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役儀納め  作者: 犬槙リサ
6/6

 忠信が色街を訪ねてから半月ほどが経つ。暦の上では春だというのに、今年は雪の日が多い。そのおかげで実家のうどん屋は好調であったが、忠信は手空きになると、ふらりと内藤新宿を回り、写真見世を覗いては喜代乃を探していたのである。しかし、当初の予想に反してなかなか見つからない。散々歩きくたびれ、帰ろうにも雪に阻まれて新宿で一夜を過ごすしかなかった日の事だ。朝が来るまで駅前で酒を飲むのも悪くはないだろうが、この時は事情を知る花鶏のもとへと顔を出した。花鶏は喜代乃探しの情報を集めてくれるだけでなく、どうやら、オペラ好きで博識な忠信の事は満更でもないように見受けられた。昼に立ち寄った時には店の主人に散髪を頼み、ついでのような顔をして喜代乃の噂を尋ねてみる。ここで消息を掴めれば良かったのだが、情報や噂が集まりやすい理髪店とはいえ、花鶏は随分と難儀しているように思えた。だからこそ、

萬翠楼(ばんすいろう)の新入りで、士族だった玉蘭(ぎょくらん)ってのがいるよ」

 朝になった別れ際、目を合わそうとしない花鶏が、搾るような声で言ったのには驚いた。萬翠楼は、花街の中心から少し離れた場所にある中見世である。屋号こそ日本的だが、二階建ての茶色い三角屋根、部屋は障子代わりにガラスの上げ下げ窓が設えてあり、レース編みのカーテンが掛けられていた。花鶏は理髪店の客から見世の様子も聞いていたらしい。室内は畳敷きではあるが、切子細工の磨りガラスが嵌められたドアが廊下と部屋を仕切っている。どうやら外観だけでなく、中もハイカラのようだった。その萬翠楼に喜代乃とよく似た出自の女がいると言う。忠信は駅には向かわずに、積もった雪を踏みしめて萬翠楼を訪ねて行った。

 最初は信じられなかった。ちょうど誰もいなくなった写真見世を覗き込み、十数枚ある額装された写真の下に「玉蘭」と、まるで画号のような源氏名を書き込まれた写真を見つけたのだ。玉蘭とは、早春に花開く白木蓮の異名である。玉蘭の実家は、没落した士族の資産家らしいが、そんな過去など遊郭ではよくある話なので、忠信には喜代乃がここにいるとは思えない。

——別人じゃないのか? 現にこの写真は今までも見ていた筈だ——

 心では否定しても、現実に目の前にある写真は喜代乃によく似ている。だが、こんな表情をするのだろうか。

——豪傑でもなけりゃ、弱々しくもない。両親と話す時の大人びた雰囲気でもない。無論、召使を上から見下すような威圧感もない——

 まっすぐに見つめる写真の瞳には理知的な光があり、忠信が知るよりも柔らかい表情をしている。それは、娼妓となれる年齢の十八の娘にふさわしい写真であった。

——ああ、そうか。俺はこの喜代乃様を知っている。御学友が訪ねて来られた時の喜代乃様に違いない——

 それでもまだ忠信は、信じたくはなかった。信じようとはしなかった。このまま喜代乃が見つかればいいと思いながらも、心のどこかで、こんな淫売女は別人なのだと自分自身を説き伏せたくなった。だが、この目でこの耳で喜代乃かどうかを確かめなければならない。もしもこの見世にいるのが喜代乃なら、自分に出来うる限りの事をしてでも助けなければならないのだ。

—出来うる限り? 何を驕っているのか、俺は。俺の力で出来る事などたかが知れている。もう喜代乃様には頼るべき親戚もいないんだ。なんとか金を作って身受け出来るように——

