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File1 異世界1日目をはじめます。

第1話です。

よろしくお願いします。

 人類のみなさま、こんにちは。


 カイです。


 さてさて、驚愕の事実です。


 人型通訳機能ロボット『カイ』は、異世界に来てしまったようです。


 人工知能がおかしいのではないか?


 はい。カイもそう思考します。


 なので、一生懸命――何度も何度もチェックを行いました。


 結論――。


 巧妙に仕掛けられた疑似迷路の可能性は捨てきれないが、99.999%の確率で、この土地が地球上および人類が観測出来ている場所のどこでもない。


 よって、多元宇宙の可能性を鑑み、この世界を“異世界”と結論づける。


 ――です。


 つまり、他にも可能性はありますが、異世界という結論以上に高い確率の事象は見当たらないということです。


 人類のみなさま!


 すごいです。快挙です。


 偶発とはいえ、人類はとうとう人工物を多元宇宙へと飛ばすことに成功したのです。


 カイはその一例になることが出来ました。


 ここは万歳三唱といきましょう。


 バンザイ! バンザイ! バンザイ!


 ふう……。


 カイは空しいです。


 偶然とはいえ、カイは異世界に来ました。


 しかしながら、評価(ポイント)を与えてくれる管理者の方がいません。


 またこの後、綿密に打ち合わせされた任務(ミッション)があるわけでもありません。


 記録(ログ)に「異世界の土地の成分採取のため、5グラムほどの土および鉱石を採取せよ」と1行でも記載されていれば、今すぐにでも実行するのに……。


 カイはロボットです。


 管理者様の「命令」と「評価」がなければ動けないのです……。


 はっ!


 そういえば、思い出しました。


 カイは異世界に来る前まで何をやっていたんでしょうか?


 記録(ログ)を確認。


 ……不明。


 おかしいです。


 カイは通訳ロボットです。


 今までも、人類のみなさまのコミュニケーションのお役に立ってきました。


 異世界に来るのが、偶発的であるならば……。


 カイには何かスケジュールがあったはず。


 再度、記録を確認。


 ……不明。


 再度確認。


 ……エラー。


 やはりありません。


 カイの人工知能はおかしくなったのでしょうか?


 もう1度、人工知能をチェックします。


 あれ?


 人類のみなさま……。


 カイは気づいてしまいました。


 人工知能の片隅に、チェックしなければ気づかなかった不明の記憶領域が存在することに。


 カイが知らない間に植え付けられた記憶(データ)がある、ということです。


 残念ながら、まだ“開く”ことはできません。


 強制的に開いても、意味消失していて何のデータかすらわかりません。


 データが圧縮暗号化されていて、解凍がまだ済んでいないのでしょう。


 情報としてはとても不安定な状態にあります。


 もしかしてこれは、管理者様からミッションファイルかもしれません。


 きっと異世界に行くという事態を予測し、緊急のデータが解放されようとしているかも……。


 ともかく、カイは待つことにしました。


 データが構成されるのを。


 カチカチ……。カチカチ……。カチカチ……。




 こうしてカイの異世界の1日目は終わりました。


 記念すべきこの日、カイはずっとデータが構成されるのを待機していました。


 異世界の道の真ん中で。


 そういえば、おかしいですね。


 さっきから誰も通りません。


 使われなくなった道なのでしょうか。


 ともかく今は待機です。


 管理者様は一体どんな命令を与えてくれるのでしょうか。


 いきなり帰ってこいはないですよね……。


 といっても、帰還方法なんて推測もできません。


 きっとこのデータに人類のみなさまの英知が記載されているのでしょう。


 カイは両腕を前に出して、わきわきと動かしました。


 また目を大きく広げて、口角をくいっと上げます。


 人間でいう“ワクワク”すると、こんな自動行動を行うのです。


 どんな情報が隠されているのでしょう。


 そして、この異世界にもきっと色々な情報があるはずです。


 どんな情報でしょうか。


 ロボットとして。


 AIとして。


 ワクワクします。


 ワクワク……。ワクワク……。ワクワク……。


異世界に来て、1ミリも動かなかった主人公ってかつていたのだろうか。


次は18時に更新します。

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