File3 人類発見です。
本日ラストです。
よろしくお願いします。
人類のみなさま、こんばんわ。
通訳ロボット『カイ』です。
引き続き異世界生活3日目です。
生活というほど、生活はしていませんが……。
さて、あれから軽く50キロほど歩いてみました。
すっかり景色が変わって……――とお伝えしたいところなのですが、相変わらず山、平原、森です。三種の神器ならぬ――三種の景色です。
少々情報に飽きてきました。
新しいデータがほしいところです。
ちなみに相変わらずダウンロード作業が終わりません。
進捗「1%」のままです。
カイの人工知能は1世代前ですが、それなりに優秀です。
ですが、今回なかなか仕事してくれません。
ニート人工知能です。すいません……。
ともかく今は前進あるのみです。
てくてく……。てくてく……。てくてく……。
おや……。
道の上に何か見えます。
ここから5キロ先。
黒い岩のような塊があります。
隕石でしょうか?
道を塞ぐようにしてあります。
ちょっと足早に歩いてみましょう。
タッタッタッ……。タッタッタッ……。タッタッタッ……。
おお! もしかして、これは……。
人類のみなさま、聞いてください。
なんとなんと岩の近くに人類がいます。
麦わら帽子に、首には手ぬぐいを持っています。
2本足で直立して、鍬とそっくりな道具を持っています。
年はそうですね……。
肌年齢から考える50代ぐらいのおじさん……? おじいさん?
微妙なお年頃です。
農家の方でしょうか。
肌がナチュラルに焼けています。
岩をのぞき込みながら、首を傾げています。
文明の利器的なものは持っているようには見えませんが……。
異世界ではじめての人類発見。
第1村人です!!
村人かどうかはわかりませんが、仮にそういう名前にしておきましょう。
村人さんはずっと岩を見ています。
近づいてくるカイに気づいていません。
ファーストコンタクトです。
あまり警戒されないようにしたいものです。
あ。でも、何語で話しかけたらいいのでしょうか?
英語? ドイツ語? フランス語? 中国語?
異世界の言葉なんて、私のデータベースにはありません。
とりあえず、日本語で話してみましょう。
ともかく挨拶です。
挨拶は基本です。
ここは元気よくいきましょう。
元気あれば、なんでも伝わるはずです。
では、こほん――――。
こんにちは!!!!
「うわ……!! びっくりした」
村人さんは思わず腰を抜かしてしまいました。
ぺたん、と尻餅をつきます。
カイも驚きました。
村人さんが喋る言葉が日本語だったからです。
すごいです、日本語!
すいません。驚かせてしまいましたか?
「あ、ああ……。そりゃあ、突然背後から大声を出されたらね」
ごめんなさい。
カイは深々と頭を下げて、謝罪しました。
「ああ……。いいよいいよ。そこまでしなくても。気づかなかった私も悪いんだから。でも……。元気がいいのは良いことだけど、もう少し声を抑えた方が良かったかな」
ピロリン……。
評価を受けました。
なるほど……。
確かに、背後から声をかける時は、もう少し声を小さくした方がいいですね。
学習しました。
「ところでどこのどなたかな?」
はじめまして。カイは通訳ロボット『カイ』と言います。
「ロボット? ロボットは名字かな?」
名前はカイです。ロボットはロボットです。
人類のみなさまを幸せにするため、ご奉仕する存在です。
「???」
ますます村人さんは首を傾げます。
岩を見ていた以上に、角度がついています。
カイは何か変なことを言いましたでしょうか?
「いや、すまない。なんでもないんだ」
慌てて手を振ります。
カイから顔をそらし、ぶつぶつと小さな声で呟きました。
「…………奉仕ということは、奴隷かな? それともその子供……? どこかの貴族から逃げてきたのか……。それとも迷子……」
村人さんの声は、カイの聴覚センサーがすべて拾っていました。
もしかしたら、カイに配慮するために小さな声で呟いたのかもしれません。
ここはカイも大人の対応をしましょう。
記録を消去します。
作業を終えると、カイは尋ねました。
こんなところで何をやっているのですか?
「え? ああ……。見ての通りだよ」
村人さんは岩に振り返りました。
大きいです。
高さはおよそ6メートル。円周は30メートルぐらいあります。
とにかく大きな岩です。
しかし、おかしいですね。
この岩、何か動いているような気がします。
センサーがおかしいのでしょうか。
チェックします。……センサーに問題ありません。
やはり、岩は動いています。
詳しく分析してみます。
あれ?
何か長い首のようなものが見えます。
そして顔。人の頭ぐらいある大きな目。ワニのような顎まで見えます。
カイはさらに分析します。
鋭い爪が付いた手があります。
足があります。
大きなおなかがあります。
よく見ると、羽らしきものが折りたたまれて、岩のような身体を覆い隠していました。
鼻からふんふんと息を吐いたり、吸ったりしています。
今、カイの目の前にあるのは、岩などではありません。
巨大な生物なのです。
しかし、カイはこんな生物を見たことがありません。
検索してみました。
カチカチ……。カチカチ……。カチカチ……。
1件、ヒットしました。
なんと!
人類のみなさま。
どうやらこれは……。
ドラゴンです!!
今日はここまでです。
さて、いかがだったでしょうか?
明日も4本投稿の予定です。
今日と同じ7時に第4話を投稿しますので
よろしくお願いします。
※ ちょっと変わった試みのお話なので、
感想や評価などをいただけるとありがたいですm(_ _)m