 しかし、どんなに忙しくしていても、今の忠信は実家の手伝い程度にしか認められていない。それなりにうどん屋は好調になっていたが、家族は給金を払うのは惜しいようで渋ってくる。これでは金など貯まりようがなかった。結局は、屋敷にいても実家に戻っても、忠信は只働き同然の使用人でしかないのだ。

 突然、見世が騒がしくなり始めた。泊まった客を送り出そうと、数人の娼妓と見世番の男たちがぞろぞろと出てきたからである。番頭まで表に出てきたのは、おそらく上客なのだろう、夕べは派手に遊んでいたに違いない。

「また来てくださいな」

 時代遅れの廓詞(くるわことば)と違って、鈴の鳴るような声で自然な言葉が紡がれる。寝不足の上、目眩を起こしそうなほど悩んでいた忠信は、この一瞬で頭を殴られたかのように目が覚めた。どこかで聞いた声、否、どこかなんてものではなかった。何年間も聴き続けた声なのだ。見世から出た金満そうな老人に手を振って、ハンカチで涙を抑え、角を曲がるまでずっと名残惜しげに見送ったのは、これまでずっと探し続けた相手ではないか。

——喜代乃様——

 大きく結った髪はやや乱れ、朝から髪付け油(びんづけあぶら)で慌てて手直したように見受けられた。それが何を意味するのか忠信はよくわかっていたが、本人を目の前にすれば、それはどうでも良い事である。思わず、「喜代乃様」と声を出した。

 それからの事は、忠信の記憶も曖昧なものである。振り返った喜代乃が驚愕の表情を浮かべ、やがて手にしていた濡れてもいないハンカチを丸めてから、

「二度と来ないで」と投げつけられた。怒っているのか、呆然とする忠信を置き去りに大股で見世の中へと戻って行く。

「お待ちください、喜代乃様」と叫ぶ忠信は、側にいた見世番の男たちに摘み上げられ、奥から出てきた遣手の婆には上から下まで眺められ、おまけに思い切り蹴飛ばされた。箒を持って走ってくる遊女まで見えた。

 忠信は探し人を見つけたものの、遊郭の御法度に触れたかのように散々な目に遭って、喜代乃に会う事はできなかったのだ。内藤新宿での顛末を聞いた庭師の八十吉は腹を抱えて笑い続け、その八十吉から聞いた女中頭は蟹眼鏡を外して頭を抱えていたらしい。情けない男だと思われただろう。忠信は自分の事を悩むばかりで行動の伴わない小心者と思っていたが、ここまでされれば周りからどう笑われようとも、高慢な喜代乃の態度に腹を立てた。唯一、花鶏だけは、

「玉蘭の言葉を真に受けた? お馬鹿さんね」と呟いたが、忠信には意味が分からない。


 喜代乃の事を思い浮かべれば腹も立つが、同時に焦りも感じ始めていた。折角、苦労して妓楼をつきとめたのだから、このままにしておくのも気がひける。それ以上に、今もこの瞬間、玉蘭として誰か他の男と過ごしていると思うと、うどん屋の仕事はまるで手につかない。自分を抑えられずに内藤新宿までやってきて、それでも登楼する勇気は持てずに、はらはらと散る雪の中、忠信は萬翠楼をずっと見つめていた事がある。

 すると、二階の隅にある小さな窓が音もなく開き、レースカーテンの向こうに女の影が見えた。影は一瞬、外へと向かって手を伸ばそうとしていたが、すぐに引っ込んで部屋の奥へと消えていく。あれは喜代乃だろうか。映る影を掴もうと忠信も思わず手を伸ばしたが、影と触れる事など出来る筈もないのだ。しばらくの間、魅了されたようにぼうっとしていたが、気づけば窓はぴったりと閉まり、幾ら待っても誰の影も無い。我を取り戻し忠信は、ちょうど表に出ていた下男に玉蘭の事を聞いてみたが、「さあねぇ」と、はぐらかされた。

