File2 ダウンロードが終わりません。
第2話です。
よろしくお願いします。
人類のみなさま、こんばんは。
通訳型ロボット『カイ』です。
そろそろ名前を覚えていただけた頃でしょうか?
さてさて、1日目に大変なことが発覚しました。
カイは異世界にいるのです。
そして人工知能に未知の記憶領域を発見。
現在も、絶賛ダウンロード作業中で、ただいま異世界3日目を迎えております。
え?
2日目はどうしていたかって?
ずっと道ばたで船をこいでました。
鼻提灯をふかしながら……。
カイはスリープモードに入ると、自動的に動作するようになっています。
すべては人類のみなさまのおそばにいて、ストレスなく使ってもらうためです。
しかし、弱りました。
異世界に来てから、弱ってばかりです。
ダウンロードが終わりません。
相当データが重いんでしょうか?
進捗は「1%」のまま。
1度、再起動かけたりして試してみたのですが、一向によくなりません。
常にメモリー領域を取られているので、他の思考ルーティンにも影響が出ています。
人類のみなさまでいうところの「頭が重い」っていう感覚ですね。
ですが、カイの悩みはダウンロードだけではありません。
このままではカイは止まってしまいます。
そうです。
カイはロボットなのです。
人類のみなさまがお食事を取るように、カイもエネルギーの補給が必要です。
むろん、カイを動かしているのは電気です。
家庭用電気だと5時間。
専用充電器だと2時間でフル充電されます。
セーフモードで、最大240時間の稼働が可能になります。
昔のスマホやノーパソよりも長く稼働できるのです。
そこがカイの“売り”です。
しかし、このままでは5日ほどで稼働を停止してしまいます。
電源確保の時間も思考すると、由々しき事態です。
そこでカイは決断しました。
この場を離れ、人里に行くと……。
幸いカイがいる場所は人道です。
おそらく道の先には人類のみなさまがいるはず。
文明のレベルはわかりませんが、なんとか電気をお借りするしかありません。
は! そういえば……。
カイはお金を持っていません!
異世界のお金どころか、諭吉さんも持っていません。
電気はタダではありません。
お金も払わず使えば、盗電になってしまいます。
いえ……。
今は考えても仕方ないことです。
ともかく人類のみなさまを見つけることが先決です。
筋繊維の固定を解除。
カイは立ち上がります。
さて、どちらに行きましょうか。
聴覚センサーを使ってみましたが、おそらく10キロ範囲内に人の声らしきものは聞こえません。
確定要素がない以上、カイが判断するのは難しいです。
ここは“神様”に決めてもらいましょう。
カイは手頃なサイズの棒きれを探しました。
幸いにも、道から少し離れた野原に木の棒がありました。
道に戻ってきて、垂直に立てます。
バランスを失った棒が倒れた方向に進むことに決めました。
しかし……。
うーん。このままでは木の棒は絶対に東を向いて倒れてしまいますね。
棒の重心が右に寄っているからです。
視覚と触覚のセンサーを使えば、すぐにわかります。
木の棒についた皮をはぎました。
苦心の末、重心を均等にすることができました。
もう1度、垂直に立てます。
やはりまだダメです。
今度は西に倒れてしまいます。
道が左に2°ほど傾斜しているからです。
カイは地面を掘って、正確な水平を作りました。
そこに再び棒きれを垂直に立てます。
弱りました。
今度は南から微風です。
このままでは北に倒れてしまいます。
北に道はありません。
あるのは薄暗い森と山だけです。
カイは南の方に後背部を向けました。
風よけになるのです。
これで確定要素はありません。
あとは不確定要素だけです。
つまり運です。
カイは垂直に立てた棒からそっと手を離しました。
棒はしばらく立っていました。
それはそうです。
重心位置、水平も完璧です。
けれども、完璧すぎました。
いくら待っても、棒は倒れてくれません。
木の棒は、10分以上も耐えていました。
弱りました。
このままではどっちに歩けばいいかわかりません。
陽が落ちてしまうのではないでしょうか……。
すると、風向きが突如変わりました。
東から吹いてきたのです。
カイは風よけになろうと思考し、移動しました。
だけど、遅かったです。
棒きれは、コロンと可愛い音を立てて、西を向いて倒れてしまいました。
カイは西を見ました。
時折、曲がりくねった道が地平の果てまで続いています。
カイは決めました。
西へ行きましょう。
頭を下げます。
倒れた棒にです。
ありがとう、棒さん。
ありがとう、神さま。
感謝しました。
カイは歩き出します。
異世界の新たな1歩です。
てくてく……。てくてく……。てくてく……。
3部かけて、ようやく動く主人公がいるらしい。
本日ラストは21時になります。
よろしくお願いします。




