映った自分の姿を見る。


 カラスの羽みたいに黒く濡れた髪。金色に輝いている吊り目。頭にはくるんと丸まった角が左右から生えている。お手製のローブを着ていて、黒いしっぽがゆらゆらと揺れていた。


「悪魔に生まれ変わったのか」


 ヒツジの頭とかウシの頭じゃなくてよかった。童顔な感じだけど、わりとカッコイイ。


「創生スキルを使えば顔も変えられるんだろうけど、このままでいいか」


 自分の見た目を確認した俺は、王様探しを再開した。




 ■□■□■




 うろうろしている間に階段を見つけた。


 王の間とかって大抵は上のほうにあるよな。城に入ったことないから知らないけど。イメージだイメージ。


 ちなみにここに来る途中までに他の悪魔にも会った。最初に出会ったウシ頭みたいに、すぐケンカを吹っかけてきたから、光魔法で溶かしてやった。


 逃げて仲間を呼びに行こうとした奴も殺した。多分、城の奴に俺のことは広まっていない。




 階段を上った先には大きな扉があった。その前を、三又の槍を持った悪魔が二人、門番のようにして立っていた。


「貴様、侵入者か!」

「どうやってここまで入ってきた!」


 同じ悪魔だろうに、なんで侵入者ってわかるんだろうな。城の中にいた悪魔は結構多かったし、全員を覚えてるわけでもないだろうに。服も別に統一とかされてないから、格好でバレるとも思わないんだけどな。


 あれか、人型の奴は弱いから城に入れないとか言ってたあれかね。


「問答無用! 成敗してやるわ!」


 門番悪魔達がそう言ってきたので、二人ともレーザーで溶かした。




 でかい門を開ける。その先には、象の頭をした悪魔が玉座にいた。

 めちゃくちゃでけえ。本物の象よりもでかい。よくあれで椅子が壊れないもんだと思った。


「人型の分際で、王の間に足を踏み入れるなど、不敬であるぞ!」

「曲者だ! ひっ捕らえろ!」


 わらわらと、武器を持った数十人の悪魔が取り囲んできた。王様を守る近衛兵(このえへい)とか何かかな。ウザいからとりあえずレーザーをぶっ放して溶かした。




 この広間にいるのは俺と、象頭の悪魔の二人だけになった。こいつが悪魔の王様かな。


「脆弱な人型悪魔がよくぞここまでたどり着いた。この玉座が欲しいか? 力づくで奪ってみよ」


 いや、とりあえず会ってみただけなんですけど。世界を救えとか言われると思って来たら、バトルイベントが始まったみたいだ。ちょっと予想外。


「ふはは、ここまで儂の配下を殺めておきながら、のんきなことを考える奴だ。どうやら悪魔の弱点である光魔法を使うみたいだが、それだけでは儂には勝てん」


 ここまできて、ふと思った。世界が滅びる原因って、この悪魔の王なんじゃないかって。


 こいつを倒せば世界の危機とか去るんじゃないの。世界を救う気なんてなかったけど、こいつ倒して解決するなら、やってあげなくもないかな。


 とりあえずレーザーを撃つ。


 玉座から象頭の悪魔が消えた。

 やったか。




 直後に俺の体が真横に吹っ飛ぶ。柱などを破壊しながら、盛大な音をたてて俺は壁に激突した。


 やったか、なんてあからさまなフラグを立てることになるとは思わなかった。


「ほう、儂の一撃を受けても立てるか。久しぶりに腕が鳴るのう」


 今の一撃で埃が舞って、鼻がむずむずする。そんなことに気を取られていたら、目の前に象悪魔が接近していた。


「ほれ、もう一発だ」


 また吹っ飛ばされるのはごめんだ。


 さっきはレーザーを躱された。こいつはかなり素早い。まずは動きを止めるために、どうにかしよう。


 俺は創生スキルで、象悪魔を止めるためのものを考える。頭に浮かんだのは鎖だった。


 奴の足元から出現した太い鎖が、象悪魔を雁字搦め(がんじがらめ)にする。象悪魔は俺に拳を突き出したまま、動かなくなる。


「な!? これはまさか、グレイプニルの鎖!? このような神具を持っておるとは!? 貴様何者だ!」


 なんか勘違いしてるみたいだけど、これはお前の動きを止めるために即興で考えた代物だよ。


 そのまま身動きの出来なくなった象悪魔に対して、俺は光魔法のレーザーを放出した。




 象悪魔の体は、プスプスと音をたてながら焦げていた。今までの奴らが瞬殺だったのを考えると、さすがは悪魔の王といった感じだった。


 目の前には誰も座っていない玉座がある。せっかくだし座ってみるか。王様気分を味わってみたいしな。




 そう思って玉座のほうに歩みを進めていたら、後ろで卵の殻が割れるようなパキパキという音がした。振り向いたら、さっきの象魔王の死体から脱皮するように、何者かが生まれていた。


 先ほどの象悪魔よりも体が大きく、腕も六本になっていた。


「まさか儂の真の姿を晒すことになるとは思わなかったぞ」


 そう言って、象悪魔は部屋の中を縦横無尽に跳ね回った。


 レーザーを放つも、かすりもしない。先ほどよりも素早さが上がっているようだ。


 さっき動きを止めたように鎖を出してみるが、警戒されているのか、なかなか絡めとれない。次第に距離が詰まり、六本の腕が暴風のように俺に迫る。




 どうすればこいつを仕留められるかは、まだ考えつかない。まずは攻撃を躱すことに専念した。


 創生スキルを発動する。

 イメージは翼。


 俺はその場で跳躍し、象悪魔の攻撃を躱した。そのまま部屋の中を旋回して、こいつをどう倒すかを考える。


 だが奴はその隙を与えないかのように猛攻してくる。象悪魔は三角跳びの要領で壁を蹴りあがり、またも俺に近接戦を仕掛けてくる。


 王の間は広い空間だが、戦闘機動を行う上では少し狭い。空中を移動できても、大きなアドバンテージにはならない。どこにいても、象悪魔はすぐに俺に近づいてくる。


 そこまで考えて俺はこいつを倒す策を思いついた。奴は素早く、こちらの攻撃は避けられる。そして俺は、どこにいても象悪魔の攻撃範囲からは逃れられない。



 だったらこちらも範囲攻撃をすればいいだけの話だ。


 俺は創生スキルを使用する。

 イメージは凍結。


 部屋全体に氷が張る。揺れていた旗も、舞っていた埃も。熱が奪われ、それら全ての動きが停止する。



 そして象悪魔すらも動きを止め、奴は物言わぬ氷の彫像となった。




 俺は勝利した。部屋はひどい寒さだが仕方ない。


 下手に象悪魔を倒したら、また第三形態とか出てきかねないからな。王の間は、このまま極寒地獄にしておこう。


 そして俺は王の間から出た。玉座に座ることは忘れていた。

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