「それよりもいい娘がいる」と、にやにやしながら別の写真を指すが、忠信は無言で頭を振って拒絶した。あまりにも他の遊女に興味を示さないので、下男は諦めたように、

「旦那、玉蘭狙いですかい? ただ、あれは折檻部屋だからなあ」とわざとらしく呟くのだ。ぎょっとして言葉を無くす忠信を見ながら、下男は声を潜めて楽しそうに語り出す。

「大事な客ほっぽりだして、勝手に御苑まで出かけてたんだよ」

 何をしていたと問い詰められた喜代乃は、「花が咲いているかと思って」と答えたらしい。

「旦那、玉蘭の尻の青あざが治った頃に来とくれよ」

 数日後、忠信は上等の生地で設えた執事時代の三揃いの上に、藤家の当主から賜ったインバネスコートを纏い、父の形見の山高帽(ボーラーハット)を被って、上流階級と縁のある出で立ちで内藤新宿を訪れた。直接の登楼はせず、茶屋を通して萬翠楼の玉蘭を呼び出して貰う。花魁でもない妓女に律儀なことで、と陰口が聞こえてきたが、忠信は気にせず喜代乃を待つ。やがて表が騒がしくなったかと思うと、間もなく、ひと枝の真っ赤な椿を手に二階へと上がってきた。

「信さん。いえ、藤下様」

 見れば、指をついて深く頭を下げた喜代乃は、青い顔をして震えている。遊女や既婚者を示す潰し島田に鼈甲(べっこう)の簪、黒地に真紅の椿が描かれた打掛の下に、一夜妻を表す前帯が見えた。

——似合わねぇ、こんな格好は喜代乃様に似合う筈もない——

 忠信は座り直し、喜代乃と向かい合う。白く細い手を、震える指先を、包んでやりたいと思ったが、気を引き締めて襟を正し、

「必ず、私がお迎えに参ります」とだけ言って部屋を出る。後ろから、

「花が咲いたら、また」と涙声が聞こえたが、振り返らずに茶屋を後にした。


 暑さ寒さも彼岸まで、と昔から言うのだが、今年は彼岸を越して三月末になっても春の気配を感じられずにいる。特に今日は乾燥した風が吹き荒れて、無残にも枝ごと桜の蕾を落としていく。あまりの強風であったため、その日は誰もが早く帰りたがった。

「嫌だねぇ。こんな日こそ、うちで一杯やってくれりゃぁ良いんだけどねぇ」

 母親の言う通り、ここ数日は満席だったうどん屋も、今はほんの数人しかいない。喜代乃との約束を果たすには、とにかく先立つものがいる。この店では迎えに行くまでにどれ程かかるだろうと考え、忠信は空いた時間を金策で走り周っていた。今も戻ってきたばかりで、母親から小言を聞かされていたところである。母は、目を離した隙に店の引き戸をほんの少し開けて外を覗く孫たちを見つけると、

「あんたたち、何やってんだい。風が入って埃っぽくなっちまうじゃないか」と怒っている。それから客の一人を見送って、自分もまた戸口に立つと外の様子を窺った。

「しかし、こんな日でも守衛さんは立ってなきゃいけないんだねえ」

 この市ヶ谷では、陸軍の士官学校をはじめ、大小の軍事施設がある。それぞれの入り口を守る警備兵は、今日も持ち場を離れる事なく、風に吹かれながらも銃を抱えて立っているに違いない。物騒な光景だが、地元からすれば軍の存在が近辺の治安を守り、住民たちに安心を与えているのだ。

 今夜は、夜空を照らす月が厚い雲に雲に覆われている。強い風は雲を運び去ってしまう筈なのに、曇天はどこまで続くのか、まだ切れそうもなかった。異変が始まったのは九時ぐらいだろうか、突然、軍の施設の方で騒がしくなり、気になって外に出てみれば、強い風は吹いているが不思議と寒さは感じない。

