↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステップガールとワイバーンの領主.改定版  作者: 六葉翼
番外編 スクリー厶貴族と魔法使いの少年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/32

魔法使いの弟子と少年


イーアーイアイアイーーイーアー!!!


イーアーイアイアイーーイーアー!!!



人気のない幽霊屋敷に轟く悲鳴。


悲鳴に似た絶叫が木霊する。


それが始まりの合図。


魔法使いと、魔法使いの弟子の仕事の始まりだ。


少年は、師匠の伯爵に予め渡されていた兎の耳当てを、褐色の色をした自分の耳に被せた。






「君の心は石だ」


浜風が吹き荒ぶ異国の港。


船底の闇から出されたばかりの少年は、そんな言葉を聞いていていた。


蔑まれているのか?


異国の言葉は、どこか気取った調子を含んでいた。


小突かれ足蹴にされ、蔑まれるために生まれ、此処に送られたようなものだ。


しかし石とはなんだよ。


人を馬鹿にするなら、泥とか糞の方がまだ合っている気がした。


「おめでとう!君に決まりだ!」


(何がめでたいもんか!)


少年は唾を吐くように、心の中で呟いた。船底ではずっと、売られ誘拐された奴隷の子供たちが犇めき、啜り泣く声を聞いていた。


めでたい事などあるはずがない。


少年だけは泣かなかった。


泣いても「喧しい!」と腹を蹴られ。泣かなければ船から降ろされる時「面の皮の厚いガキだ!」と背中を蹴られた。


情けをかけるものなど誰もなく。

ただ嘲る男たちの声を聞いた。


そもそも国にいる時から、親にも誰かにも祝われた事などない。


今も港に集まった異国の男たちに、虫歯がないか口の中を覗き込まれたり。英語が話せるか卑猥な言葉で話かけられた。


少年の前で足をとめた仲買人に混じって、この伊達男のヒゲの紳士が、自分を品定めするように見て言った。


「ほう…面白いな君は。よし、君に決めようじゃないか!おめでとう!」


つまり、たった今自分には買い手がついた。


一生逃げられない奴隷の身分が確定した。それだけの事だった。


「おめでとう」


めかしたヒゲの紳士は少年にそう言って愉快そうに笑った。


「君は実に面白い」


奴隷を買いつけに来たこの男が、面白がっている間に、爪先でも踏みつけて。玉でも蹴りあげて。


なんなら目の玉でも抉り出してやることは出来ないか。


少年はこの場から逃げ出す算段を頭の中で巡らせた。


「思いついた事を全部してみるがいい」


シルクハットのつばの下から、男の感情のない瞳が見下ろしていた。


少年より遥かに上背がある。英国貴族の冷酷な瞳に、少年は足がすくんだ。


しかしやるしかない。背中を向けて逃げたら、すぐにも追いつかれそうだ。銃で背中を打たれでもしたら、一貫の終わりだろう。


ここは思いきって、男の胸元に飛び込んで、怯んだところ噛みついて。


喉笛でも指でも噛み千切って。


逃げ出そう。


そう心に決めて、踏み出そうとした足が動かない。けして怖じけたわけではない。


相手にひと泡吹かせるつもりの両腕が、鉛のように重く上がらない。


少年の額に汗が滲んだ。


「なぜだかわかるかね?」


男はあくまで紳士的に少年に言った。


「それは私が魔法使いだからさ」


その紳士は少年に名乗った。


「私の名前はスクリーミング」


「スクリーミング?」


「そう、これからは、スクリーミング ロード リッチ公爵と呼び給え!」


珍妙な名前の貴族紳士はそう言って、少年の前で、自慢の髭をぴんと立てて見せた。


「君いいね!実にいい!私はダイヤの原石を見つけた気分だよ!」


少年は、自分を買ったこの紳士が、これ以上の変態でないことを心から祈った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。