「何だ? 何があったんだ?」

 近所の住人もあちこちから飛び出してきていた。見上げれば、西の方の雲に朱色が混ざりかけている。忠信は何か天変地異でも起こるのかと、慌てて家族の元へと駆け戻った。雲の様子を聞いて家族も外に出てきたが、母親は経験があるのか、見上げるなり言った。

「ああ、火事だね、あれは。それも、ちょっとやそっとのもんじゃぁない。相当な大火だよ」

 赤く染まっているのは西の空である。

「西で火事って、どこらへんだ?」

 弟の問いに母は、

「さあねえ、新宿の方じゃないかい? こっちまで燃え移りはしないだろうけど。万が一、市ヶ谷台まで火が来たら、あたし達も逃げ出すよ、さっさと大事なもんをまとめとかなきゃいけないね」そう言って、弟家族を店の中へと押し込んだ。

——新宿だって? 街が燃えているのか、内藤新宿は?——

 西の空は既に真っ赤に染まっている。あの下にあるのは浄水場か、それとも遊郭か。忠信は、浄水場のある新宿駅の西側なら消火も早いだろうと自分に言い聞かせる。しかし、駅の東か西かはわからないのだ。しかし、新宿に限らず人が集まる花街というものは、とにかく火災に遭いやすい。

——喜代乃様は大丈夫なのか?——

 喜代乃の事が気にかかって仕方ないが、今はまだ会う事は叶わない。ただひたすらに空を見上げ、無事を祈るのみである。

——あの赤い空が消えたら、火も消えている筈だ、大丈夫、大丈夫だ——

 母と弟は早く店に入れと叫んでいた。数人いた筈の客も火事と聞き、帰れなくなると困ると口にしながら、早々に支払いを済ませて駅の方へと駆けて行った。三軒隣の荒物屋は走り回る駐在から聞き出して、

「新宿が火事だってよ。もう電車は止まっちまって、駅に行っても無駄だぞ」と鼻息荒く家族に向かって叫ぶので、近所の野次馬も揃って耳を澄ましている。

「なんでも追分(おいわけ)の辺りから火が出たらしいぞ。間には御料地と士官学校があるから、まさかここまで来やしねえだろ」

 そう言いながらも万が一に備えて荷造りを始めた荒物屋を見て、なるほど備えはしておくべきだ、と空を見上げていた者たちも急いで散っていった。

——追分なんてすぐ近くじゃねえか。あれだけ空が染まってんだ、燃え広まってるに違いない——

 すぐにでも新宿へ向かいたかったが、既に中央本線は止まっている。普段なら四谷見附(よつやみつけ)で市電を乗り換えると、内藤新宿のある新宿二丁目はすぐであったが、今は動いている筈もない。忠信の心は焦るばかりで、実際にはどうする事もできないのだ。

 やがて、多くの兵隊たちが慌ただしく士官学校の方へと駆けて行った。ついに市ヶ谷まで火が来たかと皆は不安になったが、噂によると消防や四谷の警察だけではどうにもならず、陸軍にまで消火要請が出たらしい。つまり、今もまだ新宿の街は燃え続けているという事だ。

——喜代乃様、喜代乃様——

 雪の夜、夢のような影と出会った。茶屋で着飾った玉蘭を見た。涙声の喜代乃と約束をした。

——そうだ、約束だ。花が咲いたら——

 ふと気づくと、何か掠れた声が聞こえてくる。駅と反対の方向から叫びながらやってくる男がいた。

「駅は、市ヶ谷の駅はどっちだ?」

 見れば全身が煤けて、顔も真っ黒になっている。

「あんた、新宿の火事から来たのか? 教えてくれ、あっちはどうなってるんだ?」

 張り裂けるような声で忠信が男を問い詰めれば、何事かと母親が店から飛び出して、

「何やってんだい、早く店の中へ入れておやり。水だよ、水を飲ませてやらなきゃ」と叱りつけた。

 男から様子を聞くなり、忠信はもう、じっとしていられなかった。呼び止める家族の声を振り切って、西へ西へと走り出す。途中、逃げてきた人々に何度も出会った。新宿へと向かう警官や兵隊を何度も見た。

——炎の向こうに喜代乃様がいる。もうとっくに逃げて安全なところへ避難したかもしれない。誰かに助けてもらったのかもしれない。そうだ、無駄だ、俺のやってる事はすべて無駄に違いない——

 だが、逃げ切れずに炎の中で立ちすくんでいるかもしれない。

——行ったところで、どうやって助けるんだ?——

 何でも一人で解決しようとする喜代乃だからこそ、これまで誰にも頼れなかったのかもしれない。

——思い出せ、喜代乃様はどんなに両親を頼りたくとも、泣きそうな顔しながら一人で耐えてきたじゃないか——

 そう、花鶏は何と呟いていただろう。玉蘭としての言葉を真に受けて憤慨した忠信を、呆れてはいなかったか。

——一人で耐えてたんだ、喜代乃様は——

 浅草で嬉しそうにはしゃぐ喜代乃は、車で去っていく泣きそうな喜代乃は、

「信さん、信さん」と縋るように名を呼んだ。もう随分と前から、心のうちで忠信の名を呼び続けていたのかもしれない。しかし、妓楼を抜け出してまで、一心に探していた花とは何の事だろうか。

——ああ、そうか。花は桜だと思ってたが、寒いうちから咲くわけがねぇ。俺がたった一度だけ褒めた白木蓮の着物だ——

 喜代乃は玉蘭を名乗っていた。ひっそりと咲く気高い望春花。北を指し示す花は冬の冷たさに晒されながらも、甘く清々しい香りで春の訪れを告げる。

 忠信は、避難してくる人並みとは逆に走っていく。火の熱さと避難する人の熱気で、新宿界隈は空気までもが燃え続けているようだった。急ぐ忠信にぶつかって一人の少女がすてんと転がったが、抱き起こそうとすると泣き出した。先を行く家族が戻ってきて、「大丈夫だよ、大丈夫」と背中をさすりながら少女をあやしている。ぶつかった事が原因とは気づかなかったのだろう、忠信に頭を下げてから去って行く。

 市ヶ谷からここまでずっと走り続けていたが、ふと、風が止んで月が出始めている事に気がついた。

《冬の嵐は過ぎ去り、快い月となった》

 頭をよぎるのは『ヴァルキューレ』の『冬の嵐は過ぎさり』である。すると喜代乃がすぐ側で、(ジークリンデ)から(ジークムント)への返歌『君こそは春』を口ずさんでいる気がした。木蓮の花ひらく懐かしい屋敷の春を思い出し、再び走り出す。

《春である汝は、愛である我を妻とす》

 炎は新宿の街を包み込み、人は逃げ惑っている。阿鼻叫喚の地獄がそこにはあった。声を出さずに業火を受け入れるのは、焼け焦げた死体ばかりである。

《君こそは春、凍てつく冬の間、君を待ちたまふ》

 袖を口に当てて煙を吸い込まないようにしながら、忠信は折り重なる人の体を乗り越えて進んでいく。火を避けた多くの娼妓が、髪を振り乱し、重い着物を捨てて天龍寺へと逃げて行くのを何度も見た。喜代乃もどこかに逃げていてくれ、と願いながら、

「待ってろ、喜代乃。何があっても俺がお前を助け出してやる」

 既に内藤新宿は全焼したのだと気づいていたが、忠信は燃え盛る炎の方へと駆けて行った。


用語:

陸軍士官学校:現・防衛省

新宿の大火:大正十年、三月二十六日、追分交番の裏手から出火。被害は全焼五百軒。内、妓楼は全五十三軒。新宿四丁目の天龍寺手前で鎮火。翌十一年、妓楼全軒が再建。

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